超音波室

循環器内科

胸部(心臓)超音波検査は、逆流防止弁の構造異常が原因で起こる弁膜症、心臓の栄養血管である冠動脈の異常が原因で生じる虚血性心臓病、生まれつきの構造異常による先天性心疾患、心臓の筋肉自体の異常で起こる心筋症などを超音波画像でリアルタイムに評価し、診断まで導くことが可能です。当院では3Dエコーを含めた最新の機器を駆使して心臓の形態異常、機能異常、弁膜症、短絡疾患の有無などの評価を行い、個々の患者さんにとって最適な治療方針を選択できるよう努めています。心内血栓の有無を調べたり、弁膜症や短絡疾患の詳細評価を行うため、より心臓に近い部分からの観察を可能にする経食道心臓超音波検査や、安静時ではわからないような心臓の反応を観察するため、運動や薬剤で負荷をかけることにより活動時の心臓の反応を観察できる負荷心エコーも行っています。また潜因性脳梗塞に対する経皮的卵円孔開存閉鎖術実施を見据えた、卵円孔開存症診断のための経静脈コントラスト心エコー検査にも力を入れています。当院ではこれらの検査を駆使し、各種心臓疾患の治療方針決定のために大いに貢献しています。

令和2年度は経胸壁心臓超音波検査4301件、負荷心エコー15件、経静脈コントラスト心エコー図件数(バブルテスト)19件、経食道心臓超音波検査144件でした。今後も検査需要の増加に対応できるよう、検査体制の拡充を図っていく所存です。

(循環器内科 松原 剛一)

内分泌代謝内科

甲状腺超音波検査は、甲状腺疾患の画像検査において第一選択となります。対象となる疾患は、甲状腺機能低下症、甲状腺中毒症、甲状腺結節性病変にとどまらず、甲状腺の近傍に存在しうる副甲状腺腫瘍やリンパ節転移などです。令和2年度には665件の通常検査を行い、うち93件に対して超音波ガイド下穿刺吸引細胞診を行いました。 当科では甲状腺および副甲状腺領域のスクリーニング検査の他に、専門医療機関として下記の診療を検査技師と協力して行い、専門医や専門検査技師の育成にも力を入れています。

手術や放射性ヨウ素内用療法が必要な症例については、頭頚部診療科群、胸部外科診療科群、放射線治療科の先生方と月1回のカンファレンスを行って情報を共有し、連携診療を行っています。

検査及び治療内容:

  1. 甲状腺機能低下症および甲状腺中毒症の鑑別診断
  2. 甲状腺結節性病変の鑑別診断
  3. 甲状腺結節性病変、腫大リンパ節を対象とした超音波ガイド下穿刺吸引細胞診
  4. 甲状腺嚢胞性結節を対象とした経皮的エタノール注入療法 (PEIT)

(内分泌代謝内科 伊澤 正一郎)

消化器・腎臓内科

腹部超音波検査は、肝臓、胆嚢、膵臓、腎臓、脾臓を中心とした腹腔内臓器を中心に外来および入院患者のスクリーニング検査、そして消化器癌がんの早期発見のため精密検査等を行っています。

肝臓患領域では、リアルタイムにCTやMRI画像を融合することが可能となった最新の腹部超音波装置を用いて、各臓器・病変に対してより正確な存在診断、質的診断を行っています。また、肝硬度測定のためにはエラストグラフィー導入し、肝線維化進展度を評価しています。とくに造影超音波検査は、腫瘍の存在診断、質的診断による鑑別を行い、正確な診断に有用です。治療においては、最新の腹部超音波装置を使用し、ラジオ波焼灼術による肝癌(原発・転移)の治療を積極的行っています。

胆膵領域では、体外式腹部超音波検査を用いて、スクリーニング検査、精密検査を行っています。さらに内視鏡室と情報を共有し、超音波内視鏡検査を行い、消化器がんの深達度診断、鑑別診断、さらに膵臓疾患の診断に役立てています。

腎臓領域では、慢性腎臓病の形態変化(皮質の委縮)が、特に左の腎臓から早期に出現するのを超音波で検出できる事を報告し、世界的に評価されています。

昨年度は在宅医療推進のための看護師育成支援事業(THOC)の看護師さん対象のハンズオンセミナーや、鳥取大学附属中学校の生徒さんに体験授業「音を使って中身をみてみよう」を開催しました。また、鳥取県西部腹部超音波研究会を、大学病院腹部超音波室、医師会を中心に開催し、新規超音波技術の習得と超音波診断の普及を行い、幅広い超音波教育にも力を入れています。

消化器・腎臓内科 杉原誉明

呼吸器内科・膠原病内科

呼吸器内科・膠原病内科では、関節超音波検査を毎週水曜日の13時半~16時半に予約制で行っております。この検査を行うことで、関節リウマチの診断やその活動性評価、その他の疾患との鑑別を行うことができます。検査体制は、日本リウマチ学会登録ソノグラファー1名を中心に行っており、令和2年度には51件の検査を行いました。 関節超音波は診断・評価の他に、治療の補助にも用いることができ、当科で関節リウマチなどの治療のために関節へ薬剤を投与することが必要な際には、超音波を用いた薬剤投与も行っております。また関節症状の原因がはっきりしないケースでは、関節超音波を用いることで診断の補助となり、診察のみでは分からない関節内部の状態を評価することで、治療方針を決めることもできています。

検査件数は増加傾向にあり、現在は若手医師の育成にも力を入れ、検査体制の拡充を目標としております。

文責 呼吸器内科・膠原病内科 原田智也

乳腺内分泌外科

乳腺内分泌外科では、超音波室では乳房の超音波検査を中心に行っています。

乳腺診療において超音波検査は必要不可欠な検査であり、乳房内の腫瘍性病変の診断や腋窩のリンパ節の評価などに用いられています。通常診療として各診察室で超音波検査を行っていますが、超音波室ではより時間をかけた詳細な検査を臨床検査技師が中心として行っています。現在のところ、毎週月曜日と金曜日は主に術後フォローとして、毎週水曜日は術前検査として、行っています。超音波室では年間約300例の検査が行われている状況です。

各診察室と超音波室での検査を併用することにより、よりよい診療を提供できると考えています。さらに検査体制が整うよう、尽力致したいと存じます。

(乳腺内分泌外科 若原 誠)

小児科

小児科では、先天性心疾患、心筋症、川崎病に伴う冠動脈病変、さらには学校心電図検診における心電図異常や乳児健診での心雑音に対する精密検査として心臓超音波検査を行っており、年間約1000例の心エコー検査を実施しています。当院では小児先天性心疾患の外科治療は行っておりませんが、術前・術後の管理、手術施設との綿密な連携のため、適切な診断を行うよう努めております。また、女性診療科と新生児科医とも連携し、胎児心エコーによる胎児診断及び出生後の治療方針の決定を行っております。私たち小児科は、『すべての小児に最善の医療を』提供することを使命とし、山陰の小児医療を担う中核施設として日々研鑽を行っています。

小児科 坂田 晋史

心臓血管外科

心臓血管外科では、心臓超音波検査を心疾患、下肢動脈超音波検査を下肢閉塞性動脈硬化症、下肢静脈超音波検査を深部静脈血栓症や下肢静脈瘤の診断・治療に活用しています。

心疾患領域では、開胸での心臓・大血管手術、及び経カテーテル的大動脈弁植込み術の術中に経食道心臓超音波検査を行っております。これにより、術中操作の確認や追加治療の必要性などを、より詳細に判断出来ます。また、僧帽弁修復術の術前3D超音波検査にて、術中の所見とほぼイメージ通りの弁の形態を知ることが可能になり、手術成績の向上に繋がっており、またロボット手術の可否を判断しております。2020年は開胸での心臓・大動脈手術が136例(うち、ロボット支援下僧帽弁修復術9例)、経カテーテル的大動脈弁植込み術が33例あり、いずれも麻酔科・循環器内科の医師や臨床検査技師と協力しながら、より精度の高い治療を行っています。

また、植え込み型補助人工心臓の治療分野では人工心臓の回転数の決定や、脱血管周囲血栓や基部血栓の有無、晩期合併症の有無の検索など、超音波検査が非常に重要な役割を担っています。

下肢動脈治療においても、CTや血管造影だけでは得られない、流速や血管性状などの情報を超音波検査から得ることができます。下肢静脈瘤治療においても超音波は術前診断から術中評価、術後評価まで重要な役割を担い、高周波焼灼治療の可否を判断するなど、より低侵襲な治療が行えることを可能にしています。

今後も各部門の連携を深め、よりよい医療を提供できるよう研鑚していきたいと思います。

(心臓血管外科 大野原岳史)

皮膚科

皮膚科は毎週火曜日10:00-11:00に予約制で超音波検査を行っています。

主に皮膚・皮下腫瘍の診断や術前評価に用いており、腫瘍の内部構造の確認や腫瘍の局在の確認、血流の有無や周囲組織との関係の確認などを行っております。非侵襲的かつ短時間で施行できるため、小児の検査にも使用しています。具体的には、粉瘤、石灰化上皮腫、脂肪腫、皮膚線維腫、血管腫、血腫、神経鞘腫、異物、リンパ節腫大などについて超音波検査を行いました。

(皮膚科 森 裕美)

耳鼻咽喉科・頭頚部外科

頭頸部外科エコー(耳鼻咽喉科・頭頚部外科)
福原隆宏

火曜日の午前と木曜日の午前・午後に、頭頸部腫瘍や甲状腺疾患、感染性疾患などを対象とした精査や治療、およびスクリーニングを行っています。

頭頸部腫瘍においては、Bモードエコー所見に、ドップラーによる血流評価やエラストグラフィによる硬さ評価を組み合わせることにより、高い精度の検査が可能となっています。組織の硬さを評価するエラストグラフィでは、最新のshear wave elastographyやARFI imagingを使用しており、頭頸部領域における良悪性鑑別診断の精度を上昇させています。

現在は甲状腺の超音波専門医1名、表在臓器の超音波検査士1名を含む、医師3名、技師4名で検査を担当しています。

令和2年度は、エコー実施件数は約1293件でした。

実際の診療内容は以下の通りです。

  • 甲状腺疾患では、当院内分泌内科、内分泌・胸部外科と連携を図りながら治療にあたっています。エコーによる精査に併せて、腫瘍性病変に対しては、その場で穿刺吸引細胞診を施行します。甲状線嚢胞に対しては、外科的切除の他、PEITなども行います。主な対象疾患は手術加療を必要とする甲状腺良性・悪性腫瘍,副甲状腺良性・悪性腫瘍,甲状腺機能性結節,バセドウ病などです。橋本病や悪性リンパ腫の診断(と加療)も行っています。火曜日は甲状腺外来と並列で行っています。また、内分泌内科との連携を密にしており、内科的加療が必要な疾患に関しては内分泌内科へ紹介もしています。
  • 頸部腫瘤全般に対しての精査と診断を行います。表在領域において、エコーは最も優れた分解能をもつ画像検査であり、迅速な診断と適切な治療を可能にしています。
  • 頭頸部悪性腫瘍のリンパ節転移評価を行います。エコーは、リンパ節の転移評価に対し最も感度がよい検査です。正確な術前診断により、よい手術成績を実践しています。
  • 他臓器原発悪性腫瘍による頸部リンパ節転移を疑う症例においても精査し必要な場合にはエコーガイド下にFNAを施行し診断します。
  • 悪性リンパ腫の診断、再発診断にもエコーは有用です。頸部病変を疑われる場合は血液内科より紹介を頂いています。必要に応じて、エコー下穿刺による組織診や切開生検の手術を予定します。
  • 頸部のリンパ管腫に対してのOK-432の注入療法やエタノール注入療法(PEIT)を施行します。
  • 自己免疫性の唾液腺疾患のエコー診断を行います。IgG4関連疾患やシェーグレン症候群など唾液腺病変をもつ疾患は、唾液腺の変化を早い段階で捉え、診断へ結びつけることができます。
  • 頸部腫瘤の中には、組織診による診断が必要となる疾患があります。当科では穿刺生検のLBC洗浄液からセルブロックを作成し、免疫染色の追加も行っています。適応を吟味した上で、穿刺組織診(CNB)を行うこともあります。

検査部

生理機能検査部門の臨床検査技師は、心臓、腹部、甲状腺(頸部)、乳腺、血管領域の超音波検査を行っています。現在12名の技師が超音波検査業務を併任し、うち8名が超音波検査士の資格を有しています(領域別に循環器4名、消化器7名、体表臓器2名、血管1名)。

令和2年度に検査技師の実施した超音波検査総件数は8,247件で、領域別件数は心エコー3,025件(前年度3,169件)、腹部エコー1,839件(前年度1,871件)、甲状腺エコー279件(前年度325件)、乳腺エコー231件(前年度299件)、頸動脈エコー773件(前年度846件)、下肢静脈エコー1,948件(前年度1,643件)、下肢動脈エコー90件(前年度107件)、腎動脈エコー22件(前年度13件)でした。新型コロナの影響で、前年度と比較して総件数は26件減少しましたが、下肢静脈エコーは、診療科からの要望により検査枠を拡大したことで件数が増加しました。今後も診療科からの要望に対応するとともに医師の業務軽減に貢献していきたいと考えています。

また、治療方針決定のための経食道エコー(3D経食)や負荷心エコーでは、画像構築や詳細な計測を行い、マイトラクリップ(経皮的僧帽弁形成術)や経皮的卵円孔開存閉鎖術ではハートチームの一員として術中経食道エコーのパネル操作を行っています。

検査部では、技師によるエコー検査の実施件数を増やすとともに、関連する診療科カンファレンスに参加し業務の精度向上に努めています。また超音波検査に従事している技師は、日本超音波医学会、日本超音波検査学会、日本心エコー図学会などの関連学会に所属し学会発表や研修会、指定講習会に積極的に参加するとともに、地域の技師や大学院生への技術指導も行っています。

(検査部 佐藤明美)