3-2-11. 泌尿器科

近年の急激な高齢化社会の到来に伴い,泌尿器科の代表的疾患である,前立腺肥大症,前立腺癌,過活動膀胱,尿失禁などの増加に加え,他科疾患による泌尿器科的処置を必要とする症例も増加しつつある。このような状況の中で,我々泌尿器科に求められている役割はますます多岐にわたり,さらに高度化してきている。また,他科との密接な連携により診療をすすめていくことが今まで以上に必要とされている。このような状況に対応すべく,当科では診療および研究体制の一層の充実に努めている。

外来診療では,月曜日から金曜日まで毎日,新患,再診を行い,月,水,金には院内の透析患者,外来透析患者への透析を担当している。外来患者では週1回のカンファレンス,入院患者では週2回のカンファレンスを通じて診療方針を決定し,最新のエビデンスに基づいて診療を行うように努めている。

治療面では,脊髄損傷等が原因の過活動型の神経因性膀胱患者に対するボツリヌス毒素膀胱壁内注射を行い,尿失禁の軽減,自己導尿回数の減少等の良好な成績と高い安全性を得ている。現在,その適応を基礎疾患のない過活動膀胱患者にも拡大しており,高い治療効果と安全性を得ている。また,尿路上皮癌に対する多剤併用全身化学療法や,ホルモン抵抗性前立腺癌に対する全身化学療法を積極的に施行し,良好な成績を得ている。また,他疾患が原因の尿管狭窄や水腎症に対して,尿管ステント留置や腎瘻造設を行い,腎機能の改善や生活の質の向上に努めている。

手術面では,腎尿管結石に対しては,H20年9月に導入された最新鋭の体外衝撃波による破砕術を中心に,経尿道的手術,経皮的手術に関しても以前と同様に施行している。前立腺肥大症に対する経尿道的手術に関しては,バイポーラ電気メスを使用した機器を使用しており,手術中の合併症軽減につながっている。またホルミニウムレーザーを使用した前立腺切除も行っている。尿失禁に対する尿道つり上げ術は最新の術式を導入した。悪性腫瘍に対する手術に関しては,膀胱癌に対する経尿道的手術はもちろんのこと,浸潤癌に対しては尿路変更を伴う開放手術を施行しており,特に代用膀胱適応症例に対しては,積極的にその術式を導入している。前立腺癌に対しては根治的前立腺全摘術を行っているが,代替療法である,密封小線源療法も放射線科と共同で積極的に行っている。腎や尿管などの上部尿路悪性腫瘍に対しては,腹腔鏡下摘除をスタンダード治療とし,低侵襲手術を目指して努力している。この腹腔鏡下手術に関しては,良性疾患である腎盂尿管移行部狭窄症に対しても積極的に施行し,良好な成績を得ている。

研究面では,悪性腫瘍,神経因性膀胱,腹腔鏡手術等に関する発表を国内外で行うとともに,ボツリヌス毒素膀胱壁内注射,小児夜尿症に対するアラーム治療,慢性骨盤痛症候群等に対する電気刺激療法等の臨床に直結した研究に取り組んでいる。またホルモン補充療法などの,高齢化社会で今後その重要性が増すと考えられるテーマにも積極的に取り組んでいる。

我々は診療,研究両面から更なる質の向上を目指し,地域への貢献ができるように,これからの責務を果たしていきたいと考えている。

(瀬島 健裕)