3-2-14. 放射線診療科群
放射線診療科群の診療業務は、CT、MRI、核医学等の各種の画像診断、画像診断機器・技術を応用したインターベンショナルラジオロジー(IVR)、そして放射線治療である。
画像診断部門
本院は元より、国内外の有数の関連施設で専門的なトレーニングを受けた優秀な放射線診断医により、CT、MRI、核医学を中心とした画像診断を行っている。16列・64列マルチスライスCTを利用した、骨、血管などの3次元表示や、脳、肺、肝臓などの臓器灌流量の測定、高磁場MRI(1.5T、3.0T)を用いた脳疾患、胸腹部疾患、骨盤内臓器疾患の高精度の形態診断に留まらず、拡散強調像、灌流強調像、磁化率強調像、神経メラニン画像などの機能画像による最先端の画像診断を行っている。核医学では、脳、心臓、呼吸器、内分泌等の機能診断の他に、FDGを用いたPET-CTでの全身の悪性腫瘍の診断を担当している。
画像診断読影件数
CT | 22,181 | ||||
MRI | 7,553 | ||||
RI 5,367 | PET | 1,736 | |||
骨 | 450 | 腫瘍 | 165 | 副腎 | 17 |
脳 | 513 | 腎 | 34 | その他 | 40 |
心臓 | 313 | 肺 | 26 | 総計 | 3,199 |
IVR部門
IVR-CTおよび頭部、心臓、腹部血管装置3台を駆使し、IVRに関して山陰地域の中心的な役割を果たしている。今年度4月には、循環器内科・脳神経外科・小児科・心臓血管外科と共同で先端画像・低侵襲治療センター(AIMIT: Advanced Imaging & Minimally Invasive Therapy Center)を院内に立ち上げ、Hybrid operating roomも新設されている。これにより、診療科の連携を強化し、更に質の高い低侵襲治療を提供できる態勢が整っている。治療手技は極めて広範囲わたっており、肝癌(原発性、転移性)などの悪性腫瘍に対する血管塞栓術、動注化学療法(リザーバ留置など)、閉塞性黄疸に対する経皮的ドレナージ・ステント留置、血管閉塞(下肢、腎など)に対する血管形成術(拡張術・ステント留置)、外傷や出血などの救急疾患における塞栓術、胃静脈瘤に対するBRTO、門脈圧亢進症に対するTIPS、血栓症・肺塞栓症に対する血栓溶解・IVCフィルター留置、転移性骨腫瘍や骨粗鬆症等による圧迫骨折に対する椎体形成術、大動脈瘤、急性大動脈解離に対するステントグラフト治療、血管奇形に対するカテーテル塞栓術あるいは硬化療法、肺腫瘍に対するラジオ波焼灼療法及び、透析シャント不全の血管形成等を行っている。
IVR件数
頭蓋内 | 0 | 頭頸部 | 19 |
肺 | 34 | 食道 | 4 |
肝 | 304 | 胆・胆道系 | 60 |
膵 | 8 | 腎 | 7 |
消化管 | 4 | 門脈系 | 20 |
骨盤 | 25 | 骨・軟部 | 27 |
外傷性出血 | 5 | 動脈 | 59 |
静脈 | 8 | 血管奇形 | 5 |
その他 | 165 | 総計 | 754 |
放射線治療部門
全身の悪性腫瘍の放射線治療を担当し、コンピューターを用いた三次元的治療計画を行い、機能と形態を温存した癌治療を実施している。化学療法を併用した集学的治療も行っている。昨年度更新された2台の高精度放射線治療装置を用い、IGRT(Image Guided Radiotherapy: 画像誘導放射線治療)、IMRT(Intensity Modulated Radiotherapy: 強度変調放射線治療)、呼吸同期照射、体幹部に対する定位放射線治療など高精度の放射線治療を実施している。根治治療としては、頭頸部の早期癌症例では、手術と遜色ない治療を行い、形態と機能が保たれる面で放射線治療が主体となる治療が勧められることがある。肺癌根治例では抗癌剤と組み合わせて治療することが標準となっている。定位放射線治療に関しては、早期癌については手術と同等の治療成績が得られるものと期待される。乳癌の乳房温存治療は、乳房部分切除手術に外部照射をあわせて行うのが一般的である。その他、子宮頸癌、悪性リンパ腫、食道癌、脳腫瘍 などの治療も行っている。密封小線源治療としてはIr(イリジウム)を使用したRALS(Remote After Loading System)と、前立腺癌にはI-123線源永久刺入療法を行っている。緩和治療として放射線治療は癌による疼痛緩和等にも重要な役割を果たしている。その他の特殊な治療としては非密封放射性ヨード内用療法があり甲状腺癌、バセドウ病を対象にしている。
当院の放射線診断・治療機器の整備は順調に進み、全国的に見ても充実した施設と言える。また、また国内外への留学研修を通して、放射線診断医および放射線治療医のレベルアップが着実に達成され、国内でも有数の放射線診療を提供できる施設であると自負している。
放射線治療(治療計画件数)
中枢神経 | 11 | 頭頸部 | 54 |
食道 | 22 | 胸部 | 56 |
乳腺 | 52 | 肝胆膵 | 24 |
消化管 | 15 | 女性生殖器 | 29 |
泌尿器 | 21 | 造血器 | 21 |
皮膚・軟部 | 6 | 良性 | 8 |
総計 | 319 |
(小川 敏英