3-2-17. 歯科口腔外科

当科は口腔、顎、顔面、頸部に発生する種々の疾患を対象とし、外科のみならず、口腔全般にわたる、いわゆる「口腔科」として対応しています。具体的な疾患としては、歯牙疾患はもとより、口唇・口蓋裂などをはじめとした先天異常、外傷、顎変形症、炎症、嚢胞、顎関節疾患、唾液腺疾患、神経および味覚異常、口腔粘膜疾患、口腔悪性新生物など多岐にわたります。

口唇・口蓋裂は外表奇形として最も高頻度に認められる疾患で、日本人は1/500人の頻度で発症します。当科で加療した口唇・口蓋裂患者は昭和42年の当科開設以来、650例に達しています。口唇・口蓋裂にて出生し、当科を紹介されると、まずは保護者へオリエンテーションを行います。時期をみて口唇形成術および口蓋形成術を行った後、言語聴覚士による言語治療を開始します。口唇・口蓋裂患者は上顎劣成長による咬合不全や審美障害をきたすため、矯正専門医による顎矯正も行っています。生後から成人になるまで当科で治療を行います。このような一貫した治療を行える施設は少なく、当院の特徴です。

近年顎変形症患者に対する顎矯正(上顎および下顎の外科的治療を含む矯正)は全国的に増加傾向にあります。当院は自立支援法顎機能診断施設基準の届出医療機関であるため、保険診療で顎矯正が行えます。鳥取県においては顎矯正の矯正治療と外科手術が同一施設でできのは当院だけです。

口腔がんの治療に関しては、機能温存を目的に、超選択的動注療法をはじめとする化学療法によって、可及的に最小限の手術あるいは保存療法を目指しています。機能温存が困難な場合でも、遊離皮弁や顎補綴、インプラントやエピテーゼを用いることで、機能および整容的な回復に努めています。

また当科は先進医療施設基準をみたしており、腫瘍、骨髄炎および外傷等による広範囲の顎骨欠損患者に対して、骨移植およびインプラント義歯の作成を先進医療で行うことができます。

齲蝕や歯周炎による歯牙の欠損に対しては、患者ニーズの高まりとともに、上顎洞挙動術(サイナスリフト)なども積極的に行い、デンタルインプラントを私費診療で行っています。近年インプラントによる咬合回復は一般的となってきましたが、それにともないトラブル(おとがい部の知覚異常や、上顎インプラント埋入による上顎洞炎など)も増えています。当科ではシムプラントシステムを用いることで、顎骨の重要な神経や空洞をさけて手術を行うことができます。また、このシステムに関しては、患者様により安全にインプラント治療を受けていただけるように、他院にもご利用いただいております。

近年、ストレス社会であることから、顎関節症は増加しています。当科では顎関節疾患患者に対し、専門外来でスプリント療法や薬物療法にて対応しており、また症例によっては顎関節洗浄を行うことで、良好な成績をあげています。

最後に、当科の歯科衛生士3名(口腔ケア認定士)が中心となり、入院患者(糖尿病、心・血管疾患患者、化学療法患者、嚥下障害患者や人工呼吸器管理患者)の口腔ケアを医師・看護師などの多職種の連携の下に積極的に行っております。病棟を挙げてこの口腔ケアにより口腔由来の合併症を予防し、入院患者様の早期退院に貢献しております。また糖尿病に関しては内分泌内科と密に連絡をとり、歯周病との関連を臨床研究しております。
当科の果たすべき役割は幅広く今後さらに重要になると思われます。

(田窪千子)

疾患別件数

疾患名 外来 入院
良性腫瘍 69 26
悪性腫瘍 26 57
外傷 88 20
炎症 103 35
嚢胞 77 21
先天奇形 25 25
顎変形症 16 5
顎関節疾患 125 3
神経疾患 33 0
粘膜疾患 112 4
唾液腺疾患 42 5
埋伏抜歯関連 244 17
インプラント関連 13 4
普通抜歯 56 9
歯牙疾患 474 2
義歯 119 0
その他 155 4
合計 1,777 237

入院手術件数

疾患名 手術件数
良性腫瘍 24
悪性腫瘍 49
外傷 18
炎症 25
嚢胞 24
先天奇形 26
顎変形症 5
顎関節疾患 2
神経疾患 0
粘膜疾患 5
唾液腺疾患 6
埋伏抜歯関連 18
インプラント関連 3
普通抜歯 9
歯牙疾患 7
その他 3
合計 222

口腔癌

病気分類 症例数(人) 5年生存率(%)
1期 45 93.3
2期 48 91.7
3期 20 89.1
4期 81 66.2
合計 194 81.4
平成6年~平成16年