3-2-08. 胸部外科

 胸部外科は開設されて7年目に入りました。現在のスタッフは6名で、手術部やICUなど各部署での仕事を兼ねながら、日常診療をしています。昨年度から初期臨床研修制度の変化とともに外科研修医が減少しており、日常臨床へ大きく影響を及ぼしています。開設以来、診療活動は毎朝7時45分の始動を原則としており、曜日毎に抄読会、手術手技検討会、肺がんカンファレンス、術前検討会、術後検討会を行っています。平成22年度の手術件数は別表のとおりで、合計217件(前年度比-42件)でした。手術件数はこれまで年々増加してきましたが、今年度はじめて減少となりました。鳥取県西部地区だけの医療圏ではこのあたりでほぼプラトーに達してきたようにも思います。その中で平成22年度のトピックスは何といっても手術支援ロボット(ダ・ヴィンチ)の導入です。肺癌と胸腺疾患を中心に平成23年1月から手術を開始し、本邦初の重症筋無力症に対するロボット手術を始め、3月までに8例(肺癌5例、胸腺3例)の手術を行い、すべて順調な経過でした。新たな低侵襲手術として、安全な手術手技の確立に努めていきたいと思います。以前から力を注いできた胸腔鏡手術は183件(84.3%)でした。特に肺癌を中心とした胸部悪性腫瘍に対しては、クオリティーの高い完全胸腔鏡下手術を行っており、小さな傷で、術後の経過も極めて良好です。医療の標準化と効率化を目指して活用してきたクリティカルパス医療もスタッフ全員に浸透しており、約80%の患者さんに適用されており、診療ガイドラインに沿った治療に努めています。また、他科との診療体制はでは呼吸器内科、放射線科と毎週行う肺がんカンファレンス、胸部疾患カンファレンスで、治療方針を確認し、緊密な連携を取っています。地域との連携では西部医師会と合同の胸部X線勉強会を継続すると同時に、医療機関における肺がん検診を導入し、肺がん検診の普及と精度向上に努めています。懸案だった肺がん地域連携パスの運用もようやく始まり、今後ますます地域との交流を活性化させる必要があると考えています。今後、われわれの行っている魅力ある呼吸器外科医療を内外に向けて発信して、医療圏の拡大とともに、有能な人材育成に全力をあげて行きたいと思います。

 (中村 廣繁)

表1.平成22年度(平成22年4月~平成23年3月)手術患者

疾患名手術患者数
原発性肺癌99(88)
転移性肺腫瘍26(25)
良性肺疾患11(8)
自然気胸19(19)
膿胸・胸膜炎14(14)
縦隔疾患19(16)
胸膜中皮腫0(0)
胸膜腫瘍0(0)
胸部外傷2(1)
手掌多汗症 9(9)
横隔膜疾患1(0)
その他10(1)
217(183)
(  )は胸腔鏡手術