看護部

1.看護部目標

「そばにいる看護のさらなる定着」

看護部では、「そばにいる看護」の看護体制を定着させ、特定機能病院の役割である高度医療の提供に対応できる看護師の育成を課題とし取り組みを行っている。令和4年度は、患者の些細な変化に気づくことができる看護師育成にむけたフィジカルアセスメント能力の向上、看護の質の担保に向けた看護提供方式の整備及び、担当看護師役割を発揮した意思決定支援に取り組んだ。

また、新型コロナウイルス感染症患者に対する効率的な看護体制を目指し、各部署の応援体制を強化した。

1)教育・人材育成

鳥取大学医学部附属病院版の「看護師のクリニカルラダー及び「看護管理者ラダー」を運用し、看護実践能力及び看護管理能力の向上に努めている。また、看護部目標の達成に向けた研修や、管理者育成を目指した研修を開催している。研修受講や学会などで役割発揮したものに対しては、評価点数を算定している。さらに、2020年に初めてコロナ患者の受け入れを行って以来、感染予防対策のためにwebでの研修システムを整え、感染状況に合わせてハイブリッドやオンデマンド研修を取り入れ、対面での研修以外でも院内外研修に参加することができた。

今後の院内研修でもwebの継続的導入、隙間時間を活用した学習環境の整備をスタッフは要望しており、webのメリットを最大限に活かした主体性を尊重した新たな学び方を構築していく予定である。

2)看護実践

あらゆる場面で患者の心身の状況を支援するため、「そばにいる看護」を実践する体制整備に取り組んでいる。各病棟の特性を活かした、看護体制、看護提供方式の整備し、各病棟で、担当看護師役割を実践するために体制整備、さらに、作業環境の整備、業務配分の工夫・残務調整等を行うなど様々なツールの活用を推進している。患者のそばにいることで患者のニーズや変化を察知し、意思決定支援、急変の兆候に気づく、転倒転落等の事故の予防、みまもり看護の実践などに繋がっている。また、患者がその人らしく生活できるよう、地域と連携し、患者の思いや継続した療養が送れるよう支援している。地域との顔の見える関係づくりのため、Webカンファレンスも導入した。

3)患者・家族満足度

患者満足度調査を、医療の「環境」と「質」について、それぞれ入院・外来患者を対象に実施した。入院患者対象の総合評価の結果は、環境が8.0(昨年度より0.4減少)、医療の質が8.5(昨年度より0.4減少)、外来患者対象の総合評価の結果は、環境が7.8(昨年度より0.1増)、医療の質が8.3(昨年度同数)であった。総合評価だけでなく、看護師に関する設問項目について、看護サービス委員会を中心に看護部における課題を具体的に抽出するとともに、看護サービスの改善、質の向上を目指した。

4)職務満足度

看護職員全員を対象にメンタルヘルス改善意識調査(MIRROR)を用い職務満足度調査を実施した。令和3年度の職務満足度(改善不要割合)は63.3%で、前年度の64.7%より1.4%低下した。カテゴリー別の改善不要割合では、すべてのカテゴリーが昨年度より低下し、特に「組織運営教育」が1.9%、「裁量・権限」が2.0%低下した。看護職種別では、看護補助者の改善不要割合が最も高く、63.8%であったが前年度より3.5%低下した。

5)心理的安全性

変化の激しい時代に対応していくためには、一人ひとりが組織・チームのために必要な提言や挑戦をしても大丈夫、という「心理的安全性」の担保が大切である。看護部では令和3年度からエイミCーエドモンドソンの心理的安全性に関する意識調査を行っている。令和4年度の全項目の平均では、非常にそう思う(R:思わない)とそう思う(R:あまりそう思わない)の割合75.3%であり前回調査時より3.5%上昇した。

6)医療安全

報告する文化の醸成にむけて、心理的安全性を基盤として取り組んだ。 医療安全管理部の目標として、「レベル0・1レポートの報告推進」を行い、医療安全業務改善計画書の立案により各部署でも意識的に取り組んだ。インシデント報告数は3403枚とR3年度より80枚増加した。患者影響度「レベル0・1」は51.6%、1759件で前年度より3.6%増加した。「レベル3b以上」のアクシデントは、4.4%であり、前年度より0.7%減少した。今後もヒヤリ・ハットの報告を増やしていくことが重大事故1件を防止に繋がると考え、「レベル0・1レポートの報告推進」を継続する。

7)感染対策

新型コロナウイルス感染症入院対応を、病棟1階Bの軽症用病床11~19床、感染症病床2床、病棟4階Bの重症用10床のコロナ病棟にて、各病棟から応援看護師を配置して看護部コロナチームとして患者対応にあたった。全病棟からコロナ病棟勤務者を捻出することにより、職員の感染増加や院内クラスター時にも柔軟に勤務者の調整を行い、看護師不足による通常医療の制限が生じないように対応した。また、応援看護師には事前に個人防護具着脱やコロナ病棟ルールを教育することにより、勤務者の感染リスク低減に配慮した。
院内ルールの周知を図るために、感染制御部から定期的に発信された「黙食」「換気」「不織布マスクの着用」「毎日の体調チェック」「外出時の心得」「院内への持ち込み防止:共通問診票で確認」「家庭内での感染対策強化」等や、状況に応じた対策変更について周知徹底を行った。また、各部署での新型コロナウイルス感染者発生に備えて、シミュレーション研修を企画・実施し、病院全体で取り組んできた。

2.看護部の主な取り組み

1)入院前からのフレイル予防を行政に繋げる

近年、高齢化が取り沙汰され健康寿命延伸の取り組みとしてフレイル予防がなされている。令和3年度から入院前の患者のフレイル状態を評価し、弱りに対し指導を行っている。入院前、入院後のフレイル評価を行政と共有し、行政保健師が介入することで要介護状態を予防する支援を開始した。また、フレイル評価を医療機関で実施することでフレイル/プレフレイル対象者を幅広く把握し、支援することができるため継続し取り組んでいく。

令和4年度 連携実績 28件(病棟:19件、外来:9件)

外来 泌尿器科:1件、内分泌代謝内科:1件、呼吸器外科:3件
皮膚科:1件、呼吸器内科:1件、消化器外科:1件
医療福祉支援センター:1件
病棟 病棟2階A:3件、病棟5階A:6件、病棟5階B:1件
病棟6階A:1件、病棟7階A:1件、病棟8階B:1件
救命救急:6件

2)自部署の人的資源を豊かにする多様な研修

看護部では、多様な人材育成のシステムとして、新人のローテーション業務、3AD・3B・3CEフロア間の人事交流、4A・4BDフロア間のリリーフ研修、専門性の高い看護を自病棟に持ち帰るための短期人事交流、キャッチ&リリース研修、院内他部署研修がある。

令和4年度の院内他部署研修は19件であった。昨年度件数の330件には及ばなかった。コロナ禍でクラスター発生等あり、感染予防のために実施困難な状況が影響していたと考える。次年度以降も、看護師の実践能力向上に向け、多様な研修を支援していきたい。

<言葉の定義:キャッチ&リリース研修=自部署の人材をアセスメントし、人的資源を有効にするために、他病棟への研修を勤務計画の段階で計画し実践する院内研修>

3)看護部経営・質評価会議の運営による看護の質向上への取り組み

看護部では毎年インジケータ―を決定し、データを把握し分析することで病院経営への貢献、看護の質向上に繋がる取り組みを行っている。看護師が診療報酬について理解を深め、役割発揮することで算定に繋げることができるよう体制づくりを行い成果に繋げることができた。今年度は、「外来の質」「早期離床リハビリテーション加算」「IC同席率」「常勤看護職員の時間外労働時間」の項目について分析を行った。これらの項目に基づき、診療報酬を算定することで看護の質を担保することに繋がった。

4)RRSチームの活動

RRS( Rapid Response System)とは、『患者の状態が通常と異なる場合に、現場の定められた基準に基づき、直接専門チームに連絡し早期に介入・治療を行うことで、ショックや心停止といった致死性の高い急変に至ることを防ぐシステム』である。RRS要請件数は570399件で、前年度の399175件に対し271244件増加し、活動は拡大傾向である。定期的に開催されるRRS検討チーム会、看護師長会議等で活動状況や事例について共有し、急変対応の看護実践能力向上に努めている。

5)働きやすさへの取り組み

新型コロナウィルスの感染状況に応じて、勤務者確保が難しく厳しい勤務環境であった。そのような状況下においてフレキシブルな応援体制をとることで勤務者を確保に努めた。業務過重による疲弊や精神的ストレスを抱えるスタッフに対して、支援を行うとともにワークライフバランス支援センター公認心理師と協力し多面的なサポートを行った。
また、正しい休暇取得を推進するために、管理者を対象に、男性も含めた育児休暇取得や年休取得に関する研修会を開催した。

6)キャリアアップ支援

院内研修は122研修を開催した。内容としては、「看護サービス提供体制」「担当看護師役割」「意思決定支援」など看護部の目標達成に向けた研修や「シミュレーション研修」「リフレクション」など経年的研修、さらに管理者育成のための管理者研修などであった。管理者研修には69名の受講があった。
認定看護師・専門看護師等によるコース研修は、20コース研修でのべ1153名の参加者が専門的な知識・技術の習得に努めた。今年度は特にフィジカルアセスメント能力育成のためにクリティカルケア認定看護師によるさらに、学会などの参加者は、全国学会120名(うちweb66名)、地方学会41名(うちweb20名)、研修会282名(うちweb124名)であった。院外発表者数は60名で、徐々に地方の対面での研修参加が増えてきた。今後も計画的な人材育成を目的とした院外研修参加・看護研究発表を推進していく。

7)特定看護師の育成と活動による新たな活動

特定行為研修終了者は19名であり、呼吸器(気道確保に係るもの)関連・呼吸器(人工呼吸療法に係るもの)関連・血糖コントロールに係る薬物投与関連・術後疼痛管理関連・循環動態に係る薬剤投与関連・動脈血液ガス分析関連・創傷管理関連・透析管理関連の10行為の実践が可能となっている。のべ実施件数359件(昨年比+137件)であった。今後も引き続き特定行為研修修了者が高い看護の専門性を発揮した活動が展開できるよう体制を整えていく必要がある。

8)自宅訪問・他施設訪問

患者が退院後も住み慣れた自宅で暮らせるよう、地域と連携し退院支援を行っている。 退院前または後に自宅訪問を行い、自宅環境の確認や患者の生活状況を確認する事で、より効果的な支援が行えるよう努めている。自宅訪問した患者数は26件(昨年比-16件)であった。コロナ禍の影響で自宅訪問が減少した。また、転院先施設職員へのスムーズな情報伝達に向けた他施設訪問件数は32件(昨年比+21件)であった。今後も継続した退院支援を実施するとともに、入院前から情報収集を行い必要な患者への退院支援を推進していく。

文責 森田理恵、富田恵子、大東美佐子