第二内科診療科群

消化器内科

消化管・胆膵グループ

内視鏡診断として消化管癌などの早期発見を目的にハイビジョン画像システムや画像強調を併用した内視鏡検査を行っており、また拡大内視鏡・超音波内視鏡を用い病変の質的診断に役立てています。消化管粘膜下腫瘍、胆膵癌の病理診断を目的とした超音波内視鏡下穿刺吸引生検、胆道癌に対する経口胆道鏡(POCS)を用いた通常観察、直視下生検を行っています。内視鏡治療では、食道静脈瘤に対する内視鏡的硬化療法・静脈瘤結紮術、消化管出血止血術、消化管内異物除去、早期食道癌および早期胃癌に対する内視鏡的粘膜切除術・アルゴンプラズマ及びレーザー焼灼術、胆管結石に対する内視鏡的結石除去術、砕石術、閉塞性黄疸症例に対する経乳頭的胆道ドレナージ、早期大腸癌・ポリープの内視鏡的治療等の様々な治療を行っています。消化管癌、胆道癌・膵癌による悪性腫瘍に伴う消化管狭窄に対して内視鏡的消化管ステント留置術も実施しております。早期食道癌・早期胃癌・早期大腸癌に対しては低侵襲治療で治療効果の高い内視鏡的粘膜下組織剥離術(endoscopic submucosal dissection; ESD)を年間200件以上施行しています。最近は消化器外科と共同して十二指腸腫瘍に対するLECSも導入しています。ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎・消化性潰瘍・早期胃癌内視鏡治療後等に対するヘリコバクター・ピロリ除菌療法、炎症性腸疾患診療、食道・胃・胆道・膵癌の化学療法にも積極的に取り組んでいます。

特殊検査として小腸内視鏡・カプセル内視鏡(2017年10月より大腸カプセルも導入)、食道アカラシアなど機能性食道疾患が疑われるときの高解像度食道内圧検査(high resolution manometry: HRM,2017年12月より導入)、Interventional EUSとして、閉塞性黄疸に対して経乳頭的ドレナージに代わる超音波内視鏡下瘻孔形成術(EUS-BD)、膵仮性嚢胞に対するEUSガイド下嚢胞ドレナージ(EUS-CD)・内視鏡的ネクロセクトミー、腹腔神経叢融解術(EUS-CPN)等を実施しており、他施設にて実施困難であった内視鏡処置を完遂できるようにしています。また胆石症例のうち巨大な積み上げ結石に対してはPOCSによる直視下に電気水圧衝撃波胆管結石破砕装置(EHL)を用いた除石術を行っています。術後再建腸管に合併した胆管結石に対する治療では、ダブルバルーン内視鏡を用いたERCP(DB-ERCP)を行い、完全結石除去をしています。

当科の特徴的な治療として、化学放射線治療後の再発・遺残食道癌にレザフィリン光線力学的治療(PDT)が保険収載を受け、2016年1月に中国地方で1例目のPDTを当院で施行しております。患者に優しい低侵襲治療であるPDTの症例を集積しています。食道アカラシアの治療法である「POEM (ポエム)」と呼ばれる内視鏡治療が2016年4月から保険収載となり、当科でもこの治療法の開発者である昭和大学江東豊洲病院の消化器センター長 井上晴洋先生の協力の下、2017年10月に山陰地方で1例目のPOEMを行っております。現在、50例以上に施行し症状の改善を認めています。

さらに患者さんにとって最も良い治療法を検討するために定期的に消化器外科・放射線科との合同カンファレンスも行っています。

【令和3年度検査・治療実績】

消化管グループ

  • 上部消化管内視鏡検査 3967件
  • 下部消化管内視鏡検査 1760件
  • 小腸内視鏡検査 26件
  • 小腸カプセル内視鏡検査 45件
  • 食道アカラシアに対するPOEM 9件(2017年からの総計51件)
  • 食道腫瘍内視鏡治療 47件(食道ESD 42件)
  • 胃腫瘍内視鏡治療 116件(胃ESD 110件)
  • 大腸ESD 79件

胆膵グループ

  • 内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP) 518件
  • そのうち術後再建腸管に対するERCP 39件
  • 超音波内視鏡検査(EUS) 650件
  • そのうちEUS-FNA 119件
  • Interventional EUS 33件
  • 経口胆道鏡・膵管鏡65件

肝臓グループ

急性肝疾患診療においては、原因不明の急性肝炎や高度医療を必要とする急性肝不全患者を受け入れており、肝臓移植を考慮すべき患者においては岡山大学消化器内科および移植外科と診療連携を行っています。重症の薬物性肝障害、特に最近増加傾向にある免疫チェックポイント阻害薬による免疫関連有害事象(irAE)への対応を他診療科と連携しながら行っています。

慢性肝疾患診療においては、肝性脳症、難治性腹水などの難治性肝不全患者の診療を多く行っており、肝性脳症に対しては分岐鎖アミノ酸製剤、カルニチン製剤、難吸収性リファキシミン製剤、酢酸亜鉛製剤などの薬物を用いた治療や放射線科と連携したインターベンショナルラジオロジー(IVR)治療、難治性肝性腹水患者に対してはバソプレシン受容体拮抗薬であるトルバプタンによる治療や放射線科と連携して腹水濾過濃縮再静注法(CART)を行っています。慢性肝疾患に伴う皮膚掻痒症患者に対しては、ナルフラフィンの投与を行いQOLの改善にも配慮しています。

活動性B型肝炎ウイルス(HBV)患者に対しては、主に核酸アナログ製剤による治療を行っています。肝臓内科非専門医に対して化学療法・生物学的製剤導入に伴うHBV再活性化予防対策を徹底するため、電子カルテを用いたアラートシステムを導入するとともに、当該診療科のみでの対応が困難な患者に対しては院内診療連携を行っています。

C型肝炎ウイルス(HCV)患者に対しては、IFNフリーの直接作用型抗ウイルス剤(DAA)治療を中心に行い、高いウイルス持続陰性化(SVR)率を挙げています。一部のSVRが得られなかった患者や非代償性肝硬変患者に対してはソホスブビル・ベルパタスビル±リバビリン療法を導入しています。

治療介入は不要な非活動性HBVキャリア患者、治療中の慢性HBV患者、未治療あるいは治療後のHCV患者に対しては、肝発癌リスクに応じた頻度で腫瘍マーカーと腹部超音波検査によるサーベイランスを継続して行い、早期肝細胞癌(HCC)の診断に努めています。その際、腹部造影超音波やEOB-MRIなどの画像検査を積極的に取り入れています。肝発癌リスクが高い患者に対するHCCサーベイランスが地域全体で適切に実行されることを目指して、鳥取県健康対策協議会と鳥取県内の基幹病院(当科、山陰労災病院、米子医療センター、博愛病院、済生会境港総合病院、鳥取県立厚生病院、鳥取県立中央病院、鳥取赤十字病院、鳥取市立病院)に協力いただき、初発HCC患者の診療実態調査を行っています。最近増加していますHBV・HCV陰性の非B非C型(NBNC)HCCのサーベイランスを目指して、糖尿病専門医と協力した体制作りを始めています。

腫瘍性・びまん性肝病変に対する経皮的アプローチとして、超音波ガイド下肝(腫瘍)生検、肝嚢胞や肝膿瘍ドレナージ術を行っています。また、HCCや転移性肝腫瘍に対しては、ラジオ波焼灼療法(RFA)を行っています。その際、肝硬変に伴う血小板減少患者に対しては、トロンボポエチン受容体作動薬であるルストロンボパグを前投与し、安全に手技が実施できるよう心がけています。また、HCCの分子標的治療薬として、従来のソラフェニブに替わりレンバチニブを積極的に導入し、二次治療薬としてレゴラフェニブやラムシルマブを導入しています。

HCC患者の治療方針決定に当たっては、当科肝臓グループ医師によるカンファレンスを毎週火曜日に行い、さらに当科・消化器外科・放射線科による三科合同カンファレンスを毎週木曜日に行い、結果を診療録に記載することにより診療科間の情報共有や患者にとり最適な治療法が選択できる体制をとっています。

当院は肝疾患診療連携拠点病院に指定されていますことから鳥取県肝疾患相談センターを設置しており、自治体や保健所などの行政関係者と連携を図りながら、地域住民に対する肝疾患情報の提供や肝疾患啓発活動などを行っています。

肝臓グループ診療実績 2021年
腹部超音波関連実績
  • 腹部超音波検査 3500件
  • 腹部造影超音波検査 158件
  • 肝硬度測定(エラストグラフィー) SWE:409件、Fibroscan 170件
肝処置実績111例
  • ラジオ波焼灼術46例、肝生検(腫瘍生検含む)58例、その他(膿瘍穿刺など)7例
肝細胞癌がん薬物療法導入
  • 分子標的治療新規導入17例
  • 免疫チェックポイント阻害剤新規導入13例

腎臓内科

腎臓内科が主に診療にあたる分野は、糸球体腎炎や尿細管間質腎炎などの腎疾患と、腎不全期の腎代替療法の大きく2つの分野に分けられ。これらの2大分野に加えて、入院中の患者における腎機能障害や電解質異常などに対するコンサルテーションにも対応している。

腎疾患に関して、尿蛋白や尿潜血などの検尿異常や腎機能障害などにより糸球体腎炎が疑われる症例では、積極的に腎生検を施行している。腎生検の実施件数は2016年までは年間約40件程度であったが、2017年以降は年間60~70件程度と高い数字を維持している。鳥取県西部地区のみならず、中部地区や近隣他県も含めた広域医療圏の症例が集まり、中核病院としての役割を担っている。その他にも指定難病である常染色体優性多発性嚢胞腎に対するトルバプタン導入も行っている。また近年の高齢化や生活習慣病の増加に伴って腎硬化症や糖尿病性腎臓病を原因とした慢性腎臓病が増加してきている。腎炎などの一次性腎疾患の治療のみならず、併存症としての慢性腎臓病の管理も重要となってくることから、地域における腎臓内科医に寄せられる期待は大きく、近隣の診療所との病診連携を行いながら地域医療を支えている。病診連携においては、ガイドラインに準拠した紹介基準に応じた専門医診療の促進ならびに、慢性腎臓病進行予防を目指した専門的治療の促進に努めており、地域連携パスを用いたかかりつけ医との連携が進んでいる。さらに、抗菌薬や化学療法など多岐にわたる薬剤による腎障害に対するコンサルテーションならびに、入院症例における電解質異常のコンサルテーションなどを通じて、他科診療中のサポート体制も整えている。

腎不全期の診療に関して、腎代替療法が必要となる症例については適切な時期に十分な腎代替療法説明を行い、透析導入に向けた準備あるいは腎移植に向けて泌尿器科との連携を図り手続きを進めている。透析導入例では、血液透析または腹膜透析の導入管理と、スムーズな外来維持透析に向けた診療を行っている。加えて、他科へ入院中の維持透析症例については透析室での透析管理を行っている他、炎症性腸疾患に対する顆粒球除去療法などの特殊な血液浄化も実施している。また外来通院中の腎不全症例へのハイブリッド透析なども実施している。加えて、腎代替療法の適切な選択に向けて、保存期からの適切なタイミングによる腎代替療法説明の実施に加えて、泌尿器科と連携して腎移植の啓蒙にも努めている。

令和3年 検査・治療実績
  • 入院患者数 208名
  • 腎生検 53名
  • 血液透析導入 43名
  • 血液透析実施 241名(2402件)
  • 腹膜透析導入 3名
  • 腹膜透析患者数 14名

文責:髙田知朗