医療スタッフ研修センター

医療スタッフ研修センターは平成24年4月に設置された看護師キャリアアップセンターを前身とし、平成27年11月に設置されました。当センターは医療スタッフの技能向上をサポートすることを目的としており、現在、在宅医療推進支援室、看護師特定行為研修支援室、認定看護師育成支援室より構成されています。

1、在宅医療推進支援室

これからの日本の医療では、住み慣れた自宅で安心して暮らすことができる地域包括ケアシステムやコミュニティー文化の再構築が必須のものとなりました。これらの変化に対応するため、本院は、鳥取県の支援により、平成26年度より『在宅医療推進のための看護師育成支援事業』を実施しており、在宅医療推進支援室が担当しております。

【在宅医療推進のための看護師育成プログラム】

平成27年度より3つのコースからなる｢在宅医療推進のための看護師育成プログラム｣を開設し、平成30年度は開講4年目となりました。

1) 教育目標

患者の退院後の生活をイメージしながら入院中からセルフケア支援が出来る病院看護師、在宅医療者の医療処置管理や薬剤管理などの高度な知識や技術を備えた訪問看護師を育成することを目的します。

2) 各コースの概要

(1)在宅生活志向をもつ看護師育成コース
鳥取県内の病院に入職後1～2年の看護師を対象に在宅志向を持ち続けるための研修(2年間)を行う基礎コースと、基礎コース終了後の3年目看護師を対象として実践を強化する実践コースが平成29年度から開講し、平成30年度には訪問看護ステーションへの出向が始まりました。
(2)在宅医療・看護体験コース
鳥取県内で病院に勤務している3年目以上の看護師を対象に、体験実習を行うコース
(3)訪問看護能力強化コース
訪問看護経験者や潜在看護師、上記コース修了者を対象に、訪問看護能力やスキルを強化するコース

3) 教育期間と講義・実習時間数

5月～翌年3月
Ⅰコース(1年目)集合研修、HOCノートによる個人課題
Ⅰコース(2年目)集合研修、HOCノートによる個人課題
Ⅰコース(実践) 集合研修、HOCノートによる個人課題+訪問看護ステーション実習5日間、訪問診療同行実習、地域包括支援センター実習、退院支援実習
Ⅱコース( 半年間)集合研修+訪問看護ステーション実習3～5日間、退院後家庭訪問実習
Ⅲコース (1年間)60時間以上の講義アラカルト式+訪問看護ステーション実習2～3日間、地域包括支援センター実習
遠隔講義システム(UCS)による講義

4) 講師

附属病院看護師、医学部保健学科・医学科教員、学外非常勤講師の訪問看護師、他大学教員、医師、薬剤師、訪問看護事業者、ケアマネージャー、行政職など

5) 受講者・修了者

受講者数

平成30年度
Ⅰ 在宅生活志向をもつ看護師育成コース(1年目):28名 (2年目):27名
実践コース:7名
Ⅱ 在宅医療・看護体験コース:24名
Ⅲ 訪問看護能力強化コース:10名

修了者数

平成30年度
Ⅰ 在宅生活志向をもつ看護師育成コース:25名
実践コース:7名
Ⅱ 在宅医療・看護体験コース:24名
Ⅲ 訪問看護能力強化コース:9名

【T-HOC訪問看護師出向システム】

平成30年度より、附属病院看護部の協力を得て、病院看護師が地域の訪問看護ステーションへ出向し、在宅医療推進支援室が出向をサポートするシステムを構築した。
病院に在籍しながら一定期間、訪問看護ステーションに出向し訪問看護業務を実践することにより病院にとっては看護ケアや在宅看護の視点の獲得、訪問看護ステーションにとっては多様な看護人材の育成・活用力の向上がはかれる両方にとってメリットの大きいシステムである。

1)目的

病院看護師が在宅生活志向を高め退院支援能力の向上を目指す
施設間の連携を強化する
訪問看護師の人員確保

2)出向対象者

原則 T-HOC Ⅰコース(基礎・実践コース)を修了した者
1.の希望者がない場合は、T-HOC Ⅱコース・Ⅲコースを修了した者
1.2.の希望者がない場合は、T-HOCを受講している施設の出向を希望する看護師

3)期間

原則1年間最長2年間 (派遣先施設との協定により個別に対応)

4)出向の実際

平成30年度の出向者:大学病院看護師3名(25歳女性・27歳男性・50歳女性)
出向先:鳥取県西部2か所、鳥取県中部1か所の病院付設の訪問看護ステーション
T-HOC出向システムでは出向者のフォローアップ体制として1ヶ月に1回の学習サポートカンファレンスの定期開催や出向元看護管理者との面談を実施した。

5)出向事業の成果

出向看護師の成果

単独訪問の実施、担当利用者の看護展開などによる在宅可能な患者像の広がりや看護観の発展がみられる。
介護・福祉に関する知識の習得、多職種連携の方法などの習得による個別性のある退院支援の実践や提案ができる

出向元である病院の成果

医療施設・訪問看護ステーションの両者の相互研修の活性化。
退院前・退院後訪問件数の増加により退院調整がスムーズとなってきた。
訪問看護ステーションへの出向をキャリプランのひとつの選択肢として位置づけることにより、多様な人材育成プランが展開できる

訪問看護ステーションの成果(出向先の訪問看護ステーション管理者の聞き取り調査より)
｢出向看護師の前向きな姿勢により職場が活性化した｣｢専門性の高い看護師を受け入れ訪問看護スタッフの知識、技術が向上した｣｢出向元の病院、事業所、行政との連携が強化した｣｢研修会に参加しやすくなった｣｢訪問看護への理解者が増えた｣｢今後も継続的に出向を受け入れたい｣｢出向元とより連携を強化したい｣

【公開セミナー・事業報告会等の開催】

1) 事業報告会開催

第6回事業報告会平成31年3月22日出席者 133名

2) T-HOCひのセミナー開催

第4回 T-HOCひのセミナー平成30年9月7日～9日出席者 102名

3) T-HOC特別セミナー開催

第7回 T-HOC特別セミナー平成30年10月27日 80名
第8回 T-HOC特別セミナー平成31年3月22日 133名

【広報・研究活動】

1) 日本看護学会-神戸研修センター-平成30年度教育計画研修プログラムにて発表
｢看護職による政策提言に向けたプロセスの理解と行動‐在宅医療推進のための看護師育成支援事業の活動の実際｣
平成30年7月5日

2) 第49回日本看護学会-在宅看護-学術集会にて発表
｢病棟看護師の退院前後自宅訪問経験と在宅視点のある看護実践の関連｣
平成30年7月27日～28日

3) 第49回日本看護学会-在宅看護-学術集会にて発表
｢心臓手術後患者の退院後自己管理行動の現状｣
平成30年7月27日～28日

4)第29回日本医学看護学教育学会学術学会にて発表
｢患者の行動制限についての病院看護師の認識:ビネット調査による評価｣｣
平成31年3月16日

5)学術雑誌への掲載
｢訪問看護ステーションへの出向で在宅医療を推進できる看護師を育成｣

｢キャリア支援を行った側｣大草智子
｢キャリア支援を受けた側｣山城由佳
Nursing Business 2019 キャリア支援事例掲載
vol. 13, No. 13, 499-502, 2019

2、看護師特定行為研修支援室

医師又は歯科医師の判断を待たずに、手順書により一定の診療の補助を行う看護師を養成し、確保していくために、｢特定行為に係る看護師の研修制度｣が国により設けられました。本支援室は、診療の補助として特定行為のみを行うのではなく、看護実践として特定行為も含めた医療を提供できる高い専門性を有する看護師の育成を目的として平成29年7月に設置され,山陰両県で初めて厚生労働省から研修機関の指定を受けて,平成30年6月に看護師特定行為研修を開始しました。以下の5区分においてプログラムを開講し、初年度となる平成30年度は研修生3名が研修を修了しました。

1)呼吸器(気道確保に係るもの)関連

経口用気管チューブ又は経鼻用気管チューブの位置の調整

2)呼吸器(人工呼吸療法に係るもの)関連

侵襲的陽圧換気の設定の変更
非侵襲的陽圧換気の設定の変更
人工呼吸管理がなされている者に対する鎮静薬の投与量の調整
人工呼吸器からの離脱

3)血糖コントロールに係る薬剤投与関連

インスリンの投与量の調整

4)術後疼痛管理関連

硬膜外カテーテルによる鎮痛剤の投与及び投与量の調整

5)循環動態に係る薬剤投与関連

持続点滴中のカテコラミンの投与量の調整
持続点滴中のナトリウム、カリウム又はクロールの投与量の調整
持続点滴中の降圧剤の投与量の調整
持続点滴中の糖質輸液又は電解質輸液の投与量の調整
持続点滴中の利尿剤の投与量の調整

3、認定看護師育成支援室

現在は、｢がん化学療法看護認定看護師養成コース(がん化学療法看護)｣、｢乳がん看護認定看護師｣教育課程は休講しております。