3-2-10. 泌尿器科

泌尿器科年報(平成20年度)

近年の急激な高齢化社会の到来に伴い泌尿器科の代表的疾患である、前立腺肥大症、前立腺癌、過活動膀胱、尿失禁などの増加に加え、他科疾患による泌尿器科的処置を必要とする症例も増加しつつある。このような状況の中で、我々泌尿器科に求められる役割はますます多岐にわたり、さらに高度化してきている。また、他科との密接な連携により診療をすすめていくことが今まで以上に必要とされている。このような状況に対応すべく、当科では診療および研究体制の一層の充実に努めている。
外来診療では、月曜日から金曜日まで毎日、新患、再診を行い、月、水、金には院内の透析患者、外来透析患者への透析を担当している。外来患者では、週1回のカンファレンス、入院患者では週2回のカンファレンスを通じて診療方針を決定し、最新のエビデンスに基づいて診療を行うよう努めている。
治療面では、脊髄損傷等が原因の過活動型の神経因性膀胱患者に対するボツリヌス毒素膀胱壁内注射を行い、尿失禁の軽減、自己導尿回数の減少等の良好な成績と高い安全性を得ている。現在、その適応を基礎疾患の無い過活動膀胱患者にも拡大しており、高い治療効果と安全性を得ている。また、尿路上皮癌に対する新規抗癌剤を用いた全身化学療法や、ホルモン抵抗性前立腺癌に対する全身化学療法を導入し良好な成績を得ている。また、他疾患が原因の尿管狭窄や水腎症に対して尿管ステント留置や腎ろう造設を行い、腎機能の改善や生活の質の向上に努めている。
手術面では、腎尿管結石に対する経尿道的手術、経皮的手術や膀胱癌、前立腺癌に対する経尿道的手術、尿失禁に対する手術等をこれまでと同様に施行するとともに、前立腺肥大症に対するホルミウム・ヤグ・レーザーを使用した経尿道的手術や腎尿管結石に対する軟性尿管鏡を使用した経尿道的手術を導入し、手術の低侵襲化や治療適応の拡大を積極的に進めている。また、腎、腎盂、尿管等の上部尿路癌に対する腹腔鏡下、後腹膜鏡下手術や腎盂尿管移行部狭窄症に対する後腹膜鏡下腎盂形成術などの低侵襲手術も安定した成績を得ている。また、尿路結石症に対する体外衝撃波の新機種が9月から導入されたことにより、尿路結石症に対するあらゆる治療が可能となり、今後、山陰の結石センターとしての役割を担っていきたいと考えている。
研究面では、悪性腫瘍、神経因性膀胱、腹腔鏡手術、後腹膜鏡手術等に関する発表を国内外で行うとともに、ボツリヌス毒素膀胱壁内注射、小児夜尿症に対するアラーム治療、慢性骨盤痛症候群等に対する電気刺激療法等の臨床に直結した研究や、ホルモン補充療法等、高齢化社会で今後その重要性が増すと考えられるテーマに取り組んでいる。
我々は診療、研究の両面から更なる質の向上を目指し、地域への貢献ができるよう、これからの責務を果たしていきたいと考えている。
(本田 正史)