新規医療研究推進センター

研究実用化支援部門

1.ミッション・ビジョン・戦略

ミッション

研究の成果をイノベーション創造に繋げ、医療及び社会の発展に貢献する

ビジョン

医療機器・医薬品の開発やイノベーションを起こす人財の育成

戦略
  1. 研究の基礎から実用化までのシームレスな支援
  2. 人に役立つ喜びを感じ、研究を通じて社会に貢献しようとする人財の育成

2.体制

職名 氏名
教授(部門長) 植木 賢
准教授(副部門長) 古賀 敦朗
准教授 上原 一剛
助教 藤井 政至
産官学連携コーディネーター 才木 直史
事務補佐員 勝部 ゆか

3.研究実用化支援部門の実績

2020年度,鳥取大学医学部附属病院をはじめとする各医療現場のニーズに基づき,産官学が連携して新しい医療・介護機器等を開発した.

主な成果として,紙製フェイスシールド「ORIGAMI」(有)サンパックや飛沫防止ボックス「トラキアボックス」(株)メディビート,手術に使うルーペ用の曇り止めフィルム「メディモア」シャープ米子(株)他の開発・製品化が挙げられる.

また,具体的な成果は以下のとおりである.

(1) 製品化,特許出願件数等

製品化 4件

  • (有)サンパック:紙製フェイスシールド「ORIGAMI」
  • (株)メディビート:飛沫防止ボックス「トラキアボックス」
  • (株)メディビート,シャープ米子(株):手術に使うルーペ用の曇り止めフィルム「メディモア」
  • (有)サンパック:紙製フェイスシールド(小児用)「ORIGAMI Jr.」

特許出願 9件

特許出願 7件

特願2020-102632 マウスピース
発明者:藤原和典,植木賢,松本和也,上原一剛

特願2020-114981 医療装置
発明者:松永忠雄,植木賢,森實修一,上原一剛,李相錫

特願2020-128908 エアロゾルボックス
発明者:才木直史

特願2020-147916 けいれん重積型急性脳症の診断支援装置、診断支援プログラム及び診断支援方法
発明者:前垣義弘

特願2020-175019 OSCE支援システム
発明者:植木賢

特願2020-180112 包帯巻き具
発明者:庄川久美子

特願2020-187004 組み立て式フェイスシールド
発明者:藤井政至

特許登録 2件

特許番号6842657号;心因性疾患判定装置
発明者:植木賢

特許番号6837258号:喉頭鏡及び喉頭鏡用ブレード
発明者:三浦真澄

(2) 原著論文,報告等

原著論文 4件

  • Onoyama T, Fujii M, Isomoto H. Useful face-protective shield “ORIGAMI" for gastrointestinal endoscopy during the COVID-19 pandemic. Dig Endosc. 2020 Jun 24:10.1111/den.13780. doi:10.1111/den.13780.
  • Fujii M, Onoyama T, Ikebuchi Y, Uehara K, Koga A, Ueki M, Isomoto H. A novel humanoid-robot simulator for colonoscopy. Endoscopy. 2020 Oct 8. doi: 10.1055/a-1264-6804. Epub ahead of print. PMID: 33032346.
  • Fujii M, Isomoto H. Next generation of endoscopy: Harmony with artificial intelligence and robotic-assisted devices. Dig Endosc. 32(4) (2020):526-528.
  • Kameyama K, Ohbayashi T, Uehara K, Koga A, Hata Y. The Influence of Illumination Color on the Subjective Visual Recognition of Biological Specimens. Yonago Acta Med. 2020 Sep 25;63(4):266-271. doi: 10.33160/yam.2020.11.004. PMID: 33253346; PMCID: PMC7683909.

和文著書 1件

  • 藤井政至,植木 賢,磯本 一:大腸挿入 究極の軸保持短縮法マスター―物理現象を理解する―,消化器内視鏡 ついつい教えたくなるとっておきのコツ, 384-387, Vol.33, No.2, 2020.(MICOTOテクノロジー大腸モデルを基にした執筆)

学会発表 4件

  • 藤井政至,上原一剛,池淵雄一郎,磯本 一:ロボット技術と立体造形技術を用いた上部消化管内視鏡の教育用シミュレータ開発及び、内視鏡検査の技術評価に関する検討「第106回日本消化器病学会総会」,2020年4月(Web)
  • 藤井政至,吉田 亮,磯本 一:上部消化管内視鏡の光線力学的診断(PDD)画像を用いた深層学習(DL)技術による領域指定と自動AI学習アルゴリズムについての検討,「第99回日本消化器内視鏡学会総会」,2020年9月2日~9月3日.(主題発表)
  • 藤井政至,植木 賢,吉田 亮,池淵雄一郎,上原一剛,下田智大,大田 廉,磯本 一:3D造形技術とロボット技術を用いた次世代内視鏡シミュレータ(mikoto)の開発と評価点数の妥当性に関する検討「第99回日本消化器内視鏡学会総会」,2020年9月2日~9月3日
  • 矢谷真樹生, 董 佳遠, 森實修一, 植木 賢, 上原一剛, 李 相錫,松永忠雄:手術支援ロボット用鉗子のための把持力計測の検討 第27回「エレクトロニクスにおけるマイクロ接合・実装技術」シンポジウム, 2021年2月2日~2月3日(web)

イベント開催 2件

  • AMED 次世代医療機器連携拠点整備等事業 医療機器開発連携推進ネットワーク「和」8拠点合同シンポジウム.「あたらしい医療機器開発のカタチ」2020年9月18日(Web開催)
  • 次世代医療機器産業化フォーラム.岡山大学,大阪医療センターと共同開催.2020年12月21日(Web開催)

学会ブース展示等 2件

  • 日本泌尿器内視鏡学会出展,2020年11月
  • メディカルジャパン出展,2021年2月
(3) 研究費・補助金獲得支援 3件 総額156,591千円
  • 令和2年度 第3次補正予算(国立大学法人設備整備費補助金)採択
    事業名:「デジタルハブユニバーシティ化を見据えた学術情報ネットワーク網の整備」52,920千円
  • 令和2年度 医療技術等国際展開推進事業(国立研究開発法人国立国際医療研究センター)採択
    事業名:「消化器内視鏡検査手技教育用シミュレータを用いた、持続可能な 内視鏡検査技術の向上・教育方法の普及事業」10,000千円
  • 文科省 デジタルを活用した大学・高専教育高度化プラン
    事業名:「総合的学生支援(Quality of College Life)の充実を達成するLMS-eポートフォリオビルディングシステムの構築」93,671千円
(4) 共同研究実績(研究・機器開発支援)

共同研究 新規4件

  • 大腸内視鏡検査トレーニングモデルについての研究評価,MICOTOテクノロジー,90,000円
  • 酸素濃縮装置の呼吸検知機能を用いた在宅酸素療法の評価,ダイキン工業,318,000円
  • 苦痛評価を可能とする把握計の開発に関する研究,メディビート,307,692円
  • 小児用紙製フェイスシールド開発に関する研究,メディビート,650,000円
(5) 人材育成
1) 医療機器開発人材育成 共学講座(AMED事業)

AMED 次世代医療機器連携拠点整備等事業(5カ年事業)
2020年度 採択(継続) 1,000万円
参加企業:38社
共学講座(勉強会,診療現場見学会):4回
医療機器相談会 3回

2) 医学系研究科医学専攻革新的未来医療創造コース

在籍者数:6名

3) 知財創造(発明楽)講義

出張授業

5月12日 鳥取大学医学部生命科学科「生命科学概論Ⅱ」2年生
8月31日 附属小学校5年生
10月1日 鳥取大学医学部医学科「最新診断治療学」1年生
11月 4日 米子高専「複合社会技術論」

(6) 医工農連携
  • 医学,工学,農学などの教員でMEARC会議を構成
  • MEARC会議:6回
  • 医工農連携による医療機器等開発プロジェクト支援:新規5件
  • 学び直し教育プログラム実施:受講者14名

(植木 賢 記)

臨床研究支援部門

1. 体制

臨床研究支援部門は、2018年4月より、下図に示す4ユニットで治験、臨床研究の推進を行っている。

ミッション

新規医療技術の創出を通じて人々の健康福祉と医療の未来に貢献する

ビジョン

透明性及び質の高い臨床研究・治験の推進

戦略

臨床研究・治験の支援に携わる専門家の育成と研究者スキルアップのための教育・研修の提供

新規医療研究推進センター臨床研究部門組織図

2. 治験の実績

当院の治験は、企業から治験依頼を受ける「企業治験」、医師自らが治験の計画/実施をする「医師主導治験」である。企業治験においては、当院への直接依頼、SMO(Site Management Organization:治験施設支援機関)を介した案件紹介で採択、小児治験ネットワークからの案件紹介で採択される受託形態で構成される。

2020年度にIRB承認された新規治験数は20件(うち医師主導治験6件)であった。診療科別では、呼吸器内科が10件(うち医師主導治験5件)、小児科が3件(うちSMO支援1件)、脳神経小児科が3件、整形外科(SMO支援)、皮膚科、消化器外科(医師主導治験)、血液内科(SMO支援)が、各1件ずつ新規治験を受託した。また、前年度から継続した治験は、23件であった。前年度に続いて過去の実績に基づき、繰り返し治験が依頼される基盤ができたことと、SMOを介したフィージビリティ調査が治験依頼に結び付いた。今年度はコロナ禍にもかかわらず、企業治験だけでも2019年度の医師主導を含む新規治験受託数を上回る結果となった。新規治験の実施率については、前相から移行した治験又は遺伝子変異を有するがんを対象とした治験は順調に実施率を伸ばした。継続治験においては、昨年度と同程度であったが、継続治験の半数は100%以上の実施率を達成した。

医師主導治験においては、脳神経小児科が代表施設として主導している神経型ゴーシェ病患者を対象とした治験で、臨床研究支援部門は、治験事務局、一部のモニタリング業務を支援し、予定通り投与を終了することができた。現在は、承認申請に向け総括報告書のとりまとめを行っている。

治験活性化の方策として、前年に引き続きSMOを介した新規治験案件のフィージビリティ調査を継続し、今年度は、新規治験の紹介8件、医師との面会5件を行い、2件の治験の採択が決定した。また、小児治験ネットワークを介した新規治験については、新規治験の紹介8件に対し、1件の治験採択が決定した。

2020年度、本院で支援した以下の薬剤が薬事承認を得た
一般名:サクビトリルバルサルタンナトリウム水和物
製品名:エンレスト錠50㎎、エンレスト錠100㎎、エンレスト錠200㎎
適応症:慢性心不全
診療科・治験責任医師:循環器内科・加藤 雅彦医師
担当CRC:光明 真奈美

一般名:パビナフスプアルファ(遺伝子組換え)
製品名:イズカーゴ点滴静注用10㎎
適応症:ムコ多糖症II型(ハンター症候群)
診療科・治験責任医師:脳神経小児科・成田 綾医師
担当CRC:橋田 志幸

3. 臨床研究推進の実績

2018年4月に臨床研究法が施行され臨床研究の枠組みが大きく変化し、人を対象とする医学系研究に関する倫理指針に準拠した臨床研究も含め、より信頼性の高い臨床研究の実施が求められるようになった。そのような環境下、全国的に特定臨床研究の実施数が減少し、大きな問題となっているが、本部門では、それぞれの教職員が専門性を活かし、研究者の発案する臨床研究を形にするため、研究計画の立案、計画書作成、データマネジメント支援を積極的に行った。2020年度は、計画書作成9件、データマンネジメント9件、モニタリング6件、調整事務局7件の新規支援を行った。また、限られたリソースで臨床研究を行っている研究者を支援するため、CRCによるスケジュール管理、電子カルテテンプレート作成及び症例報告書作成を支援し、データの信頼性向上、品質管理を推進した(新規支援6件)。支援業務件数は2019年度の31件から2020年度の49件と増加した(図1)。

さらに、本学で実施されるすべての臨床研究の倫理審査委員会前のコンサルテーションを実施し、倫理的、科学的なリスクを事前に把握、解決し、効率的な倫理審査委員会運営を行った。その結果2020年度の承認件数は、観察研究211件・介入研究10件となり、2019年度と比較し、観察・介入研究の合計は30件増加した(図2)。

臨床研究法に準拠する特定臨床研究の研究者支援では研究の質向上の支援として、スタートアップ会議の調整、年間3回の点検結果の確認、臨床研究の必須文書管理用マスターファイルの提供を行った。また2021年2月には認定臨床研究審査委員会の新委員会への移行手続きを含む更新を行い、継続して特定臨床研究を審査できる体制を構築した。2020年度の特定臨床研究の承認件数は5件であった(図3)。

図1.支援業務件数
図2. 医学系指針の臨床研究承認件数(多施設共同研究含む)
図3.特定臨床研究 新規承認件数(累積)

4. 取り組み

教職員のキャリアアップ

2018年度に入職したCRCが3年目を迎え、日本臨床薬理学会の認定CRC試験を受験する予定であったが、コロナ禍の影響で来年度に受験が延期された。業務においては、チームサポート体制の構築、及びリスクの特定、分析/評価を行い、エラーが発生しにくい仕組みや体制を構築するRisk Based Approach(RBA)の一環として、逸脱記録の共有手順の見直し、プロセスシートの活用に着手した。また、CRCの教育については、引き続き継続教育プログラムの見直し評価を行っている。

業務効率化への取り組み

治験、臨床研究の最新の動向、院内手順の効率化のために、適宜関連する手順書の見直し及び改訂を行った。また、9月より製造販売後調査の出来高制を取り入れ、製造販売後調査審査委員会の効率化を図った。

Googleフォームを活用したスタッフの業務の見える化と超過勤務管理を行い、業務の平坦化、協力体制の強化、手順の標準化を推進し業務遂行を行っている。

コロナ禍に対応するモニタリング手法として、電子カルテの遠隔閲覧(R-SDV)システムを構築した。R-SDV用のノートパソコン4台を準備し、実施に関する覚書締結及び実施状況は以下の通りである。

締結済 締結作業中 問い合わせ 実施件数(累計)
7治験 4治験 2治験 3件
精神科ネットワークの運営

治験・臨床研究の活性化、被験者組入れ促進、病病連携促進のため、年に4回のレター配信及び2回のセミナーの実施を継続している。コロナ禍において、セミナーはWeb開催とし後日オンデマンド配信も行った。

治験・臨床研究支援に関わる研究者教育と情報提供

2020年度は、研究者教育としてGCPセミナー1回、臨床研究セミナー8回、ワークショップを5回(計画書作成)、特定臨床研究セミナーを2回開催した。医学科4、6年生、生命科学、看護学科、検査学科2年生、医学科博士課程、保健学科博士前期、後期課程の学生には、研究倫理、治験、臨床研究について講義を行い、卒前教育にも注力した。また、研究者の研究実施計画書・同意説明文書の効率的な作成支援を目的としたクラウドシステムの開発と運用を開始し、2020年度は24試験の文書作成支援を行った。

治験、臨床研究に関しては、ホームページ、調剤薬局、公民館への治験情報の提供を行った。

5. 学会発表・論文公表

2020年度は、原著論文(英文)(1件)、国内学会(5件)の学会発表、論文公表した。また、競争的資金(1件)の採択と共同研究(1件)を行った。

[原著(英文)]
  1. Taniguchi F, Tokita Y, Ota I, Yamane E, Komatsu H, Azuma Y, Sato E, Endo Y, Sunada H, Harada T. Efficacy of Tokishakuyakusan add-on therapy with low-dose oral contraceptive pills on endometriosis patients with dysmenorrhea. J Obstet Gynaecol Res. 2020 Nov;46(11):2280-2286.
[学会発表(講演)(国内学会)]
  1. 遠藤 佑輔:臨床研究によるがん予防へのアプローチ、一般社団法人 日本がん予防学会 第4回 認定制度セミナー、Web(米子)、2020
[学会発表(一般演題)(国内学会)]
  1. 陶山 久司、砂田 寛司、釆野 優、堀江 良樹、内藤 明美、小山田 隼佑、野里 洵子、小島 康幸、森 雅紀、中島 貴子、清水 千佳子、森田 達也、恒藤 暁、武藤 学:An exploratory study of challenges to delivering palliative care from the time of cancer diagnosis、第18回 日本臨床腫瘍学会学術集会、Web、2020
  2. 森 ひろみ、青山 隆子、山本 智香、遠藤 佑輔、今村 武史、武中 篤:CRC業務効率化のためのプロセスシート導入についての取り組み、第12回 日本臨床試験学会学術集会総会、Web、2020
  3. 柄川奈未子、青山 隆子、山本 智香、遠藤 佑輔、今村 武史、武中 篤:逸脱記録システムの変更に伴う有用性の比較検討、第12回 日本臨床試験学会学術集会総会、Web、2020
  4. 山本 智香、砂田 寛司、遠藤 佑輔、今村 武史、武中 篤:当院における治験事務局業務の効率化、第20回 CRCと臨床試験のあり方を考える会議2020 in 長崎、Web、2020
[競争的資金]
  1. 砂田 寛司:令和2年度 学長裁量経費(教育・研究推進経費)、「クラウド型文書作成システムを用いた臨床研究支援体制の構築と業務効率化に関する研究」
[共同研究実績]
  1. 継続中(2020.3-2023.9):植木 賢(代表)、上原 一剛、砂田 寛司、藤井 政至:人工知能による自然言語処理の医療・介護分野への展開可能性検討(株式会社AI Samurai)

(遠藤佑輔 記)