3-2-14. 女性診療科
女性診療科では、周産期、生殖・内分泌、婦人科腫瘍を3本柱にして診療を行っている。
当院は、従来から地域の周産期センターとしての役割を担っており、山陰地方の医療機関からのハイリスク妊婦の紹介や緊急母体搬送例が多い。平成18年度からは総合周産期母子医療センターが開設となり、ますますこれらの現象に拍車が掛かってくることが予想される。最近では、胎児穿刺などの直接的情報による出生前診断や胎内治療の症例も増加してきている。新生児童・NICLI医師と定期的にカンファレンスを行い、症例によっては関係各科との綿密な連携により適切な周産期管理に努力している。
生殖・内分泌領域では、体外受精胚移植、配偶子卵管内移植などの先端的治療を実施し、良好な治療成績を治めてきた。これらの治療にも奏効し難い男性不妊症患者に対しては顕徴受精を行い、妊娠例も増加している。習慣流産患者に対し抗凝固療法(低分子ヘパリン持続注入)を積極的に行い良好な成績を得ている。腹腔鏡検査は不妊の原因検索の目的で行われてきたが、近年では子宮筋腫や卵巣腫瘍などに対しても腹腔鏡下手術が積極的に行われるようになっており、今後ますます適応が広がるものと考えられる。腹腔鏡下手術は開腹手術と比較して患者への侵襲が少なく、術後癒着も軽減できることから、未婚女性や不妊症患者には極めて有用な術式である。現代病といわれる子宮内膜症は当科の重要なテーマの一つとしており、基礎的検討をふまえて適切な治療法を行うべく努力を重ねている。
当科は、鳥取県内の婦人科悪性腫瘍の過半数を取り扱うとともに、山陰地戒の婦人科がんセンターの役割を果たしている。子宮頸癌は子宮がん検診の啓発と普及に伴って、初期病変の割合が増加している一方で、当地域の特徴として、がん検診未受診の高齢者進行癌が依然として多いことがあげられる。進行癌症例に対しては抗癌剤による術前化学療法を行い、手術適応の拡大と根治性の改善に努めている。また、若年者頸癌症例に対しては、妊率性温存を考慮した広汎性子宮頸部摘出術を試みている。子宮体癌および卵巣癌症例は全国的な傾向に同期して漸増している。手術術式の改良のみならず、抗癌剤化学療法を駆使して集学的治療を行い、予後の改善を目指している。なかでも進行癌卵巣症例の予後は全国平均に比較しても良好な成績を得ている。
患者のニーズに応えるため、平成15年9月から乳腺外来を開設した。視触診に加え、マンモグラフィーと超音波検査を行い、現在までに12名の乳癌患者を発見している。
以上のように受精から始まり、思春期、成熟期、老年期へと女性のライフサイクルすべてにわたって幅広く診療活動をしており、いずれの分野ともますます専門性を深めている。周辺医療機関との連携をもっと密接にし、大学病院としての使命を果たせるようさらに努力したいと考えている。
(板持 広明)
疾患別入院患者
(産科疾患) |
入院患者数 |
(婦人科疾患) |
入院患者数 |
---|---|---|---|
切迫流・早産 |
31 |
子宮頸部悪性腫瘍 |
127 |
妊娠高血圧症候群 |
12 |
子宮休部悪性腫瘍 |
88 |
前置胎盤・常位胎盤早期剥離 |
15 |
卵巣悪性腫癌 |
245 |
合併症妊娠 |
33 |
外陰・腫悪性腫癌 |
5 |
多胎妊娠 |
16 |
子宮頸部上皮内悪性腫瘍 |
21 |
胎児異常 |
35 |
子宮筋腫 |
54 |
子宮内胎児死亡 |
30 |
子宮内膜症 |
40 |
子宮外妊娠 |
7 |
卵巣良性腰痛 |
43 |
不妊症 |
12 |
子宮脱・膳胱脱 |
25 |
その他 |
100 |
その他 |
94 |
計 |
291 |
計 |
742 |
手術件数
(産科) |
手術件数 |
(婦人科) |
手術件数 |
---|---|---|---|
分娩(帝切含む) |
286 |
広汎子宮全摘術 |
17 |
帝王切開術 |
108 |
拡大子宮全摘術(準広汎含む) |
19 |
頸管縫縮術 |
5 |
単純子宮全摘術 |
40 |
流産手術 |
22 |
卵巣癌根治術 |
27 |
人工妊娠中絶術 |
7 |
腹式手術(円切含む) |
56 |
|
|
その他の開腹術 |
52 |
|
|
腹腔鏡手術(LAVH含む) |
98 |
|
|
子宮鏡手術(レゼクト含む) |
30 |
計 |
428 |
計 |
339 |