主な症状
1.神経症状
1.てんかん
乳児期から幼児期(2歳以下)に発症することが多い。乳児期には点頭てんかん(WEST症候群)が多く、発症後は知能の伸びが不良となることが多いです。出来るだけ早く治療により発作を止めることが大切です。1歳以降の発作は、いろいろなタイプの部分発作が生じます。結節性硬化症に生じたてんかんは治療抵抗性であることが多いですが、一部は脳外科手術で抑制される場合があります。てんかんの原因は、大脳皮質から皮質下にかけて多発する結節であり、脳の発生段階の形成異常です。MRIで確認することができます。
2.知的障害
知的障害の程度は様々ですが、点頭てんかんを発症した患者さんでは重いことが多いです。てんかんを発症しなかった患者さんでは知的障害を認めません。てんかん発症年齢が早いほど知能障害の程度は重いです。
3.精神神経症状
知的障害と合併して生じることが多い。自閉症や注意欠如・多動症、学習障害と類似の症状です。これらを総称して結節性硬化症関連精神神経障害(TSC-associated neuropsychiatric disorders, TAND)と呼びます。
4.脳腫瘍(上衣下巨細胞性星細胞腫、SEGA)
脳の内部の側脳室壁に生じる良性腫瘍で、小児期に発生します。徐々に拡大して、水頭症や脳の圧迫、出血などを起こします。
2.腎臓の症状
1.腎血管筋脂肪腫(AML)
通常、思春期以降に増加・増大しますが、小児期に増大することもあります。両側性、多発性に生じます。出血するまで無症状ですので、定期的に検査をして大きさを評価することが大切です。4cm以上になると出血しやすいと言われており、治療を検討します。また正常腎組織を圧迫して腎不全に至ることがあります。
2.多発性腎嚢胞
まれですが、周囲の腎組織を圧迫して高血圧と腎機能低下を生じることがあります。
3.腎細胞癌
稀です。
3.皮膚症状
1.白斑
出生時から乳児期に認められる。多くの結節性硬化症小児患者に認められます。健診などから診断されることがあります。体や腕、大腿、臀部等にみられます。1〜数cmの木の葉の形に似た不整形です。
2.顔面血管線維腫
5歳ころから見られ始めます。赤褐色のニキビに似た小隆起斑で、顔面、特に鼻の周りから頬に見られます。思春期以降に増加してきます。
3.線維性頭部局面
小児期以降に見られ始めます。おでこにできる平坦な紅褐色斑で、経過とともに拡大してきます。
4.爪線維腫
思春期以降に見られます。爪と皮膚の境界部分や爪の下に生じます。正常皮膚色~紅色の細長くやや硬い腫瘤です。
5.シャグリンパッチ(粒起革様皮)
背中や腹部に生じやすい。大きさは数mm~10cm以上まで様々で軽く盛り上がり、見た感じは碁石状、豚皮様または蜜柑の皮様です。色は様々です。
4.心臓の症状
心横紋筋腫は、新生児から乳児の結節性硬化症患者の約50%に見られます。殆どは無症状で、経過とともに自然退縮を認めるため積極的な治療を不要ですが、稀に心不全や不整脈などを生じることがあるため定期的な経過観察が必要です。腫瘍は、新生児期に最大で、徐々に縮小することが多く、1歳未満の小さい腫瘍では高頻度に消失がみられます。また、胎児期に不整脈や徐脈で気付かれたり、胎児超音波検査で偶然に見つかる例もあります。
5.眼の症状
多発性網膜過誤腫、網膜無色素斑がみられますが、無症状のことがほとんどです。
6.歯・口腔の症状
歯のエナメル小窩(小さな孔)は高頻度に見られます。口腔内線維腫(口腔粘膜の良性腫瘍)は時に見られます。
7.肺の症状
肺リンパ脈管平滑筋腫症(LAM)は肺組織の腫瘍性・嚢胞性病変で、結節性硬化症の女性患者で20〜40歳に発症します。進行すると動作時呼吸困難や気胸の反復を呈し、増悪して死亡に至ることもあります。
8.肝臓の症状
肝臓に血管筋脂肪腫が生じることがあります。