検査部

検査部は高品質な臨床検査の提供を基本方針とし、日常診療に欠かせない臨床検査の精確かつ迅速な結果報告を行えるよう、日々責任を持ち日常業務を行っています。高品質な臨床検査の提供のために、検査部は輸血部、病理部とともに国際的に高い水準の検査室が認定される臨床検査室の国際認定規格ISO15189を平成29年に取得しました。

院内の多職種連携では院内感染制御対策チーム(ICT)、栄養サポートチーム(NST)、糖尿病支援チームなどのチーム医療に参画しています。新型コロナウイルス感染症PCR検査(SARS-CoV-2)は院内検査を令和2年3月に開始し院内の感染制御を支援しています。

I.質の高い臨床検査の保証

医療法の一部改正(平成30年)があり、臨床検査の精度管理はこれまで以上の厳密な管理が求められています。検査部には認定臨床化学・免疫化学精度保証管理臨床検査技師、認定臨床染色体遺伝子検査師(遺伝子分野)が在籍しており、検査精度の管理体制の強化に取組んでいます。

1)微生物検査部門では、令和2年度から感染制御部と連携し新型コロナウイルス感染症の院内感染対策を重点業務として取り組みました。令和3年1月陰圧室増設工事を行いバイオセーフティレベル(BSL)3相当の結核菌検査室を設置しました。令和3年2月より運用開始し抗酸菌検査・新型コロナウイルス感染症PCR検査(SARS-CoV-2)を実施しています。感染症微生物検査の実施と共に、感染制御対策チーム(ICT)の一員として検出菌解析をはじめ、感染制御部カンファレンス、抗菌薬カンファレンス、ICT病棟ラウンドに参画しています。感染制御の臨床検査技師の質的な要求度、業務量は年々増加しています。質量分析装置を運用して検出菌同定結果報告、抗菌薬感受性検査の所要日数短縮化による抗菌薬適正使用を支援しています。現在、認定臨床微生物検査技師4名、ICMT4名が在籍しています。

2)生化学・免疫検査部門は、大型迅速検査システムを導入し、院内検査導入の要望があった検査を開始し日常診療を支援しました。外来迅速検査加算対象項目について、検査所要時間調査を定期的に行い迅速な結果報告の検証を行っています。また、治験検査、臨床研究の関連検査、特殊検査、検体管理業務も行っています。臨床検査の厳密な精度管理に関与する認定臨床化学・免疫化学精度保証管理臨床検査技師1名が在籍しています。

3)血液検査部門は、造血器疾患の診断治療に必要な骨髄検査の質の向上、人材育成に努めてます。骨髄検査技師2名、認定血液検査技師5名が在籍し、知識の習得と技術の向上をはかり骨髄検査の質向上を継続しています。骨髄検査は、骨髄画像を電子カルテに報告を行い、診療支援を行っています。フローサイトメトリー検査では、病理学的検査と連携した検査結果の解析件数が増加し、解析能力の精度向上と迅速化を進めています。県内の認定資格取得を目指す技師の技術指導にも協力しています。

4)一般検査部門は、検尿一般検査、尿沈渣検査の人材育成に努めています。髄液一般検査では一部を血球計数装置による機械測定を導入し、時間外の緊急髄液細胞検査の検査所要時間の短縮をはかっています。

5)輸血検査部門では、安全な輸血が行える輸血検査、輸血業務体制の継続に取り組んでいます。血液型検査、交差適合試験は24時間検査体制で取り組んでいます。コンピュータークロスマッチに導入により、出庫所要時間短縮がはかれました。アルブミン製剤も輸血部門が一元管理を行っています。現在、認定輸血検査技師3名、細胞治療認定管理師2名が在籍し、県内の認定資格取得を目指す技師の育成に協力しています。

6)遺伝子検査部門は、新型コロナウイルス感染症PCR検査(SARS-CoV-2)を令和3年度も最重点業務と位置付け、業務を行いました。認定臨床染色体遺伝子検査師(遺伝子分野)1名が在籍し、厳格な品質管理を達成する検査体制を構築するとともに他施設技師の検査指導も行っています。病院の方針、地域の要望に対応し院内感染防止のための新型コロナウイルス感染症PCR検査(SARS-CoV-2)の24時間体制の確立と行政検査を開始し地域医療を支援しています。

7)中央採血室の採血患者数は、令和3年度93,506名でした。外来採血者が集中する時間帯は、看護部による採血業務応援、検査技師が検査業務と兼任しながらの採血実施など採血待ち時間短縮に取組んでいます。

8)生理検査部門は、令和3年度も感染防止対策を強化し患者、検査者ともに安全な検査環境整備に注力しました。診療科の要望に対応し超音波検査枠を増枠し、技師の超音波検査実績は増加傾向が続いています。令和3年度は免疫チェックポイント阻害薬使用予定患者に対する心エコー検査の対象薬剤を広げ、検査件数は大幅に増加しました。また検査に関連する診療科カンファレンスに参加し業務の精度向上に努めています。

令和3年度の技師超音波検査実施件数は、年間9138件で令和2年度の検査件数(8247件)より増加しています。

検査実績は、心臓エコーが令和2年度は3025件に対し令和3年度3405件、腹部エコーは令和2年度1839件に対し令和3年度1905件でした。下肢静脈エコーは令和2年度1948件に対し令和3年度1960件でした。乳腺エコーは、令和2年度231件に対し令和3年度247件でした。肝硬度測定/超音波エラストグラフィーは令和2年度40件に対し令和3年度411件と急増しました。超音波検査の出張検査の件数は、令和2年度256件に対し令和3年度334件でした。

呼吸機能・神経・感覚機能検査は、令和3年度18435件、新生児聴力検査は439件でした。

II.未来の技師力を育てる

検査部教育プログラムにそって部員の卒後教育を行い人材育成に取り組んでいます。その中で計画的に専門分野の認定資格取得を推奨し、部員の資質向上に努めています。令和3年度は令和2年度に新型コロナウイルス感染症により中止となった資格試験が実施され、認定POCコーディネーター1名、鳥取県肝疾患コーディネーター1名、認定骨髄検査技師1名、超音波検査技師1名、感染制御認定検査技師1名が資格取得しました。論文発表は英文論文3題を発表し、全国学会誌発表を含む全国学会、地方会の学会ならびに研修会の講演、発表を行いました。検査部勉強会は毎月1回定期開催し、研究発表、業務、採血関連の研修を行っています。

III.チーム医療参画

チーム医療への参加では、糖尿病支援チームに3名が参加しています。検査部では糖尿病教室で月2回、糖尿病における血液検査と動脈硬化の超音波検査の講義を担当しています。また定期カンファレンスに参加しています。

栄養サポートチーム(NST)は2名が参加しています。検査部では、CONUT法により血液検査の結果を用いた栄養状態のスクリーニングによる分析を週2回実施し解析結果を報告しています。NST専門療法士研修講師、院内NST研修会講義を担当しています。

ICT活動は微生物検査部門の技師1名が専任で感染制御部の業務を担当しています。ICT活動では抗菌薬適正使用チーム(AST)にも参画しています。現在、血液培養カンファレンス、抗菌薬カンファレンスに2名の技師が参加しています。ICTの業務は微生物検査部門と連携して検出菌情報、院内感染制御に関する検査結果の解析を行い、感染制御部へ報告を行っています。

IV.臨床検査情報発信

検査部情報発信「検査部だより」は毎月1回定期発行を継続しています。「検査部だより」は検査部ホームページに掲載し、臨床検査について職員や患者様に理解してもらいやすい紙面づくりを工夫しています。検査情報案内の血液検査解説パンフレット「教えて!検査用語」を作成し採血室に設置配布しています。

V.地域貢献

地域の医療職種研修として、超音波検査(検査技師)の研修受入を行っています。超音波検査士認定資格受験に必要な症例研修を行い地域の検査技師教育に協力しています。令和3年度も新型コロナウイルス感染症の影響で実施できませんでしたが、今後も鳥取県内の検査技師を対象とした技能研修の受入れによる検査技師の人材育成に貢献したいと考えています。

VI.資格認定・業績

  • 令和3年度資格認定
    認定POCコーディネーター1名、鳥取県肝疾患コーディネーター1名、認定骨髄検査技師1名、超音波検査技師1名、感染制御認定検査技師1名
  • 令和3年度学術業績
    論文発表 5題 (英文3題、全国2題)、学会発表 18題 (国際学会2題、全国4題、地方12題)

VII.検査実績

検査部 臨床検査技師長 市川 ひとみ