眼科

令和5年度の当科の現況を振り返る。

令和5年度の眼科総手術件数は、3,983件であり、手術件数は年々増加傾向を認めている。

例年通り、手術の内訳で大きなウエイトを占めているのは、白内障手術と加齢黄斑変性などに対する硝子体内注射であった。

硝子体注射はほとんどの症例が血管内皮増殖因子(VEGF; Vascular endotherial growth factor)を標的とした治療である抗VEGF抗体の注射で、加齢黄斑変性や糖尿病網膜症、網膜静脈閉塞症など幅広い網膜疾患に対して適応となっている。昨年度より眼科病棟に専用の処置室を改設したことで、よりスムーズに治療が行えるようになり、今後更なる件数の増加が見込まれる。

さらに上記のような薬物治療では対処できない黄斑上膜、黄斑円孔などの外科的な硝子体手術が必要な網膜疾患に対しては、極小切開硝子体手術に対応できる機器を用いて、低侵襲の硝子体手術を行っており、入院期間の短縮や患者さんの早い社会復帰に貢献している。

また、近年緑内障手術件数も増加傾向となっている。緑内障手術は主に流出路再建術と濾過手術の2種類に分類されるが、特に濾過手術においては、近年アーメド緑内障バルブなどのチューブインプラントを用いる術式が全国的に増えており、当院でも積極的に行われている。従来の濾過手術では十分な効果が得られなかった症例が主な適応となり、術後管理が比較的簡便であるというメリットがある。

更に低浸襲緑内障手術の普及により、より早期の病期からの治療介入が可能となり今後も手術件数の増加が見込まれる。

そして、角膜疾患においては、従来主流であった全層角膜移植に加えて、近年注目されている角膜内皮移植を当院でも行っている。角膜内皮細胞を含む深層角膜側のみを移植する角膜内皮移植の利点は、全層移植に比べ、角膜上が無縫合であるため大きな乱視を生じないこと、縫合糸に関連した感染が生じないこと、拒絶反応のリスクが軽減できることにあり、移植後の問題点を軽減できる術式を選択することで患者さんの負担を減らすことへと結びついている。

また当施設では、手術治療以外にも、臨床所見のみでは診断のつきにくい前眼部感染性疾患に対し、real-time PCRを用いた病原体の検出を積極的に行っている。微量なサンプルからも病原体を検出でき、病原体の量を数値化できることから治療効果の判定にも非常に役立っている。そのため県内のみならず近隣の県より診断・治療に苦慮する前眼部症例を多数紹介いただいており、山陰のみならず中国地方における難治性前眼部感染症治療センター的一面も担っている。

以上、前眼部から後眼部まで幅広い領域を偏りなく加療を行っているのが当科の特徴ともいえる。白内障のような基盤的手術のみならず、新規あるいは先進医療の導入も積極的に行っており、山陰における基幹施設としての役割を十分に果たしていると自負している。高齢化に伴い白内障・緑内障・加齢黄斑変性等の疾患はさらに増加すると予想され、今後のさらなる患者数・手術件数の増加に対応するためには十分な施設投資と検査員の増員・関連病院との連携が不可欠である。

(文責:永瀬大輔) 

手術実績

手術実績 R3 R4 R5
白内障手術 919 884 988
後発白内障手術 89 88 126
硝子体内注射(抗VEGF抗体) 1345 1531 1656
硝子体関連手術 305 315 349
網膜復位術(強膜内陥術) 17 21 13
網膜光凝固術(PDTも含む) 196 172 157
緑内障手術 164 178 261
虹彩光凝固術 10 7 4
眼瞼手術(下垂、内反) 13 31 47
斜視手術 40 35 43
角膜移植 17 15 17
エキシマレーザーによる角膜切除術 32 46 56
翼状片手術 39 21 33
涙点プラグ挿入術 58 55 85
涙道狭窄関連手術 45 43 46
角膜・強膜異物除去術 15 10 22
腫瘍手術 12 7 34
その他 43 63 46
合計 3359 3522 3983
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