脳とこころの医療センター

平成30年度の脳とこころの医療センターの活動状況の概略をご報告致します。

1.脳とこころの医療センターに属する4診療科間の連携

平成30年度も、脳とこころの医療センターを構成する4つの診療科、すなわち、脳神経内科、脳神経小児科、脳神経外科、精神科は、脳血管障害、てんかん、頭痛、発達障害、認知症、高次脳機能障害など、複数科での診療やリハビリテーションを必要とする可能性がある疾患・障害に対して、診療科間のスムーズな連携体制の下、患者さんにとって最適の治療・リハビリテーションを実施しています。

脳・神経疾患や精神障害は、運動面、感覚面、認知面、感情面など多様な側面での困難を招くことが多く、しばしば複数の診療科による連携および協働が必要になります。その点で、当センターでは、各診療科がそれぞれの専門領域について関与するだけでなく、他科と緊密な連携を取ることができています。そのためには、日頃から、診療科の枠を超えたスタッフ間のコミュニケーションが求められます。その意味で、4診療科が近接した場所に位置する当センターは、こうした要求を満たすものと考えます。

複数の診療科に関連するような主訴の新患患者さんについて、平成28年度からは、当センターの総合診療の体制は廃止し、外来看護師が適当と判断した診療科がまず診療に当たることにしております。その上で、必要な場合には、病態との関連が最も深いと判断される別の診療科に紹介することにしています。認知症を例にあげると、記憶などの認知機能が主な問題であれば脳神経内科、行動・心理症状への対応が必要であれば精神科がそれぞれ担当します。このようにして、複数の診療科での診療、あるいは、成長に伴う脳神経小児科から他診療科へのキャリーオーバーなどの連携がスムーズに行われています。

また、脳とこころの医療センターでは、当センターに属する2名の臨床心理士が多様な心理検査や神経心理検査を行うことができ、センター内の教室間での情報共有が迅速に行われることも診療の効率化につながっています。病院長のご配慮で、2019年度から、常勤の臨床心理士が3名に増員されることになり、心理検査・カウンセリングなどの更なる質の向上を図って参りたいと思います。

2.脳とこころの医療センターのカンファランス

前述のごとく、神経・精神疾患はしばしば診断・検査・治療など、診療上の困難を伴うことが多く、専門的知識と広い視野が求められます。隔月に4診療科で実施している当センターの症例検討会は、平成30年度も6回開催され、各診療科の知識・経験に基づく多様な意見を交わすことができる貴重な場となっています。診療科の枠を超えた議論によって、異なる視点で診断が確定し、適切な治療を行うことで患者様が寛解に至る症例を経験することができました。2019年度には、外部講師を招いた勉強会も企画しており、診療科の枠を超えた、最新の脳神経科学の医学への応用に関する知見を得る努力も続けて参る所存です。

文責 兼子 幸一