3-2-12. 眼科

平成22年度の当科の現況を振り返ると、ここ数年間の手術件数は増加の一途をたどっているが、22年度も更に手術件数の大幅な増加をみた。20年度の総手術件数は2,184件であったが、21年度は2,427件(前年度比11%、243件の増加)22年度は2,727件(前年度比12%、300件の増加)となった。手術の内訳では、特に白内障関連手術と加齢黄斑変性などに対する硝子体内注射の件数が非常に増加していた。すでに上限であると思われた白内障関連手術でさらに件数が増加し900件を超え前年度比約12%増となった。特に眼科手術において基盤となる水晶体再建術の件数が伸びていたが、それにはクリティカルパスの導入・普及に伴う白内障手術入院の短期化と手術室における局所麻酔手術枠拡大,手術室での白内障手術機材の充実によるところが大きく,これにより平日はほぼ毎日白内障手術を主体に眼科手術が行われている状態となっている。
わが国ではここ数年、加齢黄斑変性や増殖糖尿病網膜症などの眼内新生血管を生じる疾患に対し、血管内皮増殖因子(VEGF;Vascular endothelial growth factor)を標的とした治療が行われるようになっている。当科でも加齢黄斑変性に対する従来の光線力学療法に加え、積極的に眼内新生血管を生じる疾患に対し抗VEGF療法を施行している。それにともなう手術(硝子体内注射)が盛んに行われるようになり、昨年を大幅に超えかなりの件数となった(456件)。今後高齢者や糖尿病網膜症の患者の増加に伴い、これらのニーズはますます増加することが予想され、手術件数増加が期待される。またその治療効果の評価のため網膜蛍光造影検査やOCTといった外来検査の増加も予想されるところである。

また当施設では臨床所見のみでは診断のつきにくい前眼部感染性疾患に対しReal-time PCRを用いた病原体の検出を積極的に行っている。Real-time PCRにより微量のサンプルからも病原体を検出でき、また治療効果の判定にも非常に役立っている。そのため県内のみならず近隣の県より診断・治療に苦慮する前眼部症例が多数紹介されてきており、山陰における難治性前眼部感染症治療センター的一面も持っている。そして角膜移植においては従来主流であった全層角膜移植に加えて、角膜内皮細胞を含む深層角膜側のみを移植する角膜内皮移植が注目されているが、当院でもこの角膜内皮移植を20年度より導入した。角膜内皮移植の利点は、全層移植に比べ、角膜上が無縫合であるため大きな乱視を生じないこと、縫合糸に関連した感染が生じないこと、拒絶反応のリスクを軽減できることにあり,今後その手術件数増加を見込んでいる。
以上、屈折矯正手術をはじめ前眼部から後眼部まで幅広い領域で偏りなく加療を行っているのが当科の特徴ともいえる。以上のように白内障のような基盤的手術のみならず、新規あるいは先端医療の導入も積極的に行っており、山陰における基幹施設としての役割を十分に果たしていると自負している。高齢化に伴い白内障・緑内障・加齢黄斑変性等の疾患は更に増加すると予想され、今後のさらなる患者数・手術件数の増加に対応するためには十分な設備投資と検査員等の増員・関連病院との連携などが不可欠である。(石倉涼子)

平成22年度手術件数
手術名手術件数
白内障関連手術929
網膜光凝固術336
硝子体関連手術307
硝子体内注射456
緑内障手術132
角膜抜糸術65
眼瞼形成手術64
エキシマレーザーによる角膜切除術56
斜視手術57
涙嚢鼻腔吻合術および涙道狭窄関連手術72
涙点プラグ挿入術19
網膜復位術39
角膜移植27
翼状片手術39
角膜潰瘍掻爬術18
角膜・強膜異物除去術22
虹彩光凝固術12
角膜・強膜縫合術11
その他66
合計2,727