3-3-24. 治験管理センター
我が国のドラッグラグ解消を目的に、これまで様々な施策が講じられてきた。日本人との人種差がないことを根拠に海外の臨床データだけで承認されたり、外国において既に当該効能又は効果等により承認され、医療における相当の使用実績があり、国際的に信頼できる学術雑誌に掲載された科学的根拠となり得る論文又は国際機関で評価された総説等がある場合などは、国内で治験を行うことなく公知申請により承認されるケースも多くなった。国際的に同時に治験が行われるいわゆるグローバル化や、製薬企業の主体性が得難い適応症拡大には医師主導治験によって承認されることが、今後ますます多くなるものと思われる。
治験と4相である製造販売後臨床試験について、新規および継続契約件数の推移を図1に示す。図に示すように、契約件数は減少傾向を回復できない状況にある。平成22年度は新規13件、継続12件(医師主導治験1件を含む)の合計25件であり、症例数は新規34症例、継続40症例の合計74症例であった。製造販売後臨床試験の契約件数は、新規0件、継続1件(8症例)であった。
製造販売後調査について、新規および継続契約件数の推移を図2に示す。製造販売後調査は最近増加傾向にあるが、上述したように治験の症例数がない、または、少ないまま承認されるようになり、安全性および有効性を臨床使用で同時に担保するためである。承認される新薬には抗がん剤など生理活性が極めて強く、重篤な副作用の発生率が高いため、契約して初めて臨床使用できるプロスペクティブ調査や、全ての使用症例について調査が義務付けられるなど、とくに安全性に留意した調査が多くなった。副作用が多くの臓器で発現し、しかも重篤であることから、一つの診療科だけでは調査に対応できず、複数の診療科にまたがるものもある。このように、調査には試験性が高まっており、製造販売後調査のうち特定使用成績調査がとくに増加する傾向にある。
平成22年度の使用成績調査は、新規の契約件数は23件で症例数は123例、継続の契約件数は50件で症例数は323例であった。特定使用成績調査は、新規の契約件数は40件で症例数は182例、継続の契約件数は66件で症例数は361例であった。なお、全症例報告の特定使用成績調査の契約件数は、平成22年度に新規に契約した特定使用成績調査のうち半数以上の22件であった。
このように新薬の開発には、製薬企業による治験だけでなく、医師主導の治験や臨床試験がますます増える傾向にある。また、治験では補えない安全性や有効性を確認するために、臨床使用と併せて行われる製造販売後調査が重要になってきている。こうした状況が背景となり、日常診療に係る医師の負担は増大する一方であることから、治験管理センターは臨床試験や臨床研究にも対応できる運営体制の強化が望まれる。
(大坪 健司)