3-2-08. 胸部外科
胸部外科
胸部外科は開設されて6年目に入りました。現在、スタッフは7名になり、手術部やICUなど各部署での仕事を兼ねながら、日常診療をしています。本年度は初期臨床研修制度の変化とともに外科の研修医が減少し、日々の臨床へ大きく影響を及びました。その中で診療活動は毎朝7時45分の始動を原則とし、曜日毎に回診、肺がんカンファレンス、術前術後検討会、抄読会を行っています。平成21年度の手術件数は別表のとおりで、合計259件でした。手術件数は年々増加していますが、手術待ちの患者も同様に増える一方で、手術室の空き枠を探し、キャンセル待ちをかけて手術を行う状況が続いています。手術はハイビジョンカメラを用いた胸腔鏡手術が中心で80%以上を占めています。対象疾患の主体は胸部悪性腫瘍ですが、平成21年度は原発性肺がん109件、転移性肺腫瘍31件の計140件でした。患者は鳥取県西部地区のみならず、鳥取県中部、鳥取県東部、島根県東部、岡山県北部と周辺の広い地域から集まってきており、特に胸腔鏡手術を希望して来られる患者が増加しています。現在、手術支援ロボット“ダビンチ”の導入に向けて準備中ですが、“ダビンチ“のメリットが最大に生かせ、安全に手術ができるように工夫することが課題になっています。
クリティカルパス医療はスタッフ全員に浸透しており、約80%の適用率になっています。診療ガイドラインに沿った治療ができるように、回診やカンファレンスを通じて意識統一を図っています。また、他科との診療体制は年々確立されてきており、呼吸器内科、放射線科と定期的に肺がんカンファレンス、胸部疾患カンファレンスを行い、常に緊密な連携を取っています。地域との連携も重要な課題で、西部医師会と合同の胸部X線勉強会を定期的に開催しており、肺がんの最新診断や治療法の紹介を続けています。最近は関連病院への手術支援の回数も増え、山陰地区全体の呼吸器外科医療の向上と若手外科医の育成に向けて整備を図っています。今後に向けてはがん緩和医療に向けての診療連携、肺がん地域連携パスの運用などまだまだ課題も多く、さらに検討を重ねていく必要があります。
呼吸器疾患、特に肺がんは今なお増加の一途で、当院の診療体制をさらに安定させ、有能な人材育成に全力をあげていく必要があると痛感しています。学会発表、講演会活動、論文作成も積極的に行なってきましたが、これらを継続して魅力ある呼吸器外科医療を内外に向けて発信していきたいと考えています。
(中村 廣繁)
表1. 平成21年度(平成21年4月~平成22年3月)手術患者
疾患名 | 手術患者数 |
---|---|
原発性肺癌 | 109(92) |
転移性肺腫瘍 | 31(29) |
良性肺疾患 | 16(15) |
自然気胸 | 30(27) |
膿胸・胸膜炎 | 14(13) |
縦隔疾患 | 22(18) |
胸膜中皮腫 | 1(0) |
胸膜腫瘍 | 2(2) |
胸壁疾患 | 11(1) |
胸部外傷 | 2(1) |
手掌多汗症 | 6(6) |
横隔膜疾患 | 2(1) |
その他 | 13(1) |
計 | 259(206) |
( )は胸腔鏡手術