3-2-18. 形成外科

形成外科は、熱傷、悪性腫瘍切除後の再建、外傷、瘢痕拘縮、難治性潰瘍、褥瘡、種々の先天奇形、良性腫瘍などの様々な組織欠損や醜状変形を対象として、整容的あるいは機能的な観点に基づいて治療する外科系分野の一つです。現在、全国に208施設が日本形成外科学会より形成外科認定施設として認定されています。平成15年4月1日以来、この認可を得ており、形成外科学を教育し、形成外科専門医を育成できる施設です。
当科が行った手術は、悪性腫瘍の再建を筆頭に良性腫瘍、ケロイド、褥瘡、難治性潰瘍から美容手術に至るまで多岐に渡っています。形成外科手術には、非常に高度な技術が要求されます。その中でも特に難易度の高いものとして、マイクロサージャリーによる遊離皮弁移植術があります。平成19年度には21例の遊離皮弁移植術を行い、100%の成功率を納めることができました。その内訳は、舌、中咽頭、下咽頭再建を主体に、乳房再建や我々が開発した血管柄付き骨移植による上顎骨再建術などでありました。世界のトップクラスの手術成績は95%以上と言われています。われわれは過去6年間に130例超行い、99%の成功率を納めています。
われわれ形成外科は、様々な診療科とコラボレーションして手術を行うことを心がけています。その結果、平成19年度、他科と合同手術は35%にのぼりました。遊離皮弁移植術に限らず、様々な術式を提供することは、質の向上は言うまでもなく、診療報酬の面でも貢献できます。耳鼻咽喉科・頭頚部外科、救急災害科、循環器内科、脳神経内科、皮膚科、口腔外科、脳神経外科、眼科、女性診療科、胸部外科、放射線治療科、消化器外科、心臓血管外科、整形外科と、非常に多くの診療科と伴に外科治療を行うことができました。また、われわれは褥瘡予防、治療の中軸として活動しており、地域医療水準の底辺を支える努力をしています。褥瘡の診療体系は、医師、看護師、薬剤師、栄養師、理学療法士、リハビリ、介護士、他病院との連携など、多種の医療関係者の総合力が試される場であり、医師、特に今後を担う若い医師、学生に研修機会を与える必要があるものと考えています。
形成外科は、ひとが“より良く生きるために”どうあるべきかを考え、日々努力しています。われわれは、頭頚部再建はもちろんのこと、乳房再建、急性期の重症顔面外傷、熱傷、フットケアを含む下肢血行障害、褥瘡、血管異常、再生医療、難治といわれるケロイドの治療などに対して強い関心を持っています。今後は、形成外科をさらに幅広く利用して頂くことができるように工夫が必要であり、普及に努めたいと思います。