3-3-25. 薬剤部

薬剤部では、従来から薬剤管理指導業務、外来患者への情報提供、治験薬管理、注射薬の個人別セット、手術時使用薬剤のセット供給、外来及び入院の注射薬調製、リスクマネジメント等の業務を展開してきている。平成19年度はこれら業務の質的、量的拡大を図った。

1.医薬品管理業務

減少傾向のあった新規治験の契約件数は、平成16年度(23件)以降、平成17年度9件、平成18年度8件と減少傾向にあったが、平成19年度は17件(医師主導2件含む)と増加に転じた。前年度から引き続き実施しているプロトコルと併せ35の治験薬を管理した。本院採用医薬品については、平成19年度は59品目を新規に採用し、43品目を削除した。薬剤部では従来から医薬品の適正在庫に努めているが、より一層の適正化が必要と考えている。平成19年12月より治療薬の選択肢拡大と医薬品在庫の適正化を目的に院外処方限定採用が導入され、今年度4品目が採用となった。院外限定採用では薬剤部に在庫は持たないものの、医師等に対し通常の採用薬と同レベルの情報提供が可能な体制をとっている。

2.薬剤管理指導業務

平成18年度は23診療科を対象に実施してきたが、19年度は9月に救急災害科(救急救命センター)を追加し、計24診療科を対象に薬剤管理指導業務を行った。管理指導件数は、月平均578件(約502~701件/月)であり、前年度(月平均548件)より微増した。今後は、実施件数の増加に加え、重症患者やハイリスク薬投与患者への指導の拡大を図ることが重要と考えている。

3.注射薬調製業務

入院化学療法用抗がん剤の調製については、平成18年度7月に対象診療科を全科に拡大し、充実に努めてきた。この結果、調製件数は平成18年度(拡大後)351件/月から19年度376件/月と更に増加し、外来化学療法調製件数を合わせた年間総件数も平成18年度の7435件から9422件と25%以上増加した。薬剤部では抗がん剤の調製だけでなくレジメンチェックや、薬歴の管理等も行っており、抗がん剤治療に薬剤師が係わることで医療安全に貢献できたものと考える。

また、入院TPNに関してICUに薬剤師が出向き調製している他、平成18年12月からは6A病棟分についても薬剤部製剤室にて無菌調製を実施している。その結果、調製件数は平成18年度の1174件から19年度2213件と約2倍に増加した。

4.薬物治療モニタリング

薬物血中濃度測定は、免疫抑制薬、抗MRSA薬、抗生物質、抗てんかん薬、ジゴキシン、テオフィリン等の血中濃度測定、解析を行い医療現場にフィードバックしている。薬物血中濃度測定件数は平成18年度平均370件/月から19年度平均410件/月と増加し、薬物適正使用に貢献している。また、骨髄移植・臍帯血移植時に用いられる免疫抑制薬については、頻回の測定が必要なことから、休日についても担当者が出勤し対応に当たっている。平成19年度は月平均7.7日出勤し、休日測定件数は免疫抑制薬以外も含め21件/月であった。

5.調剤業務

調剤室では従来処方薬・注射薬調剤、外来患者への情報提供および医薬品の供給業務(定数配置カート補充を含む)等を行ってきたが、平成18年8月より法人化後の手術件数の増加に対応すべく手術時使用薬剤のセット供給を開始している。予定及び予備用セットの供給件数は、平成18年度平均774件/月(開始以降)であったが、平成19年度は804件/月と更に増加した。手術部での手術件数の増加および医薬品安全使用に寄与できたものと考えている。

6.医薬分業推進(地域薬剤師会との連携)

院外処方に関する問題点を話し合うため、病院薬剤師と保険薬局薬剤師の会合を毎月当院薬剤部で開催し、院外処方に関する様々な問題点について議論を交わし、連携に努めている。平成19年度は病院・保険薬局間での調剤方法(散薬調剤、錠剤分包等)の統一について活発な議論が行われた。

7.教育及び研究

病院研修生は、新卒者4名を受け入れた。薬学生実務実習は、平成19年6月と9月の2回で計9名の学生を受け入れ、それぞれ4週間の実習を行った。本院は平成18年12月に鳥取県で唯一がん専門薬剤師研修施設として認定を受けており、平成19年度は9月と1月に県内他施設より各1名研修生を受け入れ、それぞれ3ヶ月間の研修を行った。平成19年度は学会で6演題を発表し、原著論文5編を報告した。

(椎木 芳和)