脳神経小児科

当教室は、国内有数の小児神経学の専門診療施設及び臨床研修、研究機関として本邦の小児神経学発展に重要な役割を果たしている。神経難病や希少疾患、難治性疾患などの紹介患者を全国から受け入れている。当教室の扱っている主な疾患は、てんかんや筋ジストロフィー・脊髄性筋委縮症などの神経筋疾患、末梢神経障害、先天代謝異常症、先天奇形・染色体異常症、周産期脳障害である。けいれん重積や急性脳症などの急性神経疾患、重症心身障害児・医療的ケア児の肺炎などによる呼吸不全の管理・治療などの急性期医療も行っている。近年ニーズの高い自閉スペクトラム症、注意欠陥・多動症、学習障害、精神遅滞、などの発達障害の診断・治療・支援も行っている。また、地域の小児保健事業にも積極的に関わり、発達障害の早期発見や指導に努めている。障害児の地域支援を学校・幼稚園・保育園や福祉施設、市町村・県と連携して取り組んでいる。同時に乳幼児健診などの母子保健事業の発展に貢献している。

外来・入院とも新規患者の約10~20%は、遠方からの紹介患者である。診療と同時に、小児神経疾患の病因・病態の解明や新しい治療法の開発の研究を行っている。

なお、新型コロナウイルス感染の影響で令和2年度は外来受診患者並びに入院患者が減少している。特に感染症と急性疾患および県外からの受診患者が減少している。

遺伝子診療科と連携し、厚生労働省の未診断疾患イニシアチブIRUD(日本医療研究開発機構 難治性疾患実用化研究事業)を受託して遺伝子解析による希少疾患の診断を行っている。

外来部門

外来患者の多くは鳥取・島根が中心であるが、中国地方からセカンドオピニオンを含めた紹介患者も多い。中国地方以外からも、関西や関東、九州など全国から患者が来院している。小児神経の一般外来(てんかん、知的障害、頭痛)のほか、患者家族への十分な指導が必要な発達障害や重症心身障害児/者などの診療も行っている。特殊検査として、神経生理学的検査や知能検査を含む神経心理検査、神経変性疾患の確定診断に必要なリソゾーム酵素活性測定やなどを行っている。また、遺伝子診断が可能となった先天異常や神経変性疾患、先天代謝異常症が増え、遺伝子診療科と協力しながら保険診療で遺伝子解析を提出している(遺伝子検査の実施施設の認定を受けている)。Pompe病、Hunter症候群などのリソゾーム病に対する酵素補充療法を行っている。

入院部門

入院は鳥取・島根からが主体であるが、山陰地方以外から診断や精密検査、難治性疾患の評価・治療のために紹介入院される患者も多い。けいれん性疾患の入院ではけいれん重積・群発といった救急対応の他、ビデオ脳波による発作の評価により発作型の診断を正確に行ない治療に役立てている。先端医療としてGaucher病のシャペロン療法を受けるために全国から患者が集まってきている。重症心身障害児・医療的ケア児や神経筋疾患児の呼吸管理・栄養管理や急性感染症による増悪時の治療を行っている。脳性麻痺などの神経疾患を原因とする重度痙縮に対するバクロフェン髄注療法などを脳外科医と共同で診療している。Post-NICU児の在宅移行の支援をNICUや地域と連携しながら行っている。その他、脳外科・整形外科・外科・小児科・泌尿器科・内科など他科入院の神経疾患児のケアも共同診療でサポートしている。

R2年度外来新患 疾患統計(328人)

発達障害・発達遅滞 104 筋疾患 4
痙攣性疾患 33 脳炎・脳症 2
先天奇形・染色体異常 21 末梢神経疾患 2
心身症・児童精神科疾患 15 脊髄疾患 2
頭痛 11 睡眠障害 1
眼症状 10 運動麻痺(脳性麻痺) 1
大頭、小頭・頭蓋変形 9 その他 108
代謝・変性疾患 5

R2年度 入院患者 疾患統計 (208名)

R2年度 入院患者 疾患統計 (208名)
けいれん性疾患 52 末梢神経障害 8
急性疾患・感染症 50 運動麻痺 6
代謝・変性疾患 26 脳炎・脳症 3
筋疾患 16 水頭症 2
先天奇形・染色体異常 9 その他 28
発達障害・心身症・ヒステリー 8