がんゲノム医療センター 概要

1.センター長

第一外科診療科群 主任診療科長 教授
藤原義之

鳥取大学医学部附属病院は、新しい医療である、「がんゲノム医療」を推進していくために令和元年4月にがんゲノム医療センターを発足しました。「がんゲノム医療」は、これまでのがん治療とは異なり、個々のがんの個性を調べ、それに応じた治療を提供する個別化治療(オーダーメイド治療)です。これまでの抗がん剤治療では、がん患者さんを多数集めた臨床試験において、より効果を示す人の割合が高い薬を、標準治療としてすべての患者さんに使用してきました。しかし、その効果の割合はせいぜい50%程度であり、半分以上の患者さんには効果がありませんでした。「がんゲノム医療」は、同じがんであっても患者さん一人一人のがんは違うという考えのもと、個々のがん組織を調べそれに応じた治療を提供していくことを目的としています。

がんは遺伝子に異常がおこり正常細胞が変化して発生します。生まれつき遺伝子に異常がある場合は、遺伝性腫瘍といい、家族内で多く発生したり、比較的若いときにがんが見つかります。一方、ほとんどのがんは加齢や喫煙などによって正常細胞の遺伝子に傷が入り発生します。この遺伝子異常は個々のがんで異なります。「がんゲノム医療」は、個々の患者さんのがんの遺伝子異常を調べ、それに適した治療があれば提供する医療です。

しかし、「がんゲノム医療」には、まだまだ解決すべき問題も多数あります。まず、がんの遺伝子異常を調べる検査の価格が高いこと、さらに、検査をしても実際に治療法が提供できる確率が低いことです。また、治療法が見つかっても保険適応ではなく使用できないこともあり、まだまだ迅速に治療を提供できる体制にはなっていないのが現状です。

このような課題がある医療ですが、今後ますます発展していく医療であることは間違いありません。担当医より詳細な説明を聞いて理解されたのちに、この医療を選択されることをお勧めします。

2.業務内容

本院は、2018年4月に、厚生労働省から「がんゲノム医療連携病院」に指定され、「がんゲノム中核拠点病院(岡山大学病院)」と連携しつつ、がん遺伝子パネル検査による医療の提供、遺伝カウンセリングの実施やがんゲノム医療に関する情報提供などの役割を担うこととなりました。

さらに、2019年4月には、がんゲノム医療のさらなる推進に向け、がんゲノム医療センターを立ち上げました。

本センターは、がんゲノム医療に携わる診療科等のスタッフによって構成されており、患者さんの診断や治療に役立つがんゲノム医療の提供のために活動を行っています。

3. がんゲノム医療のメリットとデメリットは?

がんゲノム医療とは、がんの組織などを用いて、多数の遺伝子を同時に調べ、遺伝子変異を明らかにすることにより患者さん一人一人の病状等に合わせて診断や治療を行う医療です。一部のがんの治療では、すでに標準治療として、その患者さんが持っている遺伝子の変化に対応した薬が使われています。がんゲノム医療では、がん遺伝子パネル検査(次項)により数百種類の遺伝子検査を一度に調べます。

がんゲノム情報管理センター(C-CAT)に蓄積されている薬剤に対する効果などの臨床情報を活用することができます。その結果、多くのエキスパート(専門家)で検討されたうえで、臨床試験や治験などを含めて有効性が期待できる治療や薬剤が提案できる可能性があります。

一方で、がん遺伝子パネル検査をおこなっても、治療薬が見つからない場合や、実際に治療を受けることが難しい場合もあります。これらの問題は、がんゲノム医療がまだ発展段階の新しい医療であるためです。将来的には、多くの患者さんに提供可能な診療となることが予測されますが、現時点では限られた患者さんに有用な治療です。

4. がん遺伝子パネル検査とは?

がん遺伝子パネル検査とは、患者さんごとに異なる遺伝子の変異を明らかにするために、患者さんのがん組織の検体における複数の遺伝子を次世代シークエンサーという特殊な機械を用いて分析する検査です。がんの発症に関係する遺伝子のうち、治療薬の効果に関連するものや、がん種の診断に関連するものなど、数百種類の遺伝子を一度に調べます。

解析の結果、遺伝子変異が見つかり、その変異に対して効果が期待できる薬があれば、治験などの臨床試験等でその薬を使用することを検討できます。また、新たな治療法の開発などにつながる可能性があります。

5. 当院で実施しているがん遺伝子パネル検査

当院では、3種類の保険収載下のがん遺伝子パネル検査を行っております。どの検査を実施するかは、担当医とよく相談の上、選択していただきます。

検査の種類

パネル検査の種類 検査方法等 適応等
OncoGuide ™ NCC
オンコパネルシステム
対象遺伝子数
124
下記1と2の両方を満たす方が対象になります。
1.下記いずれかの診断を受けた方
1標準治療が終了になった(あるいは終了が見込まれる)固形がん(血液のがんは除く)の患者さん
2原発不明がんの患者さん
3希少がんの患者さん
2.全身状態、臓器の機能などから、検査実施後に化学療法が実施できると主治医が判断した方
※FoundationOne® Liquid CDxがんゲノムプロファイル及びGuardant360®CDxがん遺伝子パネルの場合は、さらに以下の条件がが当てはまる方
  • 十分に組織検体が確保できない。または組織検体中の腫瘍割合が少ない場合
  • 組織検体で検査を行ったが、組織の状態から検査の過程で検査中止と判断された場合
使用する検体
腫瘍と血液
FoundationOne® CDx
がんゲノムプロファイル
対象遺伝子数
324
使用する検体
腫瘍
FoundationOne® Liquid CDx
がんゲノムプロファイル
対象遺伝子数
324
使用する検体
血液
Guardant360®CDx
がん遺伝子パネル
対象遺伝子数
74
使用する検体
血液
GenMineTOP®
がんゲノムプロファイリングシステム
【対象遺伝子】
737(DNA)
455(RNA)
使用する検体
腫瘍+血液

検査費用

いずれの検査も料金は以下のとおりです。遺伝子検査は、2回に分かれて料金が発生いたします。

【1回目】
検査提出時 440,000円 (3割負担の場合 132,000円)
【2回目】
結果説明時 120,000円 (3割負担の場合 36,000円)

※ 保険診療のため、患者様の自己負担割合によって費用が変わります。
※ 初診料、再診料等の負担が発生する場合があります。
※ 検査後の治療費は含まれていません。

当院の検査実績(出検件数)

令和6年3月31日現在

実施診療科 NCCオンコパネル FoundationOne® CDx FoundationOne® Liquid CDx 先進医療(TSO500)
消化器内科 3件 31件 15件 0件
内分泌代謝内科 0件 3件 1件 0件
呼吸器内科 0件 8件 1件 0件
小児科 0件 4件 1件 0件
消化器外科 0件 57件 10件 1件
乳腺内分泌外科 0件 1件 1件 0件
整形外科 0件 2件 1件 0件
泌尿器科 1件 14件 7件 0件
頭頸部外科 0件 7件 0件 0件
女性診療科・婦人科腫瘍科 1件 37件 5件 2件
腫瘍内科 0件 7件 2件 0件
脳神経外科 0件 1件 0件 0件
合計 5件 172件 44件 3件
がんゲノム情報管理センター(C-CATホームページ)

(1)がんゲノム情報管理センター(C-CAT)について

https://www.ncc.go.jp/jp/c_cat/index_kan_jya.html

(2)がんゲノム医療とがん遺伝子パネル検査(患者さん・一般向けホームページ)
※ C-CAT登録状況やこれまでのがん遺伝子パネル検査の状況がご確認いただけます。
https://for-patients.c-cat.ncc.go.jp

6.がん遺伝子パネル検査を希望する方へ

当院で、がん遺伝子パネル検査を希望する方は、下記をクリックしてください。

7. お問い合わせ先

がんゲノムセンター、がん遺伝子パネル検査に関するご質問等をお電話にてお受けしております。

ご用の方は、下記時間帯にお電話ください。

質問によっては、回答にお時間をいただく場合がありますので、ご容赦ください。

対応窓口: がんゲノム医療センター事務室
対応時間: 10:00~15:00(土日祝日は除く)
電話番号: 0859-38-7553