3-2-23. 脳神経小児科

当教室は、小児神経疾患の専門診療機関として当地の医療を担っている。同時に療育や乳幼児健診などの小児保健事業の発展に貢献してきた。当教室の扱っている疾患内容は、精神遅滞、学習障害、注意欠陥・多動性障害、自閉症、などの発達障害、てんかん、周産期脳障害、筋ジストロフィーや重症筋無力症などの筋疾患、末梢神経障害、脳腫瘍、先天代謝異常、先天奇形などである。けいれん重積や急性脳症などの急性神経疾患、重症心身障害児の肺炎などによる呼吸不全の管理・治療も行っている。障害児の療育やリハビリテーションにおいては、 学校・幼稚園、福祉施設、市町村や県と連携して取り組んでいる。また、地域の小児保健事業にも積極的に関わり、発達障害の早期発見や指導に努めている。これらの医療と並行して、小児神経疾患の病因・病態の解明や新しい治療法の開発の研究を行っている。また、国内有数の小児神経学の臨床研修及び研究機関として本邦の小児神経学発展に重要な役割を果たしてきている。

[外来部門]

外来患者の多くは鳥取・島根が中心であるが、中国地方全般から紹介患者が多い。紹介は医療機関以外に地域の健診や学校からも多い。小児神経の一般外来のほか、患者家族への十分な指導が必腰な次のような疾患に対して取り組んでいる:乳幼児期の発達障害児を対象として発達外来、小児期の発達障害児を対象とした療育外来、小児の心身症を対象とした心療外来。特殊検査として、神経生理学的検査、知能検査を含む神経心理検査、神経変性疾患の確定診断に必要なリソゾーム酵素活性などを行っている。

[入院部門]

入院は鴇取・島根からが主体であるが、中国地方からの紹介入院も多い。けいれん性疾患の入院が最も多く、その中ではけいれん重積の治療、発作および脳波の評価、難治性てんかんの治療、の順に多かった。ビデオ脳波による発作の評価により発作型の診断を正確に行ない治療に役立てている。自己免疫性末梢神経障害に対して、血漿交換やγグロブリンなどの治療を行っている。先天代謝異常に対して、酵素活性の測定や遺伝子解析などで正確な診断および、近年酵素補充療法が可能となったPompe病、Hunter症候群に対して酵素補充療法を行っている。重症心身障害児や稗経筋疾患児の呼吸管理・栄養管理や急性感染症による増悪時の治療が近年増加傾向にある。水頭症や脳腫瘍などの脳外科的疾患を脳外科医と共同で診療している。その他、脳外科・整形外科・外科・小児科など他科入院の神経疾患児のケアも共同診療でサポートしている。

疾患別入院患者

疾患別入院患者(平成20年度)
疾患名 入院患者数 疾患名 入院患者数
けいれん性疾患 53 脳炎・脳症 2
筋疾患 18 脳血管障害 4
代謝・変性疾患 104 脊髄疾患 2
発達障害 26 脳腫瘍 2
末梢神経疾患 7 心身症・ヒステリー 4
先天奇形・染色体異常 8 急性疾患・感染症 86
脱髄性疾患 3 その他 7

[その他]

育児や発達障害、てんかんについての講演を多数行ない、地域住民に対する啓蒙活動を積極的に行っている。
小児神経の知識と技量向上を目的に「鳥取大学小児神経学人門講座」を開催し、全国から多数の小児科医が参加した。
(井上岳彦)