3-2-19. 形成外科
形成外科は、熱傷、悪性腫瘍切除後の再建、外傷、瘢痕拘縮、難治性潰瘍、褥瘡、種々の先天奇形、良性腫瘍などの様々な組織欠損や醜状変形を対象として、整容あるいは機能的な観点に基づいて治療する外科系分野の一つです。現在、全国に272施設が日本形成外科学会より形成外科認定施設として認定されています。当科は、平成15年4月1日以来、この認可を得ており、形成外科学を教育し、形成外科専門医を育成できる施設です。
平成22年度に行った手術件数は358件と増加の一途をたどっています(図1)。手術分野は褥瘡・難治性潰瘍、腫瘍の切除と再建を筆頭に、熱傷、ケロイド、先天異常から美容外科手術に至るまで多岐に渡っています(図2)。形成外科手術には、非常に高度な技術が要求されます。その中でも最も難易度の高いE難度手術として、マイクロサージャリーによる遊離皮弁移植術があります。平成22年度には32例の遊離皮弁移植術を行い、100%の成功率を修めることができました。その内訳は、舌、中咽頭、下咽頭再建を主体に乳房再建や我々が開発した血管柄付き骨移植による上・下顎骨再建術などでした。世界のトップクラスの手術成績は98%前後と言われています。われわれは過去9年間に214例行い、99.5%と非常に高い成功率を修めています。近年注目すべき罹患疾病の動向として、糖尿病や末梢性血行障害患者が急激に増加していることが挙げられます。この変化を背景に、褥瘡・難治性潰瘍症例の手術件数がトップになっています。潰瘍病変は原疾患の診断と治療が不可欠で、今後益々、専門分野の先生との協力と真のチームアプローチが求められています。
われわれ形成外科は、様々な診療科とコラボレーションして手術を行うことを心がけています。その結果、平成22年度、他科と合同手術は30.7%にのぼりました。遊離皮弁移植術に限らず、様々な術式を提供することは質の向上は言うまでもなく、診療報酬の面でも貢献できます。頭頸部外科、救急災害科、耳鼻咽喉科、消化器外科、皮膚科、歯科口腔外科、脳神経外科、乳腺外科、循環器内科、心臓血管外科、整形外科、放射線科、脳神経内科、女性診療科、眼科、精神科、胸部外科などと、非常に多くの診療科と伴に外科治療を行うことができました。また、われわれは褥瘡予防、治療の中軸として活動しており、地域医療水準を支える努力をしています。褥瘡の診療体系は、医師、看護師、薬剤師、栄養師、理学療法士、作業療法士、介護士、他病院との連携など、多種の医療関係者の総合力が試される場であり、医師、特に今後を担う若い医師、学生に研修機会を与える必要があるものと考えています。
最近では、フェイスリフトを応用した陳旧性顔面神経麻痺形成術の開発や、眼瞼下垂症を中心に様々な眼瞼周囲アンチエイジング手術、乳輪乳頭や胸部の皮膚を温存した乳房再建や再生医療の臨床導入(培養表皮・脂肪細胞由来間葉系細胞移植)など、最先端の先進的診療に力を入れています。
形成外科は、ひとが“より良く生きるために”どうあるべきかを考え、日々努力しています。われわれは、頭頚部再建はもちろんのこと、乳房再建、急性期の重症顔面外傷、熱傷、フットケアを含む下肢血行障害、褥瘡、血管異常、再生医療、難治といわれるケロイドの治療などに対して強い関心を持っています。今後は、形成外科をさらに幅広く利用して頂くことができるように工夫が必要であり、普及に努めたいと思います。
図1:手術件数の推移
図2:平成22年度 疾患別手術内訳(合計358件)
(文責 中山 敏)