3-3-21. 感染制御部
感染制御部は鳥取大学医学部附属病院における質の高い感染症診療の実践を目指し,さまざまな感染症の診断・治療・感染制御を一貫してサポートする目常業務を行うとともに,感染症予防(ワクチン接種)にも積極的に取り組んでいる。また,総合診療科外来において,HIV感染症患者の外来診療や海外渡航者向けワクチン接種外来を担当している。
今後の展望として,感染症診療・感染制御・感染症予防に精通する医療従事者(感染症対策専門家)の養成に一層尽力したいと考えている。
今後の展望として,感染症診療・感染制御・感染症予防に精通する医療従事者(感染症対策専門家)の養成に一層尽力したいと考えている。
1.診療科横断的感染症診療
診療科・部門からの多数のコンサルテーション(診断・治療・感染制御)に随時対応するとともに,毎週木曜日に感染症診療カンファレンスを開催し,MRSAや抗菌薬耐性緑膿菌などの抗菌薬耐性菌が新規に検出された症例,血液培養検査で病原微生物が検出された症例,抗菌薬療法が遷延している症例などについて,医師,薬剤師,看護師,臨床検査技師のチーム医療体制のもと,適切な診断・治療・感染制御を推進した(表1)。
HIV感染症妊婦の分娩は本院で初めての経験であったが,本件に特化した診療・感染対策チーム(医師,看護師,助産師,臨床心理士,精神保健福祉士,臨床心理士など)を結成し,チーム医療体制のもと,HIV感染症の治療,分娩における感染対策,母児の健康管理等にあたった。
HIV感染症妊婦の分娩は本院で初めての経験であったが,本件に特化した診療・感染対策チーム(医師,看護師,助産師,臨床心理士,精神保健福祉士,臨床心理士など)を結成し,チーム医療体制のもと,HIV感染症の治療,分娩における感染対策,母児の健康管理等にあたった。
表1 2008年の感染症診療カンファレンスの実績
対 象 | 症例数 | |
---|---|---|
抗菌薬耐性菌新規検出症例 | 診断への介入 |
32 |
治療への介入 | 94 | |
感染制御への介入 | 208 | |
そのほか | 131 | |
血液培養検査陽性症例 | 診断への介入 | 72 |
治療への介入 | 91 | |
そのほか | 88 | |
MRSA感染症治療薬長期投与症例 |
22 | |
リネゾリドによる抗菌薬療法が行われた症例 | 55 |
2.高度感染症診療
【1】病原微生物を検出する技術
適切な抗菌薬療法を実践するために,日常の臨床検査では明らかにすることが困難な病原微生物の検出または同定に取り組んできた。平成20年度は鳥取県西部圏域の医療機関において起因菌の同定が困難であった細菌性髄膜炎の症例において,遺伝子検査でCampylobacter fetusの同定に成功し,適切な抗菌薬療法の推進に協力した。
【2】病原微生物の遺伝子型別
産科(3A)病棟において7月10日~9月17日にかけて妊婦5名が血流感染症を断続的に発症した事例を受け,検出されたAcinetobacter lwoffii妊婦由来2株と環境由来3株)でパルスフィールド電気泳動法による遺伝子解析を実施し,それらの伝播経路を解明した。
【3】薬物血中濃度モニタリング(TDM)の技術
薬剤部との連携のもと,阻SA感染症治療薬(バンコマイシン170症例,テイコプラニン18症例,リネゾリド21症例,アルベカシン16症例)と抗真菌薬(ボリコナゾール14症例)のTDMを実施し,抗菌薬・抗真菌薬の適切な使用に向けた取り組みを行ってきた(TDM実施症例数は2008年の実績を示す)。バンコマイシン,テイコプラニン,リネゾリド,アルベカシンのTDM実施率は,それぞれ,96.6%(170/176症例),100%(18/18症例),38.2%(21/55症例),76.2%(16/21症例)であった。ボリコナゾールのTDM実施率は77.8%(14/18症例)であった。
適切な抗菌薬療法を実践するために,日常の臨床検査では明らかにすることが困難な病原微生物の検出または同定に取り組んできた。平成20年度は鳥取県西部圏域の医療機関において起因菌の同定が困難であった細菌性髄膜炎の症例において,遺伝子検査でCampylobacter fetusの同定に成功し,適切な抗菌薬療法の推進に協力した。
【2】病原微生物の遺伝子型別
産科(3A)病棟において7月10日~9月17日にかけて妊婦5名が血流感染症を断続的に発症した事例を受け,検出されたAcinetobacter lwoffii妊婦由来2株と環境由来3株)でパルスフィールド電気泳動法による遺伝子解析を実施し,それらの伝播経路を解明した。
【3】薬物血中濃度モニタリング(TDM)の技術
薬剤部との連携のもと,阻SA感染症治療薬(バンコマイシン170症例,テイコプラニン18症例,リネゾリド21症例,アルベカシン16症例)と抗真菌薬(ボリコナゾール14症例)のTDMを実施し,抗菌薬・抗真菌薬の適切な使用に向けた取り組みを行ってきた(TDM実施症例数は2008年の実績を示す)。バンコマイシン,テイコプラニン,リネゾリド,アルベカシンのTDM実施率は,それぞれ,96.6%(170/176症例),100%(18/18症例),38.2%(21/55症例),76.2%(16/21症例)であった。ボリコナゾールのTDM実施率は77.8%(14/18症例)であった。
3.海外渡航者向けワクチン接種専門外来
総合診療科外来において,HIV感染症患者の外来診療や海外渡航者向けワクチン接種外来を担当した。
4.感染制御(病院感染対策)
【1】サーベイランス
第一外科・第二外科診療群において手術部位感染症統合サーベイランスを継続したほか,国立大学病院統一サーベイランスとして,8~9,月にICUおよびHCUにおける人工呼吸器関連肺炎サーベイランスを実施した。また,抗菌薬耐性菌新規検出状況(解析データ),病棟別菌検出状況,血液培養菌検出状況,抗酸菌検出状況などの病原体サーベイランス,抗菌薬使用状況調査,針刺し・切創・粘膜曝露サーベイランスを継続した。
【2】インフェクションコントロールチーム(ICT)による病棟ラウンド
標準予防策・感染経路別予防策の遵守状況を検証するために,月ごとに病棟を決めてエCTのメンバーで病棟ラウンドを継続し,当該病棟に結果のフィードバックを行った。全病棟を一巡したところで感染制御部ニュースレターを通して結果を公開し(5月1日および10月29日の2回発行),感染対策の質の向上に努めた。
【3】職員向けワクチン接種プログラムの実践
職員を対象に,B型肝炎,麻疹,水痘,風疹,ムンプス,インフルエンザのワクチン接種を行った。
【4】「病院感染対策のためのマニュアル」の策定と改訂
平成20年度は,医師が届出を行う疾患(改訂),飛沫予防策(改訂),HIV感染防止対策(新規),微生物などによる汚染を考慮した医薬品の安全管理(新規)についてマニュアルの策定または改訂を行った。また,超音波ネブライザーの使用などに関する手順書の作成なども行った。
【5】感染制御部ニュースレターの発行
平成20年度は感染制御に関するニュースレターを6回発行した。
【6】感染事例への対応
診療科・部門からの感染制御に関する多数のコンサルテーションに随時対応しているが,詳細な疫学調査等を実施して院内伝播防止策を講じた事例やおもな警戒事例として,平成20年度は,インフルエンザ(2事例),ノロウイルス感染症(1事例),流行性角結膜炎(5事例),多剤耐性緑膿菌感染症(1事例),百日咳(4事例),腸管出血性大腸菌感染症(2事例),ESBL産生菌感染症(1事例),結核(4事例),アシネトバクター血流感染症(1事例),針刺し(2事例)に対応した。
第一外科・第二外科診療群において手術部位感染症統合サーベイランスを継続したほか,国立大学病院統一サーベイランスとして,8~9,月にICUおよびHCUにおける人工呼吸器関連肺炎サーベイランスを実施した。また,抗菌薬耐性菌新規検出状況(解析データ),病棟別菌検出状況,血液培養菌検出状況,抗酸菌検出状況などの病原体サーベイランス,抗菌薬使用状況調査,針刺し・切創・粘膜曝露サーベイランスを継続した。
【2】インフェクションコントロールチーム(ICT)による病棟ラウンド
標準予防策・感染経路別予防策の遵守状況を検証するために,月ごとに病棟を決めてエCTのメンバーで病棟ラウンドを継続し,当該病棟に結果のフィードバックを行った。全病棟を一巡したところで感染制御部ニュースレターを通して結果を公開し(5月1日および10月29日の2回発行),感染対策の質の向上に努めた。
【3】職員向けワクチン接種プログラムの実践
職員を対象に,B型肝炎,麻疹,水痘,風疹,ムンプス,インフルエンザのワクチン接種を行った。
【4】「病院感染対策のためのマニュアル」の策定と改訂
平成20年度は,医師が届出を行う疾患(改訂),飛沫予防策(改訂),HIV感染防止対策(新規),微生物などによる汚染を考慮した医薬品の安全管理(新規)についてマニュアルの策定または改訂を行った。また,超音波ネブライザーの使用などに関する手順書の作成なども行った。
【5】感染制御部ニュースレターの発行
平成20年度は感染制御に関するニュースレターを6回発行した。
【6】感染事例への対応
診療科・部門からの感染制御に関する多数のコンサルテーションに随時対応しているが,詳細な疫学調査等を実施して院内伝播防止策を講じた事例やおもな警戒事例として,平成20年度は,インフルエンザ(2事例),ノロウイルス感染症(1事例),流行性角結膜炎(5事例),多剤耐性緑膿菌感染症(1事例),百日咳(4事例),腸管出血性大腸菌感染症(2事例),ESBL産生菌感染症(1事例),結核(4事例),アシネトバクター血流感染症(1事例),針刺し(2事例)に対応した。
5.職員向け研修会の開催ならびに地域貢献
職員向け研修会(特定の診療科・部門や病棟を対象に実施したミニレクチャー等は除く)の開催,国立大学附属病院感染対策協議会(国大協)ならびに地域貢献に関するおもな活動実績を表2に示す。本年度より,鳥取・院内感染対策セミナー(全職員向け研修会)への職員の参加が急増したことは特筆すべきである(第4回323名,第5回417名,第6回252名)。また,新たな取り組みとして, eラーニングシステムを活用した職員研修のコンテンツ(標準予防策と感染経路別予防策など)を作成し,試用を開始した。
地域貢献事業のうち,第2同県西部感染制御カンファレンスでは96名,平成20年度鳥取県院内感染対策講習会では61名の県内医療従事者が参加した。
地域貢献事業のうち,第2同県西部感染制御カンファレンスでは96名,平成20年度鳥取県院内感染対策講習会では61名の県内医療従事者が参加した。
表2 職員向け研修会の開催,国大協ならびに地域貢献に関するおもな活動実績
年月日 |
区分 |
活動実績 |
---|---|---|
平成20年4月1日 | 職員研修 | 新採用者オリエンテーションでの教育 |
5月17日 | 地域貢献 | 第2同県西部感染制御カンファレンスの開催 |
5月30日 | 地域貢献 | 「サンフォード感染症治療ガイド」を活用しよう!講演会の開催 |
6月13日 | 研修医教育 | 第1回感染制御講習会の開催 |
職員研修 | 第4回鳥取・院内感染対策セミナーの開催 | |
6月19~20日 | 国大協 | 中国・四国地区ブロック別研修会への参加 |
7月31日~9月30日 | 国大協 |
国立大学病院統一サーベイランスの実施 |
10月17日 | 国大協 |
旭川医科大学に対して大学間相互チェック |
10月31日 | 研修医教育 | 第2回感染制御講習会の開催 |
職員研修 | 第5回鳥取・院内感染対策セミナーの開催 | |
11月1日 | 地域貢献 | 平成20年度鳥取県院内感染対策講習会の開催 |
11月20~21日 | 国大協 | 国立大学附属病院感染対策協議会への出席 |
11月25日 | 国大協 |
秋田大学による大学間相互チェック |
12月15日 | 職員研修 | 医療安全への取り組みについての報告研修会での報告 |
平成21年2月16日 | 職員研修 | 医療安全への取り組みについての報告研修会での報告 |
3月6日 | 職員研修 | 第6回鳥取・院内感染対策セミナーの開催 |
(堀井俊伸)