放射線治療科

令和4年度、放射線治療科ももれなく新型コロナウイルスの猛威に影響を受けた一年といえると考えております。治療の件数にも非常に波がありました。スタッフのコロナ感染もあり、診療自体が苦しい時期もありましたが、全員が協力することによって何とか乗り切ることが出来ました。しかし、年度後半からは治療件数も増え始め、最終3月には1021件と、これまでで最高の治療件数を記録しました。その中で特徴的であったのは、県立中央病院を始めとした鳥取県内からの、子宮頸癌に対する放射線治療の依頼が増え始めたことです。子宮頸癌の放射線治療は、外部照射と小線源治療(腔内照射)の二つを組み合わせることが原則です。鳥取県では特に後者が遅れておりました。しかし、2020年以降、MRIガイド下画像誘導小線源治療(IGBT) を導入し、また2022年、多くの方々の協力を得つつ、腔内照射と組織内照射を併用した治療が可能となりました。これでようやく全国レベルに追いついたこともあり、県内の症例が集まりつつある状況に至ったと考えております。
放射線治療科としては令和4年度3月末に、子宮頸癌に対する小線源治療のセミナーである、"BrachyAcademy 2023 in Yonago"を主催いたしました。コロナ禍まだ冷めやらぬ中、多くの先生方に全国から集まっていただき、非常に意義深いセミナーを開催することができました。ご協力いただいた皆様に心より感謝いたします。子宮頸癌の放射線治療、特にIGBTについては今後も烏大病院に集約してゆく必要があり、今後も全国レベルが保てるよう、精進してゆきたいと考えております。

その他として、常々の目標としております強度変調放射線治療(IMRT)の割合50%、については、上下はあるものの、おおむね維持されております。県立中央病院で開始されたIMRTも順調であると伺っています。また、転移性脳腫瘍及び体幹部腫瘍(肺・肝臓)に対する定位放射線治療(SRS/SRT) は決して症例数としては多いとは言えませんが、継続施行させていただいています。新規の治療としては、ソマトスタチン受容体陽性の神経内分泌腫揚に対して、放射線医薬品でありβ線が抗腫瘍効果を示すルテチウムオキソドトレオチド(177Lu)を用いたRI治療を開始しました。消化器内科と協力して、2022年12月より同治療をスタートさせています。
令和4年度も、前年度同様、新型コロナ感染症の影響を大きく受けた一年となってしまいました。そのことが今後の癌治療に悪影響を及ぼさないよう、烏取県及び山陰地方の放射線治療に対する貢献のため、スタッフー同協力して精進してゆきたいと考えています。また、烏取県の癌治療成績は改善ししつつありますが、さらなる成績向上に向けて、院内の各科、及び近隣・県内の施設との協力関係を継続し、来年度はさらに精度が高く、かつ安全な放射線治療を提供することを目標としたいと考えておりますので、何卒よろしくお願いいたします。

文責 吉田賢史(診療科長)