第三内科診療科群

第三内科診療科群は呼吸器内科・膠原病内科として、肺癌・COPD・気管支喘息・呼吸器感染症・びまん性肺疾患などの呼吸器疾患やSLE・関節リウマチ・全身性強皮症などの自己免疫疾患患者の診療を担っております。肺癌診療では呼吸器外科・放射線治療科と合同で週に一回のキャンサーボードを開催し、膠原病診療では小児科・整形外科や看護部・薬剤部・リハビリテーション部・MSWと合同カンファレンスを開催しており、常に適切な医療を病院全体で行えるよう他科と共同して日々の診療を行っています。近年、肺癌に対する免疫療法を軸とする新たな抗癌剤治療や、自己免疫疾患に対する免疫抑制剤や生物学的製剤の適応拡大、難治性気管支喘息に対する生物学的製剤や気管支熱形成術、や間質性肺疾患に対する抗線維化薬の開発など呼吸器・膠原病疾患に対する治療は日進月歩の進化を見せており、これらの新規医療を適切に患者さんに届けることが、呼吸器・膠原病診療を担う我々の使命と考えています。

当科の診療実績としましては、2020年度の新入院患者数は1026人(延べ患者数は16404人)、外来新患患者数は1245人(延べ患者数は22799人)でした。当科において新たに肺癌と診断され手術以外の治療を受けた患者は63人であり、1次治療として、放射線±化学療法や従来の殺細胞性抗癌剤以外にも近年では適応のある患者には分子標的治療薬や免疫チェックポイント阻害剤による治療、殺細胞性抗癌剤と免疫チェックポイント阻害薬の併用治療が導入されています (表1)。1次治療導入後も主に外来で治療継続しており、当科通院の患者さんのうち外来化学療法室で治療を受けた肺癌患者は1年間で延べ1124人でした。気管支喘息発作のために入院した患者は9人(延べ10人)、難治性喘息患者に対する生物学的製剤は37人の患者に使用しており、そのうち5人に対して新たに導入しています(表2)。当科で間質性肺疾患と診断された患者は148人、そのうち、最も頻度が高い特発性間質性肺炎の患者は58人でした (表3)。抗線維化薬を新規導入された患者は29人、そのうち、診断が2020年度以前の患者は15人、2020年度の患者は14人でした。膠原病診療に関しては、表4に示すように多彩な自己免疫疾患患者に対して外来・入院診療を行っております。

多種多様な疾患に対応して、ガイドラインに則った標準治療を適切な患者に対して確実に施行することに加え、教室全体として国内外で開発中の薬剤に関する治験などにも積極的に参加しています。2020年度は、企業治験12件、医師主導治験8件に参加しており、地域の人々が都市圏の病院に行かなくても、当院で最新の治療が受けられる体制を構築することにも努めています。日々新しくなる呼吸器・膠原病内科診療を迅速に取り入れるとともに、地域の中核病院として患者さんにとって何が最適であるかを常に考えながら、今後もより一層診療レベルの向上に努めていきたいと考えております。

文責)山口耕介

(表1) 手術不能新規診断肺癌患者一次治療方法

 新規肺癌患者(手術不能) 63人
治療方法 放射線単独 3人
放射線化学療法 6人
抗がん剤治療 45人
殺細胞性抗癌剤 11人
分子標的治療薬 13人
免疫チェックポイント阻害剤 6人
殺細胞性抗癌剤+免疫チェックポイント阻害薬(併用) 15人

(表2) 難治性喘息患者入院数と生物学的製剤導入数

新規入院患者数 16人 延べ入院患者数 10人
難治性喘息患者に対する
生物学的製剤
使用症例 37人
新規導入 5人

(表3)間質性肺疾患新規診断患者数

特発性間質性肺炎 58人
膠原病肺 31人
薬剤性間質性肺炎 25人
サルコイドーシス 10人
過敏性肺炎 6人
その他 18人
合計 148人

(表4) 各自己免疫疾患患者数

外来(人) 入院(人)
全身性エリテマトーデス 146 10
皮膚筋炎/多発性筋炎 71 17
全身性強皮症 110 13
混合性結合組織病 30 1
シェーグレン症候群 192 8
ベーチェット病 33 3
成人発症スティル病 24 2
関節リウマチ 169 12
高安動脈炎、巨細胞性動脈炎 28 5
結節性多発動脈炎 14 2
顕微鏡的多発血管炎 33 12
多発血管炎性肉芽腫症 13 2
好酸球性多発血管炎性肉芽腫症 12 3
リウマチ性多発筋痛症 53 3
その他 21 3
合計 949 86

(合併している自己免疫疾患もそれぞれの患者数として計上しており、重複があります。)