3-2-23. 脳神経外科
脳神経外科
本診療部の主な対象疾患は脳腫瘍(良性、悪性、間脳下垂体腫瘍など)、脳血管障害(出血性、閉塞性)、頭部外傷、脊椎・脊髄疾患、中枢神経先天奇形疾患である。新生児から高齢者まであらゆる年齢層の疾患に対応できる診療を行っている。加えて、難治性てんかん、不随意運動、三叉神経痛、顔面痙攣などのいわゆる機能的外科疾患に対する治療も行っている。例年、脳腫瘍手術症例数は50症例を越え、中四国地方でもトップクラスの脳腫瘍専門治療施設として認識されている。主な医療地域圏は、山陰全域、岡山県北部、兵庫県北部にわたり、紹介患者、救急患者の受け入れを積極的に行っている。スタッフの中心は脳神経外科専門医と、脳卒中学会専門医であり、山陰地方唯一の脳神経血管内治療指導医とともに的確な治療方針に基づいたチーム医療を行っている。
外来部門
外来患者は1日20~50名あり、初診、再診ともに毎日、受診可能である。専門外来では術後の患者さんの良好なQOLを目的とした長期経過観察を行っている。火曜日:教授外来(渡辺高志)、脊髄・脊椎(赤塚啓一、谷浦晴二郎)、血管内治療(坂本 誠)、木曜日:脳腫瘍(神部敦司)、機能的脳神経外科(近藤慎二)、金曜日:教授外来(渡辺高志)、高次脳機能(渡辺高志)、間脳下垂体(黒崎雅道)。平成15年度以降に設置された高次脳機能外来では、専属コーディネーターを設置し、精神神経科、高次脳機能障害家族会とも連携を密にとり、患者の社会復帰まで見据えて支援を行っている。
入院部門
病院内で規定された当診療科病床数は20床程度で、主に手術を目的とする。平成22年に施行された総手術件数は306件であった。手術内容は下記の一覧表の通りである。最近の傾向としては、脳血管撮影室でのカテーテルを利用した脳血管内手術が85件と増加傾向である。脳動脈瘤に対する治療として開頭クリッピング術困難例に対してもコイル塞栓術で対応可能である。脳腫瘍手術は中四国地方ではトップクラスの症例数をもつ。下垂体腫瘍に対する経鼻的手術は症例数、手術成績が評価され、日本間脳下垂体腫瘍学会に経蝶形骨下垂体手術見学実習可能施設として推奨されている(全国で25施設)。悪性脳腫瘍では手術後に放射線治療、化学療法を含めた集学的治療を行っている。脊椎・脊髄疾患に対する治療では創部が小さく、非侵襲的な手術が行われ、患者さんから好評を得ている。薬剤抵抗性の難治性てんかんやパーキンソン病に対する外科的治療や三叉神経痛、顔面けいれんに対する微小血管減圧術も積極的に行っている。
地域医療
山陰地方の各病院には、脳神経疾患で対応できない場合には紹介して頂いている。また24時間体制での脳神経外科救急患者の対応は救急災害科の多大なる協力のもと行っている。また毎月1回は近隣の関連施設の脳神経外科医と症例検討会を行い、当該地域の脳神経外科疾患の診断および治療成績の向上に貢献している。
平成22年度に脳神経外科部門で推進した項目および展望
- クモ膜下出血後の脳血管攣縮予知のための患者管理と髄液モニタリング
- 血管内治療の更なる進歩(ステント治療とコイル塞栓術)
- 急性期閉塞性脳血管障害患者の緊急治療(血栓溶解、tPAなど)
- 手術用脳機能画像の描出とその利用
- 術中脳機能モニタリング手術(顔面神経モニタリング、SEP、MEPなど)
- 術中ナビゲーションシステム導入による脳腫瘍手術
- 間脳下垂体腫瘍に対する経鼻的低侵襲手術
- 手術困難な頭蓋底病変に対する外科的治療(頭蓋底外科)
- 悪性脳腫瘍に対する個別化集学的治療
- 材料改変による脊椎・脊髄外科手術の更なる進歩
- 小児脳腫瘍、中枢神経系先天奇形患者の集学的治療
- 高次脳機能障害患者の総合医療
- 神経内視鏡下手術
- てんかん原性病巣の評価と外科治療
- 機能的脳神経外科手術(パーキンソン病に対する外科的治療や三叉神経痛、顔面けいれんに対する微小血管減圧術)
脳腫瘍 | 46 |
(1) 開頭腫瘍摘出術 | 33 |
(2) 経蝶形骨洞手術 | 11 |
脳血管障害 | 29 |
(1) 破裂動脈瘤 | 13 |
(2) 未破裂動脈瘤 | 2 |
(3) 高血圧脳内出血 | 12 |
(4) バイパス術 | 2 |
頭部外傷 | 47 |
(1) 急性硬膜下血腫 | 5 |
(2) 慢性硬膜下血腫 | 38 |
水頭症 | 30 |
脊椎・脊髄 | 20 |
機能的手術 | 9 |
血管内手術 | 85 |
(1)動脈瘤塞栓術 | 39 |
(2)閉塞性脳血管障害 | 24 |