3-2-07. 胸部外科

胸部外科

胸部外科は平成17年1月に開設され、「患者中心の標準医療」を目標として、常に医療の質と効率性を意識し実践してきた。現在、診療科のスタッフは科長(准教授/診療教授)、助教、医員の3名に加えて、手術部講師1名、HICU助教2名を含めると6名となった。当初より卒前・卒後教育に力を注いできた結果、現在では常時1~3名の研修医が一緒に診療にあたっている。日々の活動は7時45分の始動を原則とし、全員で治療方針を確認し、意識統一を徹底している。また、看護師、コメディカルとの協力を重視するためにたびたび勉強会を行い、相互理解を深めている。平成19年度の手術件数は表1のごとくで、合計246件であった。年々、手術件数は増加しているが、特に胸腔鏡手術は207件と約80%を占めており、増加が著しい。手術の中心は胸部悪性腫瘍であるが、平成19年度は原発性肺がん89件、転移性肺腫瘍25件の計114件であった。この実績は山陰地方では圧倒的多数であり、中国・四国地方でも有数の手術件数である。患者は鳥取県西部地区のみならず、鳥取県中部、鳥取県東部、島根県東部、岡山県北部と周辺の広い地域から集まってきており、中でも得意分野の胸腔鏡手術を希望して来られる患者が多い。当院では平成19年4月から内視鏡手術専用の手術室も開設された。ここに導入されたハイビジョンカメラ装置は現時点では世界でも最高級の解像度で詳細な画像を提供してくれており、正確な手術がより容易に可能となっている。胸腔鏡手術の対象疾患は肺、縦隔、横隔膜、胸膜、胸壁と多彩で、すべての呼吸器手術分野に応用可能になったと言っても過言ではなく、今後もさらに発展すると考えられる。

他科との診療体制はすでに確立されており、毎週水曜日の早朝から第3内科(呼吸器内科)、放射線科と肺がんカンファレンスを、毎月第3水曜日の夕方には同様に胸部疾患カンファレンスを行い、常に緊密な連携を取りながら高度医療の実践に努めている。一方、地域医療においても中心的役割を担うために西部医師会と合同の胸部X線読影カンファレンスを2ヶ月に1回、西部医師会館で定期的に開催しており、肺がんの最新診断や治療法の紹介や肺がん診療連携のネットワーク作りに効果を発揮している。

呼吸器疾患は近年の高齢化に伴い、現在なお増加の一途である。中でも肺がんは予後不良で年間6万人も死亡するまでに至っている。山陰地方全体を視野に入れた肺がん診療体制を充実することが急務の課題であり、診療体制の安定化とともに有能な人材育成に全力をあげている。これまで市民講演会等による啓発活動も積極的に行ってきたが、今後も継続していくとともに、内外に向けての情報発信をさらに強化していきたいと考えている。

(中村 廣繁)

表1.手術患者(平成19年4月~平成20年3月)

疾患名

手術患者数

原発性肺癌

89(80)

転移性肺腫瘍

25(23)

良性肺疾患

29(29)

自然気胸

28(28)

膿胸・胸膜炎

10(8)

縦隔腫瘍

23(19)

胸膜中皮腫

2(2)

胸膜腫瘍

4(4)

胸壁疾患

10(0)

胸部外傷

1(0)

手掌多汗症

10(10)

横隔膜疾患

1(1)

その他

14(3)

246(207)

( )は胸腔鏡手術