薬剤部

令和元年度の薬剤部の人員体制は、教員2名、薬剤師GRM1名を含む薬剤師定員は55名であり、前年度からの増員はなかった。4月時点の薬剤師数は53名(欠員2名)であり、非薬剤師として事務補佐員1名、技能補佐員(調剤助手)7名であり、薬剤部全体としては計61名の体制であった。令和元年度は例年以上に業務効率化を目指して調剤部門と病棟部門、臨床支援部門の横断的な業務体制を強化した。本体制強化により、職員の休暇取得の効率化とともに各薬剤師の基本業務(調剤、混注、服薬指導、病棟医薬品管理業務等)のスキル維持にも繋がっている。また令和元年度の新採用薬剤師は2名であり、例年通り新人研修を計画的に遂行した。

1.医薬品管理業務、医薬品情報管理業務

本院採用医薬品については、令和元年度は新規採用13品目(代替削除11品目)、院外処方限定採用1品目であった。また、委員会として薬事委員会申し合わせの変更を行い、新規薬剤は1年間の仮採用としたため、新規採用薬および削除薬の品目数は平成30年度(43品目および48品目)より減少した。ジェネリック医薬品については、合計52品目(内服薬38品目,外用薬1品目,注射薬13品目)の切り替えを実施した。その結果、平成25年3月以降の後発医薬品切替による、令和元年度単年の増収効果(購入額差益-外来薬価減収)は約2億7,055万円となり、昨年度同種増収額(2億4,400万円)を大きく上回った。後発医薬品使⽤体制加算については、前年度に引き続き、加算1(使用割合85%以上)を申請することができている。その結果、約653万円(前年度約640万円)の収入を得ることができた。ジェネリック医薬品への切り替えの際には、患者や医師・看護師などの混乱が最小限となるよう、システム上の設定、ならびに各種媒体を用い情報提供を行った。また、薬事委員会では新たな取り組みとして、有効性・安全性と経済性を総合的に評価して作成された医薬品の使用指針(フォーミュラリー)の作成を開始した。令和元年度はG-CSF、プロトンポンプインヒビター注射、プロトンポンプインヒビター内服について作成した。フォーミュラリー作成による増収効果は、約259万円と試算された。医薬品情報等の周知を目的とし、月1回配布する「薬剤部のお知らせ」に加え、医薬品適正使用の観点から製薬会社や公的機関(PMDA等)等から得た情報提供は43件と昨年度(46件)と同程度であった。また、主に医師を対象とした医薬品安全管理に関する研修を延べ6回、看護師を対象とした研修を延べ3回、計9回各種カンファレンスに出向き実施した。安心・安全な医薬品の適正使用には適正な情報が必要不可欠であり、今後も質の高い情報提供を推進する必要がある。

2.病棟業務(病棟薬剤業務および薬剤管理指導業務)

当院では、平成27年度より重症系を含む全病棟(22病棟)に薬剤師を配置し、病棟薬剤業務実施加算の算定を行っている。病棟薬剤業務により、投薬前における患者への説明、用法用量等の確認業務、医療安全を伴う医薬品の情報共有及び管理の質が向上している。さらに病棟への薬剤師常駐により、病棟スタッフとの情報共有の充実にも繋がっている。入院時の持参薬鑑別について、令和元年度の鑑別件数は合計10,630件(前年度:11,003件)であった。薬剤管理指導業務については、15,792件と前年度の7,774件を大きく上回った。この理由として、初回面談方法の見直し、カルテ記載に関するテンプレートの導入とその徹底を図ったことが挙げられる。さらには平成30年度に採用した9名の薬剤師の成長と、病棟部門にフロアリーダーを配置し、フロア単位でのマネジメント力が向上したため、全体的な業務効率化に繋がったと考える。

また、薬剤部では医療安全の向上、医師の負担軽減を目的とし、病棟における処方仮登録業務へ積極的に介入している。入院処方に関しては、定期処方仮登録業務および与薬カートの導入を1B 病棟にて開始後、7A、7B、6A、8B病棟に対象を拡大してきた。令和2年2月には8A病棟で与薬カートの導入に先行した定期処方仮登録業務を拡大した。また、持参薬仮登録業務に関しても次年度の対象病棟拡大に向け、システム上のトラブル解消や業務手順の検討を行っている。今後、病棟業務においてもさらなる医療安全の推進、医師の業務負担軽減に伴うタスクシフティングを進めていきたいと考えている。

医薬品安全性情報報告(医薬品の使用によって発生した健康被害について、薬事法に基づき厚生労働大臣に報告する制度)は、令和元年度は4件(前年度5件)であった。また、プレアボイド報告(薬剤師が薬物療法に直接関与し、薬学的患者ケアを実践して副作用、相互作用、治療効果不十分などの患者の不利益を回避あるいは軽減した事例)については、令和元年度は264件(前年度270件)であった。今後も医薬品の適正使用を図るために、報告を推進していきたいと考えている。

3.注射薬調製業務

平成26年から薬剤師が抗がん薬の全日調製を行っている。令和元年度の調製件数は19,213件(外来10,680件、入院8,533件)と前年度17,631件(外来9,974件、入院7,657件)を上回り、年々増加傾向にある。その中で休日の調製件数は666件であった。本業務により、抗がん薬の安全な調製が行えるだけでなく、医師・看護師の負担軽減、曝露防止にも貢献していると考える。抗がん薬の調製に関して、当院では調製者の曝露防止を目的とした閉鎖式接続器具を利用しており、令和元年度の使用実績は4,300件であった。

薬剤部では抗がん薬の調製だけではなく、レジメンの登録・審査にも関わっており、調製前のレジメンチェックや薬歴管理、投与前後の服薬指導(外来化学療法室でも実施)も含め、抗がん剤治療の一連の流れに常に薬剤師が係り、医療安全や薬物治療の適正化に貢献している。

また、高カロリー輸液(TPN)調製業務も薬剤師が関与しており、重症病棟ではサテライトで調製し、一般病棟では全病棟の予定オーダー分を製剤室にて調製している。調製件数は令和元年度2,055件と昨年度(1,764件)より増加した。

4.薬物治療モニタリング

令和元年度はこれまで薬物血中濃度測定を実施していた抗真菌薬のボリコナゾールに加え、外注検査で行っていた免疫抑制薬のミコフェノール酸の測定を薬剤部で開始した。そのため、測定件数は103件と前年度(87件)に比べ増加した。移植医療に使用されるミコフェノール酸の測定結果を迅速に医師へ報告できることで、移植医療を含めより安全で効果的な薬物療法の提供が可能となった。

また、一般社団法人TDM品質管理機構が実施しているTDMコントロールサーベイ(外部精度管理)への参加を開始し、薬物血中濃度測定の品質保証体制を強化した。

解析ならびに処方設計件数は、令和元年度は抗MRSA用薬を中心に644件(前年度703件)であった。

5.調剤業務

令和元年度の調剤業務実績として、入院処方せん枚数128,980枚(前年度138,064枚)、予定注射薬セット件数296,889件(前年度311,833件)であった。入院注射業務は、全て一施用毎の払い出しとし、これまで予定注射薬のみを対象としてきたが、令和元年5月より試行的に病棟限定で臨時注射薬にも拡大した。その後、8月には全病棟に拡大している。令和元年度の臨時注射薬セット件数は17,581件であった。また、予定手術時に使用する薬剤のセット件数は13,080件(前年度13,256件)と前年度と同程度であった。

医薬分業、地域連携のさらなる強化を目的とし、前年度に引き続き積極的に外来患者に対する院外処方せん発行を推進した。その結果、月当たりの院外発行率は平均95.9%(前年度95.6%)と発行率を維持することができた。また、外来院内処方せん枚数は6,020枚(前年度6,662枚)と減少した。

薬剤部では自動車運転等が禁止されている薬についても処方せんに表記することで医師に注意喚起する運用を平成29年度から開始している。これに伴い、外来処方を調剤する際、当該薬については患者指導を行うことを開始し、患者の安全確保に努めている。

また、医師に対する外来処方の疑義照会について、平成29年度より特定の項目においてプロトコルに基づく疑義照会の簡略化と、処方変更における薬剤師による仮オーダーを開始し、本年度も継続している。本業務は医師の外来業務の負担軽減に大きく寄与している。

6.診療支援外来

平成27年6月より、医師の業務負担軽減や患者のQOL向上を目的とした、薬剤師による「診療支援外来」を開始した。術後補助化学療法の患者を対象に、医師の診察前に薬剤師が面談し、「副作用モニタリング」や「プロトコルに基づいた仮処方入力」等を行っている。当初は乳腺内分泌外科のみであったが、平成28年度に泌尿器科、平成30年度には消化器内科の分子標的薬服用患者に対象を拡大している。入院在院日数の短縮に伴う外来治療への移行が進み、患者指導件数も625件と昨年度518件から増加している。

また、平成30年度より算定開始となったサレド、レブラミド、ポマリストが処方された患者に対する特定薬剤治療管理料2の取得実績は381件であった。さらに平成31年1月より、外来患者の待ち時間短縮と医師の負担軽減を目的として、造影CT、造影MRI、上部内視鏡検査の検査日中止薬説明を薬剤師がオンコールで対応することを開始しており、令和元年度説明件数は17件であった。

7.医薬分業推進(地域薬剤師会との連携)

鳥取県西部地域の病院薬剤師と保険薬局薬剤師の会合を当院薬剤部にて毎月開催し、院外処方に関する様々な問題点について議論を交わし、相互連携に努めている。令和元年度は製薬会社からの出荷調整や自主回収依頼に伴う病院、薬局間の処方・在庫調整や居宅療養管理指導/在宅患者訪問薬剤管理指導等の加算取得における連携調整について適宜情報共有を行った。また、入院から外来診療において、シームレスかつ安全で有効的な薬物療法を提供する目的で、平成28年9月より院外処方せんへの医師と保険薬局薬剤師の連絡欄の掲載を開始した。薬局薬剤師の勉強会や役員会等で当院薬剤師が説明を行い、積極的な活用を依頼した。令和元年度は70件の活用実績(前年度97件)であった。次年度以降も薬局薬剤師と連携していきたいと考える。

8.教育及び研究

令和元年度に受け入れた薬学部実務実習生は8名と、例年同様多くの学生実習生を受け入れた。さらに西部地域の協力病院とのグループ実習として米子医療センターより年間4名を受け入れ、短期間ではあるが他院では実習困難な領域である、急性期医療、新生児医療等の実習を実施した。

学術関連では学会発表が25演題を発表し、原著論文2編を報告した。

令和元年度末時点で、当院薬剤部には日本医療薬学会認定がん専門薬剤師2名、日本病院薬剤師会認定感染制御専門薬剤師2名、日本静脈経腸栄養学会栄養サポートチーム専門療法士2名、日本糖尿病療養指導士認定機構糖尿病療養指導士4名、日本医療薬学会指導薬剤師2名を始めとして、多数の有資格者が在籍している。

また、薬剤師職員の内訳は令和元年度末時点で、20代の比率が42%、30代の比率が35%と約8割を占めており、指導者不足が懸念されるが、様々な専門資格について組織的かつ計画的に取得することを進めている。

9.地域薬剤師不足に対する人的支援

鳥取県西部地域および島根県東部地域の薬剤師不足は深刻であり、現在までに、日野病院、山陰労災病院、安来市立病院、安来第一病院、済生会境港総合病院より薬剤師不足解消のための派遣要望が当院に来ている。このことから、平成30年度から令和元年度までの2年間安来市立病院に週1回の兼業として1名の薬剤師派遣を開始した。今後も地域薬剤師不足に対し、可能な限り人的支援を継続していく予定である。

(涌嶋 伴之助)