3-2-18. 薬物治療科
薬物治療科では、診断上、特殊な専門的検査を必要としない生活習慣病全般に対して、当診療科独自の専門的知識を生かした治療を行うことを目指している。すなわち、薬の個々の特性や作用様式の知識を生かして、患者の病態に合った薬物選択を行うとともに、薬効評価を行うものである。また、ニコチン依存からの脱却を支援するという意味で禁煙外来を開設し、積極的に治療を行っている。禁煙外来は、原則として毎週木曜日に、長谷川教授、三浦准教授が担当している。
お薬外来では、診断に高度な専門的検査等の不要な高コレステロール血症や高血圧、肥満などの生活習慣病や、慢性肝臓病などのありふれた疾患について、個々の患者に最適な薬の選択や、薬のさじ加減を中心とした薬物治療の普遍的な問題に関し対応している。すなわち患者さんの病気・病態の個性に適合した個性の薬を使い、適確な効果判定を基にした個別薬物治療を目指して実施している。特に、近年は複数の慢性疾患で多くの薬剤を服用している方が多くなっており、そのような場合はもちろんのこと、急な感冒や、胃腸炎などに罹患し、更に薬が増えた際など飲み合わせの心配をされる方から相談を受けている。このような多剤併用等、薬に対する心配・不安への対応や、各診療科の専門医と連携し、薬に関する相談に応じている。また治験に関する相談に関しても窓口になっている。特に最近は薬や健康食品、サプリメントなどを飲みだしたことから、それまで続けていた薬の効果が無くなってしまったり、逆に有害作用がでるほど強くなったりすることが知られている。中にはグレープフルーツジュースばかりでなく、リンゴジュースなどと一緒に飲んでも作用が期待できなくなる薬も明らかになってきた。薬の効果が急に変化した場合などその原因を調べる手伝いをしている。
また、薬の服用中、副作用ではないかと思われる症状が現れた時、原因となった薬を探したり、可能性の高いものを判定したりする手伝いをしている。
禁煙外来では教育ソフトを用いてたばこの健康への影響について説明し、喫煙量の目安として理解しやすい呼気中一酸化炭素濃度・尿中ニコチン代謝物の測定も行って、禁煙指導に役立てている。離脱症状でなかなか禁煙できない患者には、ガムやパッチ製剤を用いたニコチン代替療法も必要に応じて行い、内服による禁煙補助薬も取り入れている。平成19年4月から鳥取大学医学部附属病院も敷地内禁煙となり、3ヶ月間5回受診の禁煙プログラムに健康保険が使えるようになったことから、受診者が増えている。平成23年度からは、喫煙期間が短いなどのため禁煙治療に健康保険が使えない患者に対し、鳥取県の治療費助成制度が始まり、若年者も治療を受けやすくなってきます。一方、この1年の間に煙草の価格が上昇していることもあり、これを契機に入院患者の受診者も増えている。パッチ製剤または内服薬(チャンピックス)の実費だけでよいので、外出許可を取って院外で喫煙している人にもっと利用していただきたい。現在、手術前の禁煙のための紹介や、たくさんの外来患者の診察で十分な禁煙指導の時間が持てない診察医の方々からの紹介よる新患患者が少しずつ増えており、また直接禁煙を希望する方からの電話による受診の問い合わせが増えており、徐々に認知されているようである。現在、保険適応となってからの禁煙成功率などのデータを整理中である。今後もタバコにaddictされた方が禁煙できるよう機能したい。
また、最近多く開発されている遺伝子医薬を患者に投与する場合、投与前後での遺伝子発現の抑制率を評価できる方法を開発しており、先進医療への採用を目指している。3mlの空腹時採血だけで、患者の身体もしくは病巣内で過剰に発現している遺伝子があるかどうかを判定でき、なおかつ投与された薬が、確かにその目標となる遺伝子を抑えているかどうかを評価できるもので、現在、早期癌診断として、肝癌、肺癌、消化器癌、婦人科領域癌、膵癌(四国がんセンターや第2内科との共同研究)、甲状腺癌(内分泌代謝内科との共同研究)での検討や、PET-CT(鳥取市立病院や放射線診療科との共同研究)との比較検討を進めている。また当手法を用いて、致死的炎症性疾患の早期診断の適応を目指し、その例として劇症肝炎の肝移植判定を早期に行えるマーカーを見出して検討を進めており、ARDS(急性呼吸窮迫症候群)、SIRS(全身性炎症反応症候群)の早期発見マーカー(麻酔診療科との共同研究)も探索している。
薬物治療ということに関しては、薬物作用の個人差に起因する問題においてその原因を解明し、各個人にとって一番有効で安全な投与方法を検討している。具体的には、薬物代謝酵素の遺伝子多型判定や独自のソフトを用いた薬物血中濃度シミュレーションを含む臨床薬物動態学的検討を通して、薬物治療の最適化を推進するための診療を行っている。
さらに漢方消化器外来を開設しており、院内の紹介で、腹部症状を有する患者に漢方薬による治療が行える。当院外来受診終了後や退院後も市内や近隣の病院からの継続内服をご依頼することもできる。
三浦 典正