薬物療法内科

薬物療法内科の活動状況と今後の展望

活動状況

薬物療法内科では生活習慣病を含めた急性、慢性の疾患について、薬剤特性を生かした安全で効果的な治療を行うことをめざしている。すなわち、薬剤各々の特性や作用様式の知識を生かして、各個人の身体機能、病態にあった薬物選択を行うとともに適正な投与量、投与方法、薬効評価を行うものである。また最近、複数の慢性疾患に対して多種類の薬剤を服用している例や、市販薬、健康食品、サプリメントの使用が増えているが、このような多剤併用ではそれぞれの薬物の間の相互作用による作用の減弱・増強や有害反応の増強を引き起こす可能性があり、各診療科の専門医との連携による解決を図っている。
当診療科では、薬と薬、薬と食品などの相互作用に関する情報に基づき、薬の効果が急に変化した場合などについて原因を探る試みを続けている。薬剤アレルギーについての相談窓口としての対応も行っており、治療効果を損なわずに副作用の最小化を目指した薬物療法に注力している。

専門外来では、生活習慣病の原因となる肥満症に対して「肥満外来」を実施している。一般的な食事療法及び運動療法に加え、体脂肪率の評価に基づいた薬物療法を実施している。身体的に過剰な副反応が生じない治療に重点をおき、肥満症例の睡眠時無呼吸診療も行っている。「肥満外来」では、令和3年度より、当院の消化器外科、内分泌代謝内科、精神科、栄養部をはじめとする、多職種による「肥満症治療チーム」の最初の窓口として診療を行い、患者への説明の不一致がおこらないように配慮している。外科治療適応となる肥満症患者の情報共有の場として「肥満症カンファレンス」を行っているが、対象患者数も徐々に増加し、外部からの新規患者の紹介もいただいており、以前に観察終了となった症例の再検討も行うなど、複数診療科による診療が円滑におこなわれるようになった。

「禁煙外来」では、健康保険でニコチン依存症の治療を行う施設として、禁煙治療のための標準手順書に沿った禁煙補助治療を行っている。喫煙及び受動喫煙による健康への影響について理解していただく禁煙教育に加え、喫煙量の目安として理解されやすい呼気中一酸化炭素濃度の測定を行うことにより禁煙指導に役立てている。離脱症状に対してはニコチンパッチ製剤などの禁煙補助薬も積極的に利用しているが、当科では特に薬剤の効果が十分に確保できない場合の対応にも注力しており、禁煙治療として高い成功率を維持している。また禁煙治療への啓蒙活動も行っており、今年度は4月23日、鳥取大学医学部市民公開講座にて「喫煙者ゼロの社会の実現にむけて~プロがわかりやすく語るタバコが悪者になった理由!」のテーマで環境予防医学 尾崎米厚先生、呼吸器・乳腺内分泌外科学 中村廣繁先生とともに講演を行った。

令和4年4月より専門外来のひとつとして「漢方外来」を開設した。週1回の外来で外部からの紹介も受付けており、徐々に周知されつつある。

また令和3年より当院における先駆的取り組みとして、禁煙治療のオンライン診療を行っている。これは医療情報部、医事課、医療支援課、経営企画課、看護部とともにワーキンググループを立ち上げてシステムの構築を行ったもので、診療受付・呼び出しアプリである「とりりんりん」と連動して稼働中である。

今後の展望

「肥満症治療チーム」では、引き続き多職種連携して肥満症治療に取り組む。肥満症治療薬については当科における基礎研究を含め治療薬の開発も徐々に進行し、選択肢が増えつつある。「禁煙外来」ではニコチン貼付剤による禁煙支援は成功率も高く、個々の病態、環境にあわせて、さらにきめ細かい指導につとめていく。

文責:長田 佳子(薬物療法内科)