3-2-22. 脳神経外科

本診療部門の主な疾患対象は脳腫瘍(良性、悪性、間脳下垂体腫瘍など)、脳血管障害(出血性、閉塞性)、頭部外傷、脊髄・脊椎疾患、水頭症、中枢神経先天奇形疾患である。新生児期から高齢者まであらゆる年齢層の全脳神経外科疾患に対応できる診療を行っている。加えて、てんかん、不随意運動痛みの外科治療などの機能的外科治療も行っている。例年脳腫瘍手術症例数は60症例を超え、中国地方でも脳腫瘍専門治療施設として認識されつつある。主な医療地域圏は、山陰全域、一部岡山県北部、兵庫県北部にわたり、紹介患者、救急患者の受け入れを積極的に行っている。スタッフの中心は脳神経外科専門医と、脳卒中学会専門医、脳血管内治療専門医が的確な治療方針に基づきチーム医療を行っている。さらに日本がん治療認定医暫定教育医、神経内視鏡専門医も在籍し、各分野にその専門性を発揮している。

(外来部門)

外来患者は1日10~20名あり、初診、再診ともに毎日受け付けている。専門外来では術後の患者の良好なQOLを目的とした長期経過観察を行っている。火曜日:教授外来(渡辺高志)、脳血管障害(田渕貞治)脊髄・脊椎(赤塚啓一)、血管内治療(坂本誠)木曜日:脳腫瘍(紙谷秀規)、機能的脳神経外科(近藤慎二)金曜日:下垂体疾患(黒崎雅道)、高次脳機能障害(渡辺高志)、教授外来(渡辺高志)。平成15年度以降に設置された高次脳機能外来は専属コーディネーターをエ設置し、患者の社会復帰まで見据えた支援まで行っている。加えて精神神経科、高次能機能障害家族会との連携も密に持ったユニークな外来となっている。

(入院部門)

病院内で規定された当診療科病床数は20床程度で、主に手術を目的とする。平成19年度に施行された総手術件数は257件に上る。手術室を利用した脳神経外科手術は215件、脳血管撮影室のカテーテルを利用した脳血管内手術は42件であった。また神経内視鏡を利用した手術は重複を含め22件を数えた。手術内容は一覧表で示されているように脳腫瘍手術が多く山陰地方では最大の症例数を持つ。下垂体腫瘍では経鼻的なアプローチで細部は内視鏡を利用した腫瘍摘出を短時間に行い患者に好評である。さらに小児脳腫瘍の疾患には小児科、脳神経小児科、さらに放射線治療部門との協力の元、集学的治療を行っている。機能領域の脳腫瘍に対しては覚醒下麻酔による言語領域の同定し、運動野近傍の手術では運動誘発電位などの電気生理学的補助システムを利用している。術中の腫瘍局在同定にはナビゲーションシステムを導入している。また腫瘍の術中蛍光診断技術を用い、残存腫瘍を探し摘出の補助としている。悪性脳腫瘍は手術後の集学的補助治療を必要とするため、化学療法の工夫、免疫療法の工夫をこらして総合的な治療を行っている。一方、脳血管内治療の技術進歩、材料の質の向上はめまぐるしい。脳血管障害のうち脳動脈瘤の治療ではコイル塞栓術の割合が増加し、また頚部内頚動脈狭窄症の患者のステント治療も症例数が増加した。

(地域医療)

山陰地方の各病院には、脳神経外科疾患で対応できない場合には紹介していただいている。また24時間体制での脳神経外科救急患者の対応は当院救災科の多大な協力のもと行っている。また毎月一回は近隣の関連施設の脳神経外科医と症例検討会を行い、当該地域の脳神経外科疾患の診断および治療成績の向上に貢献している。

平成19年度に脳神経外科部門で推進した項目及び展望

l くも膜下出血後脳血管れん縮予知のための患者管理と髄液モニタリング

l 血管内治療の更なる進歩(ステント治療とコイル塞栓術)

l 急性期閉塞性脳血管障害患者の緊急治療(血栓溶解、tPAなど)

l 手術用機能画像の描出とその利用

l 術中機能モニタリング手術(顔面神経モニタリング、SEP, MEPなど)

l 術中ナビゲーションシステム導入による脳腫瘍手術

l 脳腫瘍術中蛍光レーザーによる可視化

l 材料改変による脊椎・脊髄外科手術の更なる進歩

l 小児脳腫瘍、中枢神経系先天性奇形患者の集学的治療

l 高次脳機能障害患者の総合医療

l 神経内視鏡利用下手術の向上

l てんかん原性病巣の評価と外科治療

l 機能的脳神経外科手術の向上

年間疾患別手術件数(2007年4月~2008年3月末日までで集計)


件数




直達術

212


内訳





術式

件数

脳腫瘍

61


開頭腫瘍摘出術

42


定位的生検術

2


TSR

17

脳血管障害

40


開頭クリッピング術

23




開頭血腫除去術

7




脳血管吻合術

5






頭部外傷

8




慢性硬膜下血腫

42


水頭症

23


VPシャント術

18

脊椎、脊髄疾患

8




先天奇形

2




機能外科

2




その他

24









血管内手術

42


動脈瘤塞栓術

16


CAS

14






神経内視鏡手術

22


生検術

1




開窓術

2






総手術数

257




※ 神経内視鏡手術は内視鏡単独手術のみ、総手術数に含めました

(紙谷 秀規)