感染制御部

 感染制御部は鳥取大学医学部附属病院における質の高い感染症診療の実践と病原微生物の確実な医療機関内伝播防止を目指し,診療科横断的に様々な感染症の診断・治療・感染制御をトータルにサポートするともに,感染症予防(ワクチン接種)にも積極的に取り組んでいる。
今後の展望として,感染症診療•感染制御•感染症予防に精通する医療従事者(感染症対策専門家)の養成に一層尽力したいと考えている。

1.感染症診療支援

 診療科•部門からの多数のコンサルテーション(診断・治療・感染制御)に随時対応するとともに,毎週,感染症診療カンファレンスを開催し,MRSAや抗菌薬耐性緑膿菌などの抗菌薬耐性菌が新規に検出された症例,血液培養検査で病原微生物が検出された症例,抗菌薬療法が遷延している症例などについて,医師,薬剤師,看護師,臨床検査技師のチーム医療体制のもとで症例検討を行い,適切な診断•治療•感染制御を推進した。
 抗菌薬耐性への対策として,特定抗菌薬(注射用バンコマイシン,テイコプラニン,アルベカシン,注射用•経口リネゾリド,ダプトマイシン,カルバペネム系薬,キノロン系薬[14日間以上の投与])の処方に対して届出制を導入している。
 さらに薬剤部との連携のもと,MRSA感染症治療薬(バンコマイシン,テイコプラニン,リネゾリド,アルベカシン),抗真菌薬(ボリコナゾール),アミノグリコシド系薬(アミカシン,ゲンタマイシン)のTDMを実施し,抗菌薬・抗真菌薬の適切な使用に向けた取り組みを行っている。TDM実施率は、2011年度はバンコマイシン90%、テイコプラニン100%、アルベカシン90%であった。

2.感染制御(医療関連感染対策)・感染症予防

  1. サーベイランス
     第一外科•第二外科診療群において手術部位感染症統合サーベイランスを継続したほか,国立大学病院統一サーベイランスとして,消化器外科における手術部位感染症,ICU1•ICU2•HCUにおける人工呼吸器関連肺炎,ICU1•ICU2•HCUおよび6A・6B病棟における中心静脈カテーテル関連血流感染症のサーベイランスを実施した。また,抗菌薬耐性菌新規検出状況(解析データ)・病棟別菌検出状況・血液培養菌検出状況・抗酸菌検出状況などの病原体サーベイランス,抗菌薬使用状況調査,針刺し・切創・粘膜曝露サーベイランスを継続した。
  2. インフェクションコントロールチーム(ICT)による病棟ラウンド
     標準予防策・感染経路別予防策の遵守状況を検証するために,月ごとに病棟を決めてICTのメンバーで病棟ラウンドを継続し,当該病棟に結果のフィードバックを行った。全病棟を一巡したところで感染制御部ニュースレターを通して結果を公開し(2回発行),感染対策の質の向上に努めた。
  3. 職員向けワクチン接種プログラムの実践
     職員を対象に,B型肝炎,麻疹,水痘,風疹,ムンプス,インフルエンザのワクチン接種を行った。
  4. 感染制御部ニュースレターの発行
     感染制御に関するニュースレターを年7回発行した。
  5. 職員向け研修会の開催
     全職員を対象にした研修会を年6回開催し、のべ2,402名の参加があった。

3.地域貢献

 地域の医療関連感染対策の推進のため、鳥取県福祉保健部との共同で「鳥取県抗菌薬耐性サーベイランス」「鳥取県院内感染対策講習会」事業を行っている。

(執筆:感染制御部副部長 千酌浩樹)