検査部

検査部では、臨床検査の高い品質をもち精確かつ迅速な検査報告を基本方針としています。質の高い臨床検査結果を報告するために、多項目検査測定装置による血液検査を中心とする検体検査と、心電図や各種超音波検査を中心とする生理機能検査を実施しています。院内感染制御ICT、NST、糖尿病支援チームなどのチーム医療にも参画しています。あわせて日常診療の支援の基盤となる臨床検査技師の人材育成に努めています。

臨床検査に関するISO15189国際認定施設

検査部は臨床検査室の国際認定資格となるISO15189認定を国内121番目の施設として平成29年2月取得しました。認定範囲は検体検査、生理検査、病理検査の認定範囲の指定全領域の範囲です。ISO15189の認定取得は検査室の品質が国際標準を満たす検査室であることが認められたものです。ISO15189認定取得は、診療科の治験や臨床研究の充実により一層支援できるものであり、今後も認定を維持し高品質の検査結果を報告する組織を継続しなければならないと考えています。

Ⅰ.質の高い臨床検査の保証

平成31年1月に迅速臨床検査システムの大型機器更新を行いました。迅速臨床検査システム機器構成は生化学自動分析装置、免疫測定分析装置3機種ならびに検体自動分注装置を含む搬送ラインシステムの構成です。機器の更新を契機に迅速、正確な検査報告と共に、院内検査項目を充実し診療支援を行いました。

また平成30年12月に医療法の一部改正があり臨床検査の精度管理にこれまで以上の厳密な管理が求められるようになりました。検査部では認定臨床化学・免疫化学精度保証管理臨床検査技師の資格者を有し、検査精度の管理体制の強化に取組んでいます。

微生物検査部門では、感染症微生物検査の実施と共に、感染制御対策チーム(ICT)に1名の技師が参画しています。毎週、毎月の検出菌集計をはじめ、感染制御部(ICT)カンファレンス、感染症内科カンファレンス、抗菌薬カンファレンス、ICT病棟ラウンドに参画しています。感染制御部担当の臨床検査技師の質的な要求度、業務量は年々増加しています。質量分析装置を運用して検出菌同定結果報告、抗菌薬感受性検査の所要日数短縮化による抗菌薬適正使用を支援しています。現在、認定臨床微生物検査技師4名、ICMT3名が所属しています。

生化学・免疫検査部門は、外来検体検査の迅速報告を行うとともに、外来迅速検査加算対象項目について、検査所要時間調査を定期的に行い迅速報告の検証を行っています。

治験検査、臨床研究の関連検査、特殊検査の受付、検体管理業務も行っています。治験、臨床研究の検査手順が複雑化し依頼数が増加する中で、迅速かつ正確な検体管理を行っています。

血液検査部門は、認定血液検査技師5名が所属し、知識の習得と技術向上をはかり骨髄検査の質向上を継続しています。骨髄検査は、骨髄画像報告も他の造血器検査と合わせて電子カルテに報告を行い、診療支援を行っています。フローサイトメトリー検査では、病理学的検査と連携した検査結果の解析件数が増加し、解析能力の精度向上と迅速化を進めています。また県内の認定資格取得を目指す技師の教育に必要な技術指導に協力しています。

一般検査部門は、検尿一般検査、尿沈渣検査の人材育成に努めています。髄液一般検査では一部を血球計数装置による機械測定を導入し時間外の緊急髄液細胞検査の検査所要時間の短縮化をはかっています。

輸血検査部門では、安全な輸血が行える輸血検査、輸血業務体制を継続しています。血液型検査、交差適合試験は24時間検査体制で取り組んでいます。コンピュータークロスマッチに導入により、出庫所要時間短縮がはかれています。29年度からアルブミン製剤を輸血部門で一元管理を開始し30年度にシステム化を進めました。現在、認定輸血検査技師4名が所属し、県内の認定資格取得を目指す技師の育成にも協力しています。

中央採血室の採血患者数は、30年度86,121名でした。外来採血者が集中する時間帯は、採血待ち時間が延長する日が発生する状況にあり、検査技師が検査業務と兼任しながら採血待ち時間短縮に取組んでいます。

生理検査部門は、循環器検査の検査件数は増加が続いています。超音波検査のうち技師によるエコー検査は、27年度より開始したTAVI手術中の経食道エコー検査介助の件数も増加しました。腹部エコーは木曜日を技師2名体制としたことで技師検査実施件数が増加しました。検査に関連する診療科カンファレンスに担当する技師が参加し業務の精度向上に努めています。

超音波検査は年々増加が続いています。技師による検査実績は、心臓エコーは27年2524件が30年2703件に増加しました。技師の心臓エコー実施率(%)は26年度以降65%に達しました。腹部エコーは29年1278件、30年1,092件となり26年以降1,000件以上の検査件数を継続しています。頸動脈エコーは30年834件でした。下肢静脈エコーは30年1,204件でした。甲状腺エコー(内分泌、耳鼻科)は30年325件でした。25年度より開始した血管動脈エコーは(下肢動脈・腎動脈)は30年145件でした。30年度に技師1名の増員が認められて新たに乳腺エコーを開始し、193件の実績でした。心臓エコーを含む超音波検査の出張検査の件数は、28年611件、29年588件、30年347件でした。

呼吸機能・神経機能検査は、30年13,067件でした。新生児聴力検査(AABR)は病棟への出張検査により28年462件、29年502件、30年424件を実施しました。

Ⅱ.未来の技師力を育てる

検査部教育プログラムにそって部員の卒後教育を行い人材育成に取り組んでいます。その中で計画的に専門分野の認定資格取得を推奨し、部員の資質向上に努めています。

30年度は認定輸血検査技師1名、感染制御認定臨床微生物検査技師1名が資格を取得しました。また全国学会、地方会の学会ならびに研修会の講演、発表を行いました。検査部勉強会は毎月1回定期開催し、研究発表、業務、採血関連の研修を行っています。

Ⅲ.チーム医療参画

チーム医療への参加では、糖尿病支援チームに3名が参加しています。検査部では、糖尿病教室で月2回糖尿病の血液検査と動脈硬化の超音波検査の講義を担当しています。また定期カンファレンスに参加しています。

栄養サポートチーム(NST)は2名が参加しています。検査部では、29年度からCONUT法により血液検査の結果を用いた栄養状態のスクリーニングによる分析を週2回実施し解析結果報告を開始しました。30年度もNST専門療法士研修講師、院内NST研修会講義を行いました。

ICT活動は微生物検査部門の技師1名が専任で感染制御部の業務を担当しています。ICT活動では抗菌薬適正使用チーム(AST)にも参画しています。現在、血液培養カンファレンス、抗菌薬カンファレンスに2名の技師が参加しています。ICTの業務は微生物検査部門と連携して検出菌情報、院内感染制御に関する検査結果の解析を行い、感染制御部へ報告を行っています。

Ⅳ.臨床検査情報発信

検査部情報発信「検査部だより」は毎月1回定期発行を継続しています。臨床検査について院内職員、患者様に理解してもらいやすい紙面づくりに工夫しています。中央採血室前に患者用配布を行い、毎月20~30名の利用があり、ご意見、ご感想をいただいています。「検査部だより」は検査部ホームページに掲載中です。

新規の取り組みでは患者様への検査情報案内として30年10月に血液検査解説パンフレット「教えて!検査用語」を作成しました。

Ⅴ.地域貢献

地域の医療職種研修とし超音波検査(検査技師)の研修受入を継続しています。いずれも超音波検査士の認定資格受験に必要な症例研修であり地域の検査技師教育に協力できました。これからも鳥取県内の検査技師を対象とした教育セミナー企画し検査技師の人材育成に貢献したいと考えています。

Ⅵ.資格認定・業績

  • 平成30年度資格認定
    認定輸血検査技師1名、感染制御認定臨床微生物検査技師1名
  • 平成30年度学術業績
    論文発表 8題(全国3題、地方5題)
    学会発表 15題 (全国6題、地方9題)

Ⅶ.検査実績

平成30年度 検査部検査件数
検査部門 平成29年度 平成30年度 前年度比 (%)
(30年度/29年度)
一般検査 93,232 95,614 102.6
血液検査 266,641 270,406 101.4
生化学検査 1,640,141 1,678,306 102.3
免疫血清検査 282,073 289,928 102.8
微生物検査 57,354 62,088 108.3
薬物血中濃度 4,564 4,362 95.6
緊急検査 血液ガス分析 1,672 1,663 99.5
緊急生化学 749,165 788,461 105.2
緊急血液 92,716 95,405 102.9
緊急髄液一般等 5,533 5,522 99.8
緊急輸血 2,484 2,820 113.5
生理機能検査 循環機能検査 19,498 19,819 101.6
脳・神経機能検査 2,823 3,800 134.6
呼吸機能検査 12,940 13,067 101
感覚機能検査 2,118 1,974 93.2
超音波検査 14,604 14,238 97.5
採血 83,443 86,121 103.2
合計 3,331,001 3,433,594 103.1

検査部 臨床検査技師長 野上 智