がんセンター
鳥取大学医学部附属病院がんセンターは、令和3年度より組織改組し、①化学療法部門、②緩和ケア部門、③がん教育部門、④がん相談支援部門、⑤がん診療連携部門、⑥がん登録部門の計6部門の集合体としてリニューアルした。

各部門の令和5年度の活動状況と今後の展望について報告する。
①化学療法部門
令和5年度の活動状況
1. 外来化学療法室
令和5年4月~令和6年3月の1年間で延べ8886件の治療を施行した。化学療法件数の総数および各診療科別の年次推移を以下に示す。

治療件数の増加に伴い、令和2年度より効率的なベッド運用のために前日採血による8:30~10:00枠の活用を推進している。過去3年間の実績を以下に示す。

末梢静脈のルート確保は主に看護師が行っており、医師の業務削減に貢献している。

2. irAE 対策チーム
irAE 対策チームにおいて定期的なカンファレンスを開催し、免疫チェックポイント阻害薬投与症例の確認、irAE の発症状況および適正なirAE 対応の評価を行っている。令和5年度の1 年間で計22 回のカンファレンスを行った。この1年間で当院では、新規に268例の免疫チェックポイント阻害薬が導入され、110 件の中等症以上のirAE を認めた。非常に多彩でいつ起こるかわからない irAE を早期に発見し、迅速かつ適切に対応し、安全な治療を行うためirAE 対策マニュアルを作成している。令和6年3月には第3版を全職員へ配布を行った。

3. レジメン審査
レジメン審査ワーキングでは令和5年度41 件のレジメン審査を行い、カテゴリーA(がんセンター枠)22 件、カテゴリーB(診療科枠)2 件、カテゴリーC(患者限定枠・未承認)5 件、カテゴリーD(臨床試験)10 件、その他(添付文書改訂に伴う用法用量変更)1件、カテゴリー変更1件を承認した。
今後の展望
外来化学療法室のさらなる効率的運用を目指して、看護師によるCV ポート穿刺に向けた体制作りに取り組む予定である。またirAE対策チームの活動をより強固にし、当院だけにとどまらず地域拠点病院へirAE 対応の周知を図り、鳥取県全体のがん診療レベル向上を果たすことを目標とする。
②緩和ケア部門
令和5年度の活動状況
1. 緩和ケアチーム
緩和ケア認定医1名(常勤・専従)、緩和ケア専門医1名(非常勤)、身体担当医2名(消化器内科1名、呼吸器内科1名)、麻酔科医1名、精神担当医2名(精神科2名)と、がん看護専門看護師2名、緩和ケア認定看護師1名、薬剤師3名、MSW1名、歯科衛生士1名、管理栄養士3名、理学療法士2名で多職種による緩和ケアチームを構成している。カンファレンス・回診を週1回実施し、患者の苦痛を全人的苦痛としてあらゆる角度からアセスメントし、各専門的見解を以て患者の症状緩和に努めている。緩和ケアチーム紹介件数および依頼内容の年次推移を以下に示す。


2. 研修会、講演会開催
令和6年2月17日に緩和ケア研修会(PEACE 研修会)を開催し医師16名、看護師3名、薬剤師1名、計20名が研修を修了した。その他各種講演会を開催することで緩和ケアのレベルアップを図った。
3. 緩和ケアポケットマニュアル
緩和ケアポケットマニュアル2024年改訂版を作成し、令和6年度中に院内ホームページへ掲載予定である。
今後の展望
令和3年9月より病棟担当看護師から緩和ケアチーム看護師への直接紹介を可とするなど積極的な働きかけによりチーム紹介件数が増加しており、令和5年度は前年度を上回る149件のチーム紹介が得られた。令和4年度から緩和ケア認定医・緩和ケア専門医による専門外来を新規に立ち上げており、今後もより強固な緩和ケア診療を推進していく方針である。
③がん教育部門
令和5年度の活動状況
1. がん薬物療法専門医育成
がん薬物療法専門医育成のためのプログラムを作成し、登録医を募集し、がんセンター内での研修を実施した。4名在籍のうち1名が令和4年度がん薬物療法専門医試験を受験し、病歴要約等の書類審査、筆記試験、面接試験を経て合格した。新専門医制度への対応を開始し、研修カリキュラム作成等準備中である。
2. 学生教育
医学科「臨床腫瘍学」計8コマ、生命科学科「基礎腫瘍学」計15コマの授業を、それぞれ5名、12名の教官で担当した。
3. がんセミナー
令和5年度は計5回開催した。(演題、講師は以下参照)
開催日 | 演題 | 診療科 | 講師 |
---|---|---|---|
5/31 | 全人的苦痛の緩和に向けて:がん患者の緩和ケアを理解する | がんセンター | 倉吉 和夫 |
5/31 | 緩和ケアにおける精神面への介入とせん妄への対処方法 | 精神科 | 小松 弘二 |
8/30 | 当院におけるirAE対策について | がんセンター | 矢内 正晶 |
8/30 | irAE対策における薬剤師の関わり | 薬剤部 | 足立 美菜子 |
10/25 | がん診療におけるHBV再活性対策と当院での取り組み | 消化器・腎臓内科 | 木原 琢也 |
10/25 | 医療者が知っておくべき“遺伝性腫瘍”の知識 | 遺伝子診療科 | 岡崎 哲也 |
12/27 | 非小細胞肺がんの表的治療と遺伝子検査 | 呼吸器・膠原病内科 | 阪本 智宏 |
12/27 | 腫瘍循環器診療のアップデート | 循環器内科 | 中村 研介 |
3/13 | 非がん生殖と妊孕性温存 | 女性診療科 | 谷口 文紀 |
3/13 | 薬剤性皮膚障害について | 皮膚科 | 吉田 雄一 |
4. 骨転移キャンサーボード
令和5年度は計12回開催し、各科の医師で治療方針について積極的なディスカッションを行った。
今後の展望
今後3年以内に計4名の「がん薬物療法専門医」育成を目標にしている。複数診療科の入院患者を担当する研修システムを構築し、専門医育成のための支援を継続している。
新専門医制度サブスペ「腫瘍内科専門医」を育成する取り組みも準備している。2 年以上5 年以内の専門研修で90 症例以上を受け持ち、専攻医登録評価システム(J-OSLER Oncol.)に登録し、指導医からマンツーマン指導を受ける体制を構築中である。当がんセンターが鳥取県の基幹病院として専門研修管理委員会を設置し、研修サポート、終了判定を行う予定である。
学生教育、がんセミナー、骨転移キャンサーボードは今後も同様に継続予定である。
④がん相談支援部門
令和5年度の活動状況
がん相談は、患者さんやご家族のほか、地域の方々は誰でも無料で利用でき、がんに関する治療や療養生活全般、地域の医療機関などの相談を受けている。 令和5年度の相談対応件数は1525件と年々増加傾向である。

相談内容は、「がんの治療」「転院」「不安・精神的苦痛」の相談が多く、この3つでおよそ半分を占めている。

令和5年度は、第4期がん対策基本計画において「拠点病院等を中心としたアピアランスケアに係る相談支援・情報提供体制の構築」が明記されたことから、11月に医療従事者を対象に「アピアランスケア研修会」を開催した。
また、がん相談部門ではがん患者サロンを設置し、運営のサポートを行っている。令和5年度は「さくらサロン」を12回(月1回)開催し、さくらサロン通信「さくらだより」を毎月発行した。また、コロナ禍で中止していた子育て世代のがん患者サロン「さくらカフェ」を再開し、令和5年度は1回開催した。「さくらカフェ」は米子市内の患者会『子育て・働く世代のがん患者と家族のつどい「あさがお」』との共催で実施している。さらに、患者さんの発案で「編み物・手芸の会」を6月から開始し、計10回開催した。また、昨年度に続きがん病態栄養専門管理栄養士による「治療中の食事について」の勉強会を開催した。
さらに、美容師による「髪のお悩み相談室」を4月から開始し、計22回開催した。
その他、3月に「AYA week 2024」期間に合わせ、応援フラッグを作成し展示した。
さくらサロンクリスマス会

髪のお悩み相談室


⑤がん診療連携部門
令和5年度の活動状況
1.鳥取県がん診療連携協議会関係
- 鳥取県がん診療研修会 令和5年5月28日(日)
- 鳥取県がん診療連携協議会 令和5年11月6日(月)
2.市民公開講座、セミナー等
日 付 | テーマ | 対 象 | 参加者 |
---|---|---|---|
令和5年6月4日 | 緩和ケアにおける地域連携の今後の課題 | 医療従事者 | 63名 |
令和5年7月29日 | 皮膚がんと頭頸部がんについて学ぼう | 一般 | 153名 |
令和5年9月2日 | がんになっても自分らしく生きる~サバイバーシップとピアサポート~ | 一般 | 158名 |
令和5年11月30日 | アピアランスケア研修会 | 医療従事者 | 46名 |
令和6年1月28日 | 家族・医療従事者に弱みを見せない利用者の思いを引き出すことで、適応を促進することが出来た事例当院でのがん性疼痛に対する神経ブロックの現状について | 医療従事者 | 27名 |
令和6年2月17日 | 緩和ケア研修会 | 医療従事者 | 20名 |
令和6年3月9日 | 自分らしく生きる日々を過ごすために | 一般 | 127名 |
令和6年3月24日 | がんになっても自分らしく生きる | 一般 | 97名 |
3.WEB診療カンファレンス(当院―鳥取県立中央病院間)
診療科 | 実施回数 |
---|---|
第一外科診療科群 | 8回 |
泌尿器科 | 13回 |
循環器内科 | 1回 |
今後の展望
次年度も鳥取県がん診療研修会を令和6年5月25日に、鳥取県がん診療連携協議会を令和6年12月2日に開催する。市民公開講座を3回、市民向けの勉強会や医療従事者向けの研修会などを予定している。がんに関する情報の普及啓発に引き続き取り組んでいく。
⑥がん登録部門
令和5年度の活動状況
がん登録は、がんの罹患や転帰、進行度や治療内容などの状況を登録・分析する仕組みであり、がん罹患数・罹患率、がん生存率、治療効果など、がん対策の基礎となるデータを把握するために必要なものである。本院では、2007年に院内がん登録を開始し、2011年には鳥取県院内がん登録情報センターを開設した。現在、がん登録室(データセンター)では、4名の専任スタッフが情報の登録・管理・解析を行っている。令和5年度のがん登録状況を以下に示す。


今後の展望
今後も引き続き正確ながん登録を行っていくとともにがん登録情報の有効活用に努めていく。
文責 がんセンター長 小谷昌広