薬剤部
平成23年3月11日に発生した東日本大震災に対し、3/18-5/2の間に当院から計9班の医療救護班を宮城県女川町に派遣され、その全てに薬剤師が同行し、現地での薬剤の保管管理、調剤・服薬指導、薬剤の鑑別と処方提案等の面で貢献した。
薬剤部では、薬剤師確保に努めているが、薬学6年制への移行期にあたることもあり、平成23年度は薬剤師定員32名員に対し年間を通して3名~6名の欠員での業務遂行となった。業務の効率化や薬剤業務補助者の活用等により、辛うじて業務水準は維持できているものの、医師の業務軽減や今後の業務拡大(医療安全及び薬物療法の質の向上を目的とした薬剤師の病棟常駐や病院機能評価で指摘のあった時間外の抗がん剤調製等)実現には薬剤師が必要であり、今後の人材確保が急務である。
- 医薬品管理業務、医薬品情報管理業務
今年度は東日本大震災の影響で多数の医薬品に出荷調整(36品目、内供給停止20品目)がかかり、影響は10月末にまで及んだ。その間、情報収集(流通量の把握等)、代替薬の確保、院内外への周知等対応に追われた。そのため、質疑応答件数も857件(昨年度497件)と増加した。
平成23年度は新規治験7件(昨年度13件)、前年度から引き続き実施しているプロトコル19件(昨年度12件)の合わせて26件(昨年度25件)の治験薬を管理した。
本院採用医薬品については、臨床開発期間の短縮並びに承認薬の大幅増を受け、増加傾向にあり、平成23年度は新規採用88品目(代替削除60品目)、院外処方限定採用10品目と平成22年度は新規採用73品目から増加した。なお、医薬品購入費削減並びに患者負担軽減を目的とした抗がん剤の規格追加(2品目)や病院機能上不可欠な医薬品(1品目)については薬剤部より申請を行った。
院外処方限定採用医薬品は、当院での購入・管理は必要としない医薬品であるが、外来で使用中の患者が入院した場合には、継続が必要とされるケースが多く、臨時購入にて対応している。薬剤部では従来から医薬品の適正在庫に努めているが、品目の増加傾向は続いており、多くの医薬品を安全かつ効率よく管理する体制が求められている。
医薬品情報等の周知を目的とし月1回配布する「薬剤部のお知らせ」に加え、医薬品適正使用の観点から製薬会社や公的機関(PMDA等)等から得た情報提供は37件と昨年度とほぼ同様であった。一方、緊急を要する安全性情報(処方歴より処方医師を特定し、個別に情報提供を実施)については昨年度の3件(対象医師25名)に対し平成23年度は6件(同90名)と増加した。医薬品の適正使用には適正な情報が不可欠であり、今後も質の高い情報提供を推進する必要がある。なお、平成22年度に新設された「医薬品安全性情報等管理体制加算」については、薬剤管理指導料に対する加算であり、本体の傾向と同様、平成22年度は4,175件に比べ平成23年度は4,076件と微減した。 - 薬剤管理指導(高度薬学管理)業務
薬剤管理指導業務については、平成22年度に、業務の効率化をめざし専任薬剤師7名体制としていたが、離職者があり、7月からは専任6名体制での業務実施となった。
担当者は減ったものの、平成23年度の指導件数は7,990件(月平均666件)と前年度の8,195件(月平均683件)より微減に留まり、また、ハイリスク薬投与患者を対象とした「薬剤管理指導料(Ⅱ)」の算定件数は増加しており、限られた人員の中、優先度の高い患者に効率的に指導にあたる事が出来たと考えている。
高度薬学管理では従来のNICUに加え、平成23年12月には、ICU1においても、重症患者に対する薬学的管理(薬剤管理指導料(Ⅰ)算定)を開始したが、NICUでの対象患者減により、算定件数は平成22年度の270件に比べ平成23年年度は251件と微減した。
入院時の持参薬鑑別については、平成20年に薬剤部での一括鑑別を開始して以降、持参薬の安全使用の意識の高まりとともに毎年増加傾向にあったが、平成23年度は6,341件と前年比36%の大幅増となった。持参薬の安全使用が促進されることにより、当院の入院処方が減少し医薬品購入費削減にも有用である(薬剤部で鑑別した持参薬の合計金額:6,062万円、内入院期間中に投与可能な金額:3,017万円)。
医薬品安全性情報報告(医薬品の使用によって発生した健康被害について、薬事法に基づき厚生労働大臣に報告する制度)について、平成23年度は薬剤部より4件(昨年度1件)報告を行った。また、プレアボイド報告(薬剤師が薬物療法に直接関与し、薬学的患者ケアを実践して患者の不利益(副作用、相互作用、治療効果不十分など)を回避あるいは軽減した事例)については、平成23年度は(87件)と昨年度(52件)より67%の大幅増となった。 今後も医薬品の適正使用を図るために、これら報告を推進していきたいと考えている。 - 注射薬調製業務
化学療法の調製件数については、平成22年度10,732件(外来6,270件、入院4,462件から23年度11,971件(外来6,752件、入院5,219件)と12%増加した。薬剤部では抗がん剤の調製だけでなく、レジメンの登録・審査に関わっており、調製前のレジメンチェックや薬歴管理、投与前後の服薬指導(外来化学療法室でも実施)も含め、抗がん剤治療にトータルに薬剤師が係わることで医療安全や薬物治療の適正化に貢献している。
TPN調製に関して、近年経管栄養の普及やキット製剤の充実により減少傾向にあるが、23年度は670件(昨年度984件)と特にNICUでのTPN投与患者減により減少した。 - 薬物治療モニタリング
薬物血中濃度測定は、検査部への測定の移行が進み、平成23年度は測定件数は222件(昨年度319件)減少したが、解析については引き続き薬剤師が担当し、医薬品の適正使用に貢献しており、平成23年度は抗MRSA用薬を中心に496件の解析を行った。 - 調剤業務
調剤業務は病院の診療実績とほぼ連動しており、平成23年度の処方調剤は、外来院内処方せん枚数(13,910枚 前年比1.1%増)、入院処方せん枚数(122,025枚 4.4%増)、注射薬セット件数(205,220件 0.9%減)と微増した。また手術時使用薬剤セット件数も12,035件(1.9%増)と手術件数の伸びに沿った結果であった。 - 医薬分業推進(地域薬剤師会との連携)
鳥取県西部地域の病院薬剤師と保険薬局薬剤師の会合を毎月当院薬剤部で開催し、院外処方に関する様々な問題点について議論を交わし、連携に努めている。平成23年度は東日本大震災により出荷調整のかかった医薬品の処方に関する情報交換と対策並びに調剤ミス・調剤過誤に関する周知と対策等について活発に協議した。また、9月からは新たに島根県安来地区から薬剤師会の委員が加わり、二次医療圏を超えた連携が可能となった。 - 教育及び研究
昨年度より6年制実務実習生に対する長期実務実習(11週間)が始まり、昨年は実習初年度ということもあり大学周辺での実習者が多く、本院の実習生もその影響を受け減少したが、今年度は、回復傾向にあり、当院の実習生も6名(平成22年度3名)と増加した。
平成23年度は学会で16演題を発表し、原著論文2編、総説2編を報告した。
平成23年は新たに日本病院薬剤師会 感染制御専門薬剤師2名、日本感染症学会インフェクションコントロールドクター1名、栄養情報担当者1名、スポーツファーマシスト1名、日本化学療法学会認定抗菌化学療法認定薬剤師1名および日本病院薬剤師会生涯研修認定薬剤師1名が誕生した。
(椎木 芳和)