3-2-09. 整形外科

整形外科が扱う疾患は、四肢・脊椎の外傷、骨関節変性疾患、リウマチ性疾患、脊椎脊髄疾患、末梢神経疾患、骨軟部腫瘍、代謝性骨疾患など多岐にわたる。当科では整形外科のあらゆる分野に対応できるよう、各分野の専門スタッフを揃え診療体制を整えている。

<外来>

平成21年度の外来診療については、昨年同様、新患は月・水・金曜日、再診は月~金曜日まで毎日対応した。専門外来としてリウマチ性疾患、脊椎脊髄疾患、末梢神経障害、骨軟部腫瘍、小児整形、股関節、膝関節、肩関節、手外科、スポーツ障害、骨代謝性疾患(主として骨粗鬆症)を開設し、一般外来を含めて受診患者の診療にあたった。平成21年度の新患患者は1,065名、延べ外来患者数は22,370名であった。

<入院>

整形外科・リウマチ科病棟は主として8階A病棟を使用しているが、患者の年齢、重症度を勘案して小児病棟、高次集中治療病棟なども利用している。近年は入院患者における高齢者の割合が増加してきており、早期社会復帰を目指した術後リハビリテーションが重要であると考えられる。当科では一昨年度より大腿骨頸部骨折に対する地域連携パスを米子市周辺のリハビリテーション病院を中心とした医療機関と提携して行い、早期離床を目指している。平成21年度の新入院患者は661名、平均在院日数は21.99日であった。

<手術>

平成21年度の手術件数は562件であった。件数は前年度より減少しているものの、多発外傷が多い印象であり、手術部・麻酔科の協力を得つつ手術を行っている。

  1. 骨折外傷手術:緊急手術・多発外傷・高エネルギー外傷の手術が増加している。
  2. 脊椎手術:最近の傾向として、高齢者の手術件数が増加しつつある。以前と比較して手術から離床までの期間が短縮されてきており、手術技術や固定具の進歩が挙げられる。腰椎椎間板ヘルニアに対する内視鏡視下手術機器も整備されており、患者にとってより低侵襲の手術を選択することも可能となった。また、近隣病院からの紹介患者数も多く、年々手術数も増加傾向にある。
  3. 人工関節・骨切り術:関節疾患に対する手術では、高齢者では人工関節置換術が多いが、若年者ではなるべく骨切り術などの自家骨を用いた関節温存手術を行うようにしている。人工関節再置換についても徐々に手術数が増加してきており、骨移植(自家・同種)や人工関節補強材を併用しつつ対処している。
  4. 感染症手術:近年は糖尿病などを有する患者や免疫低下状態の患者が増加し、骨関節や軟部組織の感染を来たして紹介されてくる症例も増加傾向にある。重篤な全身状態で搬送されることが多いため、救急災害科などとの連携を図りつつ治療を行っている。
  5. 手外科・マイクロサージャリ―・形成外科的手術:本年度前半は担当医が研修で不在であったため手術件数は少なかったが、後半は手術件数が増加し、ほぼ昨年度と同等の手術件数となった。近隣病院で手外科を専門に行う施設が少ないため、紹介患者が多く、緊急手術の件数も多かった。
  6. リウマチ性疾患に対する手術:生物学的製剤による治療進歩により、手術対象となる患者は減少している。関節形成手術が多かった。
  7. 骨軟部腫瘍手術:骨軟部腫瘍では、良性腫瘍に対して切除術、悪性腫瘍に対しては手術+補助療法(化学療法・放射線照射)を施行している。腫瘍用人工関節の進歩、骨延長、マイクロサージャリ―技術による骨移植や複合組織移植といった手法が確立され、患肢温存手術を選択する機会が増加し、四肢切断を施行する症例は減少した。
  8. 関節鏡視下手術:膝、肩、肘など鏡視下手術の技術が進歩し、低侵襲手術としてスポーツ選手や肩関節外傷・疾患に対する手術件数が増加している。

<今後の展望>

当科を受診される患者は、他科的疾患を合併していることが多く、近隣病院より合併疾患の存在のため紹介される場合もある。そのため、患者の全身機能評価を踏まえて、EBMをふまえながら最善の治療を提供していく必要がある。また、治療に関してリハビリテーション部や近隣病院と情報交換を密に行い、機能回復に向けた連携体制を今後より一層充実させていく努力が必要である。

平成21年度の手術件数とその内容

骨折 64
脊椎 146
人工関節 72
骨切り術 7
感染症 24
手外科・マイクロ・形成外科的手術 29
関節リウマチ 6
骨軟部腫瘍 38
関節鏡視下手術(膝・肩・その他) 62
末梢神経障害 17
外傷・その他 97
562(重複あり)

(文責:遠藤 宏治)