3-3-25. 薬剤部

 薬剤部では、薬剤師32名の定員に対し年度を通して2-4名の欠員があり、恒常的な薬剤師不足に対応するため、4月より薬剤補助者として派遣社員2名を受け入れ、平成23年1月には6名に増員し非薬剤師業務を担当させている。しかしながら、医師の業務軽減や医療安全及び薬物療法の質の向上を目的とした薬剤師の病棟常駐や病院機能評価で指摘のあった時間外の抗がん剤調製等実現には薬剤師が必要であり、今後の人材確保が重要である。

 

1.医薬品管理業務

 新規治験の契約件数は、近年減少傾向(平成20年度、21年度とも7件)にあったが、平成22年度は13件と増加に転じた。平成22年度は前年度から引き続き実施しているプロトコルと併せ25件(医師主導1件含む)の治験薬を管理した。
 本院採用医薬品については、臨床開発期間の短縮並びに承認薬の大幅増を受け平成22年度は新規採用73品目(代替削除60品目)、院外処方限定採用12品目と平成21年度(新規採用58品目、院外処方限定採用7品目)から大幅に増加した。また、特定の診療科から申請が困難な医薬品については、薬剤部より申請を行っており、H22年度は医薬品購入費削減並びに患者負担軽減を目的とした抗がん剤の規格追加や患者のQOL向上を目的とした剤型追加の申請を行った。
 薬剤部では従来から医薬品の適正在庫に努めているが、品目の増加傾向は続いており、多くの医薬品を安全かつ効率よく管理する体制が求められてきている。
 
2.薬剤管理指導業務、医薬品情報業務

 薬剤部では従来、管理指導業務に従来3-4名の専任薬剤師と7名の準専任薬剤師(3~4時間/日従事)を配置していたが、11月より専任7名体制とし業務の効率化を図った。平成22年度の管理指導件数は、8,195件(月平均683件)であり、前年度7,903件(月平均659件)より微増した。平成22年3月よりNICUに専任薬剤師を配置し重症患者に対する指導業務(薬剤管理指導料Ⅰ)を開始したが、今年度は270件と軌道に乗り、対象患者をほぼ網羅できた。今後は、実施件数の増加に加え、重症患者指導の対象病棟の拡大やハイリスク薬投与患者への指導の充実を図ることが重要と考えている。
 入院時の持参薬鑑別については、平成20年の開始当初は必要時としていたが、持参薬の安全使用の意識の高まりとともに依頼件数が増加し、平成22年度は4,659件と前年比25%増となった。持参薬の安全使用が促進されることにより、当院の入院処方が減少し医薬品購入費削減にも有用であると考えている。
 また、平成22年度の診療報酬改定において、医薬品情報管理室において更に質の高い医薬品安全性情報等の管理を行っている場合、医薬品安全性情報等管理体制加算が新設された。薬剤師による医薬品情報提供に対する初めての評価であり、初年度であるH22年度は4,175件(月平均348件)であった。
 
3.注射薬調製業務

 化学療法の調製件数については、平成21年度10,432件(外来6,126件、入院4,306)から22年度10,732件(外来6,270件、入院4,462件)と外来入院とも微増した。薬剤部では抗がん剤の調製だけでなく、レジメンの登録・審査に関わっており、調製前のレジメンチェックや薬歴管理、投与前後の服薬指導(外来化学療法室でも実施)も含め、抗がん剤治療にトータルに薬剤師が係わることで医療安全や薬物治療の適正化に貢献している。
 TPN調製に関して、近年経管栄養の普及やキット製剤の充実により減少傾向にあったが、平成22年2月より従来のICUに加え,NICUでもTPN調製を開始した結果、前年度(984件)比、6割増と大幅に増加した。
 
4.薬物治療モニタリング
 
 薬物血中濃度測定は、測定機器の更新に伴い、平成21年度7月より一部の測定項目を除き(アルベカシン、アミカシン、テイコプラニン、ボリコナゾール)、検査部に測定を移行した。このため、測定件数は減少したが、解析については引き続き薬剤師が担当し、医薬品の適正使用に貢献している。解析件数は抗MRSA用薬を中心に平成21年度595件から今年度は615件と増加している。
 
5.調剤業務
 平成22年度の処方調剤は、外来処方せん枚数(131,664枚 前年比1.6%増)、入院処方せん枚数(116,905枚 0.8%増)、注射薬セット件数(207,018件 1.3%増)といずれも微増した。また手術時使用薬剤セット件数も207,018件(5.4%増)といずれも診療実績の伸びに沿った結果となった。
 
6.医薬分業推進(地域薬剤師会との連携)

 鳥取県西部地域の病院薬剤師と保険薬局薬剤師の会合を毎月当院薬剤部で開催し、院外処方に関する様々な問題点について議論を交わし、連携に努めている。平成22年度は一包化安定性データベースの作成と周知方法について活発な議論が行われ、その成果を日本薬剤学会等にて報告した。
 
7.教育及び研究

 今年度より6年制実務実習生に対する長期実務実習(11週間)が開始となり、当薬剤部では5月に3名の実習生を受け入れた。実習初年度ということもあり大学周辺で実習者が多く、県内の実習生は減少する結果となった。平成22年度は学会で9演題を発表し、原著論文3編、総説1編を報告した。
 平成22年は新たに日本病院薬剤師会 感染制御認定薬剤師2名、栄養情報担当者1名、日本医療薬学会認定薬剤師1名(計2名)、日本病院薬剤師会認定指導薬剤師2名(計8名)が誕生した。

(椎木 芳和)