3-2-03. 第三内科診療科群
第三内科診療科群は内科系疾患のなかで主に呼吸器疾患と膠原病の診療を担当しています。呼吸器疾患の診断・治療に関しましては従来から力を入れてきましたが、平成17年度より、膠原病内科も標榜し診療を開始しています。山陰地方では膠原病を専門とする医師が少なく、遠方からの紹介も少なくありません。認知度も高まり、膠原病の入院患者に占める割合も増加しています。呼吸器疾患に加えて膠原病診療の充実とレベルアップの目的で、若手医師の内地留学もすすめてきました。
入院では、肺癌を中心とする胸部悪性腫瘍が約半数を占め、間質性肺炎、喘息、呼吸器感染症などの非悪性呼吸器疾患が3割程度、全身性エリテマトーデス、関節外合併症を伴った慢性関節リウマチ、各種血管炎など自己免疫疾患・膠原病が2割程度となっています。平成22年度には、結核病棟を除く一般病床数が21年度から増床され49床となっていますが、病床稼働率が常時100%超という状態が続いております。
外来では、気管支喘息、慢性閉塞性肺疾患などの割合が高くなっていますが、より質の高い診療を提供すべく腫瘍、感染症、アレルギー・気管支喘息、膠原病などの専門外来に加え、禁煙外来、アスベスト外来を開設しています。
最近の呼吸器疾患診断の進歩としまして、新たな気管支鏡検査システムの導入が上げられます。従来からの直視下ならびにX腺透視下の径気管支肺生検に加え、コンベックス型超音波気管支鏡下針生検(EBUS-TBNA)とガイドシースを用いた気管支腔超音波断層法(EBUS-GS)を実施しています。前者によって、診断が困難であった縦隔や肺門リンパ節の組織学的診断が可能となってきていますし、後者により肺野末梢の小病変の診断率が格段に向上しています。さらに、放射線部の協力を得てバーチャル気管支鏡ナビゲーションシステムを導入いたしました。気管支鏡前の胸部CT画像から、バーチャル気管支鏡画像を再構成し、病変部にいたる責任気管支を検査前に同定し、検査の道案案内として用いるものです。これらにより、より短時間で正確に小病変の診断が可能となってきています。
肺癌治療におきましては、胸部外科、放射線治療科と毎週カンファレンスをもち、個々の症例を検討し、適切な治療方針決定を行っております。切除不能肺癌に関しましては化学療法が中心となりますが、入院期間の短縮と外来化学療法を積極的に進めてきました。非小細胞肺癌ではほぼ全例上皮増殖因子受容体(EGFR)遺伝子変異評価を行っています。これにより、ゲフィチニブなどの分子標的薬の効果が期待できる方の選択をしています。肺癌治療はガイドラインそったものを基本としておりますが、その治療効果は完全なものではありません。より治療効果の向上、副作用の軽減、生活の質の維持・向上を目指した新たな治療法の開発を目的に、肺癌化学療法の臨床試験も関連施設と共同で実施しています。その成果を国内外で報告しています。
気管支喘息の診断におきましては、従来のアレルルギー検査、呼吸機能検査、気道過敏性検査(アストグラフ)に加え、いまだに保険適応のない呼気NOの測定を併用しています。これにより、より簡便で負担の少ない検査で診断が可能になりつつあります。また、当科通院中の喘息患者さんを対象に、黄砂の喘息症状に対する調査を実施してきました。その結果は学会等で報告し、全国的にも注目を集めております。
膠原病診療における最近の動きとしましては、治療においてステロイド療法に加え種々の免疫抑制剤、あらたな生物学的製剤、肺高血圧治療薬を用いることにより、難治性の病態のコントロールと予後の改善を目指しております。
今後も、医学の進歩を迅速に取り入れ、独自の研究も進め、地域の中核的施設として診療レベルの向上に努めていきたいと考えています。
(文責 井岸 正)