3-3-26. 看護部

 平成21年度、看護部では固定チームナーシングの効果的な実践やリーダー育成体制の構築化など一人前・中堅レベル看護師に期待ができる戦略的な取り組みを行ってきた。平成22年度は、保助看法の改正を契機に法の意味する看護職としての責務を果たし、看護師本来の看護を実践していくことを最優先課題とし、スローガンには、「看護者の責務を果たす最善の看護実践による顧客満足―看護でみせる療養生活支援トップクラス―」を掲げた。そして、以下の4つを重点目標とし取組み成果を得た。

  • 目標1:基本的身体ケア(清潔・排泄・食事援助)の最適な看護実践による顧客(患者・看護師)満足を得る
    入院生活において患者が安心・安全に過ごしていただくためには快適な療養環境を提供し、療養生活において基本的身体ケアを統一した看護技術で提供する必要がある。そこで、平成22年度は、根拠に基づいた看護過程を展開し、基本的身体ケア(清潔・排泄・食事援助)を実践し、顧客満足を得ることを目標とした。看護サービス委員会では、全職員の基本的看護技術実施手順状況を評価し、既存の看護基準・手順を一から見直し基本技術を徹底させた。そして、各セクションの特色に合わせ、ケア対象患者、疾患別、症度別、ADL、看護必要度別などで清潔・排泄・食事援助の標準介入計画を作成し基準に沿い統一した看護ケアの実践につなげることができた。記録委員会では身体ケア関連の推奨看護診断の学習・立案評価から記録の充実をはかった。患者満足度調査の結果、H21年度と比較し特に基本的身体ケア項目の清潔・排泄・食事に関してポイントの増加がみられた。
  • 目標2:一人前レベル以上の看護師の自セクションに特化した「まかせて(手)スキル」により看護師満足を得る
     平成19年度「一人前以上看護師はまかせてスキルを1つはもつ」という目標で取
    り組み89%の取得率であった。しかし、各セクションで実践・指導できないスキル
    も多く見られたため、H22年度は、取得している「まかせてスキル」の再評価を行
    い、自セクションで実践・指導できる「まかせてスキル」の基準・運用等を新たに
    整備した。各セクションに特化した「まかせてスキル」の実践により統一したケア
    技術の提供で質向上につながった。今年度の取り組みの成果は、次年度の新人看護
    師教育:新人教育体制(ローテーション研修)の臨床指導における基盤整備に繋げて
    いきたい。
  • 目標3:臨床における倫理的問題事例の対応スキルを向上し顧客(患者・看護師)が満足する
     看護部倫理委員会活動を中心に、各セクションで日常看護場面で見られる臨床倫理問題を月1回事例検討し、倫理感の醸成に努めた。事例では抵触する法律、倫理綱領をあげ、看護師としてとるべき行動を具体化し各セクションへフィードバックすることで、倫理的介入ができた事例報告が多くみられるようになった。個々の倫理観を持った行動の成果は、看護記録から患者の反応を確認した。今後も倫理的視点で看護を見つめる機会を継続し倫理感を養っていく。
  • 目標4:内服治療の正しい管理で影響レベル3a以上の服薬間違いを防止する
    内服薬管理に於いて患者に直接、投与するのは看護職である。平成21年度のインシデントレポート報告の中で、薬剤に関する報告の50%が内服薬に関するものであった。そこで、今年度は内服薬誤投与による患者影響レベル3a以上の発生0%以内と目標を掲げた。内服薬管理に関するマニュアルの遵守のためロールプレイで100%のスキル実践を達成し、薬剤の正しい知識を身に付けるための学習を徹底し服薬管理を行なった。その結果、影響レベル3a以上のインシデント発生件数は昨年度11件から6件に減少でき、影響レベル3b以上のインシデントの発生はなかった。特に、内服薬投薬時の照合率は91%(昨年度87%)まで上昇した。今後も患者・家族が安全で安心できる内服薬の管理を継続実践していく。次年度は、さらに影響レベル2から分析を行ない重大な事故を防止するための対策を強化していく。
主な活動状況
看護補助者の増員による療養環境の整備
H22年4月から、急性期看護補助体制加算の算定を開始した。急性期入院医療において、患者の高齢化等に伴い、看護補助業務の重要性が増しており多職種が連携することで、より質の高い医療の提供につながっている。各セクションに2~5名の看護補助者を配置し、看護師の指示の基に療養環境整備、看護ケア補助業務を実施している。
看護職員の健康障害防止および、健康保持増進
看護部労働安全衛生委員会の活動として「職場環境の整備を行い、健康障害防止の職場環境が改善できる」「職員の健康維持を推進し、職員自身が心身の健康管理ができる」を目標にあげた。看護職に多い腰痛に焦点をあて労働環境による腰痛防止やボディメカニクスを理解した改善活動で増悪・悪化の減少につながった。休暇取得の推進として今年度よりメモリアル休暇を設定、リフレッシュ休暇と同様必須取得とし、全看護職員が年間1回取得できた。超過勤務減少に向けた改善取り組みにより、超過勤務時間は月平均10.2時間となった。
職場復帰支援システム
現場の師長・スタッフ支援担当副部長・産業心理相談医の円滑なラインによりメンタル不調者の職場復帰支援システム(わ~から・えしこシステム)を継続して行っている。今年度の心理相談件数は158件であり、わ~から・えしこシステムでの年間継続支援件数は5件であった。
看護の実践モデルとして質の高い看護サービスを提供する認定看護師
現在、糖尿病看護、感染管理、皮膚・排泄ケア、不妊症看護、新生児集中ケア、救急看護、手術看護、緩和ケア(2名)の合計10名の認定看護師が活躍している。さらに、H22年度は、がん専門看護師2名と皮膚・排泄ケア、がん化学療法認定看護師各1名がそれぞれの教育過程を修了し、H23年度には新たに誕生する予定である。認定看護師は現場の実践モデルとして質の高い看護サービスを提供し、院内だけでなく、地域の看護職員へも研修会を開催し指導を行っている。また、認定看護師が毎月1回集まり「専門、認定看護師会」を開催し活動状況の情報交換を行うことで連携を深めている。
*現在の看護専門外来
・フットケア外来、リンパ浮腫外来、不妊看護相談外来、助産外来、ストーマケア外来
看護職員のキャリア開発
院内では看護管理者の資質と看護の水準の維持及び向上のために看護実践における看護管理者の育成に取り組んでいる。現在、看護管理者の42.8%が看護協会セカンドレベル認定教育課程を修了している。
継続教育  
院内研修は96回開催し、新人研修は16回開催した。特に、リーダー育成研修       に力を入れた。看護研究業績は83演題(昨年度75演題)をまとめ、院内発表33演題、院外発表50演題であった。院外研修・学会の参加は総数940人(昨年度789人)で毎年増加している。
新人教育
新採用看護師74人に対して、継続学習支援室が中心となり、各セクションの継続学習支援副師長と連携して支援を行っている。集合研修から分散研修中心へと移行し、「出前学習」は85回実施し、必要な知識と技術のタイムリーな指導により、新人の看護技術習得に効果があった。次年度、新人看護師教育に新教育体制(ローテーション研修)の導入予定であり、ローテーションに合わせ急性期系、消化器系、呼吸器系、母性・小児系、脳神経系の6領域の指導者としてスーパーナースの育成を行なった。
学生のニードに沿った臨地実習
平成21年度、学生の満足度調査で低値だった内容から「各病棟特有の伝える看護実践」「病棟カンファレンスへの学生の参加」「教員との情報交換」などを実習環境改善項目として強化し、学生満足につながるよう意識的に関った。学生への関わりを強化することで、次年度採用者確保の増加効果につながった。
産期医療の活性化に向けて
文部科学省の周産期医療支援プログラムに鳥取大学総合周産期母子医療センターが選定され、「周産期スタッフの教育・養成」「周産期医療にかかわる女性スタッフの継続勤務支援・職場復帰支援」の2つを柱とし、鳥取県の周産期医療がさらに活性化するように5年計画で取り組みが開始された。
低侵襲外科手術
平成22年8月には最先端医療である低侵襲のロボットによる内視鏡手術支援システム「ダヴィンチS]を導入した。全国でも稀な4診療科(泌尿器科、胸部外科、女性診療科、消化器外科)で行われており、海外研修で技術を習得した専属の看護師が、高いレベルの手術が安全に実施できるようサポートしている。
救命救急センター
 災害拠点病院として「災害急性期に活動できる機動性を持った トレーニングを受けた医療チーム」DMATを結成しており、救命救急センター看護師5名がスキルを取得し、被災現場への支援活動を積極的に行っている。3月に発生した東日本大震災への支援活動も救命救急センター看護師を中心とし継続的な派遣を行った。また、2年目以上の全看護師がICLSを取得、JPTECは57%取得しており、院内外で救急看護スキルを発揮している。
看護部メンズNS会(男性看護師会)
男性看護師は今年度28名(平成22年4月現在)となり、全看護職員の5.9%を占める。これまでのICUや救命救急センター、手術室といった専門的分野から、一般病棟ほぼ全てに配置している。平成22年度、こうした男性看護師の動向を踏まえながら看護部メンズNs会を発足した。「看護部メンズNS会」は、将来のマグネットホスピタルのモデル病院を目指し、看護部の組織的な活動に参画しながら、男性看護師にとっても魅力的な職場作りを目指している。
顧客(患者)満足
毎年実施している患者満足度調査では、「患者の話を聞く」「接遇態度」「看護ケア」「言葉使い」「患者の尊重」の順で高い満足を得られていた。日常清潔ケアに関しては設問16項目中15項目が満足・やや満足の回答が80%以上あり看護の質に対する評価は毎年継続して高い。また、患者さんからの意見総数340件のうち、看護ケアに対する感謝の内容は106件、看護師の態度・説明不足等の苦情に関する内容は28件あった。年々感謝が増加し苦情は減少している。特に、感謝は昨年と比べ3倍増加し、全ての部署に届けられた。接遇対応、倫理感の醸成などで看護師個々が顧客に立場に立った組織活動を実践した成果の現れであるといえる。