3-2-04. 精神科

精神科神経科は、閉鎖病棟33床(隔離室3床)開放病棟9床を有する。精神保健福祉法(精神保健及び精神障害者福祉に関する法律)に基づいて運営される点が他の病床と異なる。入院患者は,代表的な精神疾患である統合失調症の割合が比較的少なく,感情障害と神経症性障害が多いのが特徴である。外来部門では、新患者数・延べ外来患者数共に近年増加傾向にある。病棟部門では、延べ入院患者数は、ほぼ横ばいに推移している。ここ数年医療保護入院患者の割合が増加しており、H19年1月に33床を閉鎖病棟化し、措置入院の受け入れも可能になったため、H20年度からは鳥取県西部圏域の精神科救急システムにも参画している。

以下、以下主な精神疾患についての当科での対応を示す。

統合失調症
:従来の多剤大量使用の薬物療法を見直し、近年発売されている非定型抗精神病薬を積極的に用いるように心掛けている。非定型抗精神病薬は従来型抗精神病薬に比べ、これまで改善が難しいとされた陰性症状に有効であるとされている上に、副作用発現が少ないのが特徴である。非定型抗精神病薬を上手く使いこなすことで、単に精神症状を軽減させるのみならず、副作用発現にも十分配慮し患者本人の薬の飲み心地や生活の質を十分考慮した治療を行うことを目指している。日常生活や社会復帰へのリハビリテーションとして、認知矯正療法を平成17年度より日本で最初に取り入れており、近隣病院とも連携しながら積極的な支援を行っている。

うつ病
:病相が遷延化し薬物抵抗性の難治例が存在するが、これらの症例を近隣の医療機関から積極的に受け入れている。難治例に対しては、抗うつ薬の増強療法、無けいれん性電気けいれん療法などを症例に応じて使い分け、効果をあげている。最近は他院から無けいれん性電気けいれん療法目的に紹介されてくる症例が増加傾向となっている。また近年社会問題化している自殺の問題については、保健所や精神保健福祉センターなどと連携をとりながら希死念慮の強い患者への危機介入や地域住民を対象としたうつ病の啓発活動も行っている。

摂食障害:
極端な食事制限を行い、著しいるいそうをきたす神経性食思不振症と、過食嘔吐を主症状とする神経性過食症とが代表であるが、外来では個人精神療法や薬物療法を主に行っている。るいそうが著しい場合には、身体科の協力を時に仰ぎながら入院治療を導入している。入院治療においては、適宜行動制限を加える行動療法的なアプローチを行い、食行動異常とボディイメージの修正を目標とした治療を行っている。

アルコール依存
:十分な断酒意志が認められる場合は、入院した上での断酒治療プログラムに導入している。2ヶ月程度の入院期間中に、酒害教育、グループミィーテング、断酒会参加などを行いながら、これまでの自分自身の飲酒行動を振り返るとともに、飲酒欲求をセルフコントロールできるように促していくものである。

この他にも、総合病院の精神科という性質上,リエゾン診療が当科診療に占める比重も高くなっている。救命救急センターに搬送された自殺企図患者に対しての精神医学的診断と治療方針決定や、術後せん妄のコントロールなど、他診療科からの要請があれば、積極的に当該科と連携を取りながら対応している。また、平成17年度より院内の緩和ケアグループにも加わり、精神医学的な視点からケアをおこなっている。

近年増加傾向にある発達障害への対応も含め、今後も時代の要請に沿いながら,大学の精神科としての特色・独自性をどのように発揮していくかという大きな課題に向かって医局員一丸となって努力していきたい。

(神尾 聡)