第一外科診療科群

1.診療科の概要

第一外科診療科群は、消化器外科と小児外科の2つの診療科にて構成されています。
消化器外科は、主に消化器がんの外科治療を行っておりますが、良性疾患、腹部救急など多種多様な疾患の外科治療を担当しております。消化器外科は①上部消化管(食道、胃)、下部消化管(小腸、大腸)、肝胆膵グループの3つに分かれ、高度で専門的な診療を行っております。
小児外科は、新生児から小児までの消化器、呼吸器、泌尿器疾患の外科治療を行っております。鳥取県では唯一の単独診療科であり最後の砦として、小児科、産科と協力して診療を行っております。

2.診療科の理念

我々のモットーは「すべては患者さんのために」であり、この目標のために、①安全で最新の治療を提供する。②優れた診療能力と高度な倫理観を持った若手医師を育て山陰の外科治療を支える。③将来の医学の進歩のための基礎的、臨床的研究を推進し世界に発信していく。この3つのことを行っていきます。

3.診療の特徴

消化器外科、小児外科とも腹腔鏡、胸腔鏡手術を積極的に導入し、良好な視野でより精度の高い手術を小さな傷で行っています。患者さんに対する優しい手術、特に高齢者が多い山陰地方では積極的に行っていきます。一方、手術だけでは、直すことが難しい高度進行がんに対しては、化学療法(抗がん剤、分子標的薬)、放射線治療を行い手術する集学的治療を行っています。

4.診療内容

消化器外科

消化器外科では、消化器癌(食道癌、胃癌、大腸癌、肝臓癌、胆管癌、膵癌など)の治療を主に行っておりますが、良性疾患(胆のう炎、ヘルニア、虫垂炎など)にも対応しています。消化器外科は、上部消化管(食道、胃)、下部消化管(小腸、大腸)、肝胆膵の3グループに分かれ高度な専門的治療を行っております。癌治療に関しては近年、体にやさしい手術(低侵襲手術)が、術後の早期回復、早期社会復帰に貢献するのみならず、術後の体力の低下を抑えることで癌の治療成績も改善することが言われており、我々は積極的に取り組んでおります。内視鏡外科学会の厳しい審査に合格した技術認定医は、胃領域3名、大腸領域1名、膵臓領域1名の計5名おり種々の疾患に対しロボット支援下手術も含めた低侵襲手術を安全に提供しております。進行癌に対しては手術だけでは治療成績は不良であり、化学療法、放射線療法、手術を組み合わせた集学的治療を積極的に行い治療成績の向上を目指しています。また、我々独自の診断治療法の開発にも積極的に取り組んでおります。

小児外科

主に、小児における消化器、呼吸器、泌尿器系の疾患の外科的治療を行っています。0歳(出生当日)から15歳(中学生)までが対象となりますが、疾患によっては出生前や成人後にも診断・治療に関わります。とくに生後まもないお子さんでは、新生児科や新生児室(NICU、GCU)のスタッフが主体となって当科が協力する形で診療に当たっています。一旦退院された後や、生後数ヵ月経ってから小児外科を受診されたお子さんについては当科が主体となって外来や小児総合病棟で診療を行っています。年長のお子さんであっても、個々の合併疾患や経過に合わせて、小児科、脳神経小児科を始めとする各診療科と協力しながら診療に当たるようにしています。また、近隣の各施設・医院の小児科の先生、あるいは外科の先生方とも連携を図ることで、当地域において、より円滑な小児医療体制を整備するための一助となれるよう努めています。

5.先進医療ならびに研究的医療

1)進行胃がん、大腸がんに対する腹腔鏡下手術
2)膵臓腫瘍、肝細胞がんに対する腹腔鏡下手術
3)胃がん、直腸がん、結腸がんに対するダビンチシステムを用いたロボット支援下手術
4)高度進行がんに対する術前化学療法、化学放射線療法
5)光線力学的手法を用いた術中がん転移、進展度診断
6)がんの分子生物学的手法を用いた微小転移診断の臨床応用
7)がんの免疫治療の臨床試験
8)高度肥満患者に対する腹腔鏡下減量手術(2型糖尿病治療法)

6.産学共同研究

1)低侵襲手術の機器開発
2)低侵襲手術の教育デバイスの開発
3)5-アミノレブリン酸を用いた総合的癌治療法の構築

7.手術症例(平成29年1月1日〜12月31日)

全身麻酔 症例数 638
全身麻酔以外 症例数 5
鏡視下手術 症例数 309
緊急手術 症例数 152
合計(総手術件数) 症例数 643
消化器外科領域
疾患 手術 手術件数
食道癌 17
食道胃接合部癌 0
術式 アプローチ
胸部食道切除 開胸(腹) 0
胸(腹)腔鏡 17
食道抜去 0
その他 開胸(腹) 0
胸(腹)腔鏡 1
食道破裂 開胸(腹) 0
胸(腹)腔鏡 0
その他 開胸(腹) 10
胸(腹)腔鏡 1
食道領域:合計 総件数 29
開胸(腹) 10
胸(腹)腔鏡 19
疾患 手術 手術件数
胃癌 71
食道胃接合部癌 1
術式 アプローチ
胃全摘 開腹 6
腹腔鏡 2
幽門側胃切除 開腹 9
(PPG含む) 腹腔鏡 29
噴門側胃切除 開腹 2
腹腔鏡 3
バイパス術 開腹 1
腹腔鏡 0
審査 腹腔鏡 19
胃GIST 開腹 0
腹腔鏡 3
胃十二指腸潰瘍穿孔 開腹 0
腹腔鏡 0
胃瘻造設 開腹 0
腹腔鏡 0
胃十二指腸領域:合計 総件数 72
開腹 19
腹腔鏡 53
疾患 手術 手術件数
小腸腫瘍 開腹 1
(良悪性) 腹腔鏡 2
イレウス 開腹 12
(腸管切除を伴う) 腹腔鏡 0
イレウス手術 癒着剥離、バイパス 開腹 20
(腸管切除を伴わない) ストーマなど 腹腔鏡 1
その他 開腹 0
腹腔鏡 0
小腸領域:合計 総件数 36
開腹 33
腹腔鏡 3
疾患 手術 手術件数
結腸癌 58
直腸癌(RS含む) 39
結腸切除 開腹 13
腹腔鏡 44
直腸切除(ISR・ESR以外) 開腹 6
腹腔鏡 28
ISR・ESR 開腹 0
腹腔鏡 5
経肛門内視鏡TAMIS 1
直腸切断術 開腹 0
腹腔鏡 4
局所切除 経肛門 0
経肛門内視鏡TAMIS 0
非切除 開腹 0
腹腔鏡 0
虫垂炎(待機的も含む) 開腹 0
腹腔鏡 14
大腸穿孔 開腹 8
腹腔鏡 0
潰瘍性大腸炎 開腹 0
腹腔鏡 1
家族性大腸腺腫症 開腹 0
腹腔鏡 1
直腸脱 開腹 0
腹腔鏡 0
経肛門 0
その他 開腹 18
腹腔鏡 5
大腸領域:合計 総件数 146
開腹 47
腹腔鏡 106
経肛門 0
疾患 手術 手術件数
肝細胞癌 16
胆管細胞癌 2
転移性肝癌 11
肝疾患その他 8
術式 アプローチ
葉切除 7
区域切除(外側区域除く) 開腹 8
腹腔鏡 5
部分切除(外側区域含む) 開腹 5
腹腔鏡 7
その他 開腹 1
腹腔鏡 6
肝臓領域:合計 総件数 37
開腹 18
腹腔鏡 19
疾患 手術 手術件数
胆石症・胆嚢腺筋腫症・胆嚢ポリープ 43
急性胆嚢炎 16
胆道良性疾患その他 0
術式 アプローチ
胆嚢摘出術 開腹 7
腹腔鏡 56
胆道良性:合計 総件数 63
開腹 7
腹腔鏡 56
疾患 手術 手術件数
肝門部胆管癌 2
遠位胆管癌 3
胆嚢癌 4
十二指腸乳頭部癌 4
十二指腸癌 0
術式 アプローチ
胆管切除を伴う肝切除(但し肝葉切除および肝S4a+S5切除以上) 3
部分切除(拡大胆摘を含む) 0
胆嚢摘出術 開腹 1
腹腔鏡 0
膵頭十二指腸切除 9
バイパス術 0
胆道悪性:合計 総件数 15
開腹 15
腹腔鏡 0
疾患 手術 手術件数
膵癌 12
膵IPMN 9
膵神経内分泌腫瘍 0
膵腫瘍その他 1
術式 アプローチ
膵全摘術 0
膵頭十二指腸切除(血管合併切除あり) 3
膵頭十二指腸切除 6
膵体尾部切除(脾温存) 開腹 0
腹腔鏡 0
膵体尾部切除(脾合併切除) 開腹 8
腹腔鏡 3
非切除 1
膵臓領域:合計 総件数 23
開腹 20
腹腔鏡 3
疾患 手術 手術件数
鼠径ヘルニア 前方 16
腹腔鏡 12
腹壁瘢痕ヘルニア 開腹 3
腹腔鏡 2
ヘルニアその他 開腹 8
腹腔鏡 0
急性腹症・腹膜炎手術 (別に記載以外の急性腹症・腹膜炎) 開腹 45
腹腔鏡 12
外傷手術 開腹 3
腹腔鏡 0
腹部その他 開腹 16
腹腔鏡 0
他科応援手術 開腹 27
腹腔鏡 0
腹部その他:合計 総件数 179
開腹 137
腹腔鏡 26
小児外科領域
疾患 手術 手術件数
虫垂炎 直視下 0
腹腔鏡 3
外鼠径ヘルニア(精系水瘤を含む) 直視下 3
腹腔鏡 14
難治性胸水 1
先天性横隔膜ヘルニア 1
胃食道逆流症 2
嚥下障害 3
腸回転異常症 2
先天性小腸閉鎖症 2
絞扼性イレウス 1
鎖肛(中間位以上) 2
鎖肛(術後) 1
ストーマヘルニア 1
ストーマ狭窄 1
胆道閉鎖症 1
先天性胆道拡張症 1
慢性腎炎 1
先天性膀胱尿管逆流症 1
先天性膀胱尿管逆流症 2
尿膜管遺残 1
尿道下裂 3
停留精巣 18
停留精巣 1
臍ヘルニア 2
神経芽腫 1
肝芽腫 2
肝芽腫 1
リンパ節腫大 2
水頭症 4
諸疾患 31
小児外科領域:合計 総件数 109
開腹 86
腹腔鏡 23

8.学生、研修医教育

学生にたいしては、外科診療の重要性と魅力を伝えるとともに、患者さんとのコミュニケーション能力を高める教育をマンツーマンで行います。研修医に対しては、年度に応じた技術指導を行い、外科専門医、消化器外科専門医を取得してもらいます。さらに、内視鏡外科技術認定医、食道外科専門医、肝胆膵高度技能医を目指してもらいます。希望があれば国内のhigh volume centerへの国内留学も推薦します。また、3年間は大学院生として基礎、あるいは臨床研究を行うことを進めます。これは、将来外科診療を続けていく上でも研究マインドをつくっていく上でも貴重な期間と考えます。そして機会があれば海外留学も進めます。高度な研究マインドを持った優秀な外科医を育て山陰の医療を支えるとともに、世界に発信していきます。

文責 藤原義之