3-2-13. 放射線診療科群

放射線科の診療は核医学も含めた各種画像診断、画像診断機器・技術を応用したインターベンショナルラジオロジー(IVR)が、中心である。平成19年からは診断科とは別に、放射線治療が診療科として認められた。画像診断部門:専門的なトレーニングを受けた放射線診断医によるCT、MRIを中心とした全身の画像診断を行っている。16列・64列MDCT(マルチスライスCT)を利用しての骨、血管などの3次元表示や、脳、肺、肝などの臓器灌流量の測定、高磁場MRI(1.5T、3.0T)での、脳疾患(血管障害、腫瘍性疾患、認知症など)などの機能診断、EPIによる拡散強調像、灌流強調像などの機能画像による診断など最先端の画像診断を行っている。64列MDCTを使用し冠動脈の状態を評価する心臓CTも行われている。また、核医学では、脳、心臓、呼吸器、内分泌等の機能診断、PET-CTでの全身の悪性腫瘍の診断を担当している。

IVR:平成17年末までに、IVR-CT、頭部、心臓、腹部血管装置の3台が更新され、山陰地域の中心的な役割を果たしている。代表的なものとしては、肝癌(原発性、転移性)などの悪性腫瘍に対する血管塞栓術、動注化学療法(リザーバ留置など)、閉塞性黄疸に対する経皮的ドレナージ・ステント留置、血管閉塞(下肢、腎など)に対する血管形成術(拡張術・ステント留置)、外傷や出血などの救急疾患における塞栓術、胃静脈瘤に対するBRTO、門脈圧亢進症に対するTIPS、血栓症・肺塞栓症に対する血栓溶解・IVCフィルター留置、転移性骨腫瘍や骨粗鬆症等による圧迫骨折に対する椎体形成術、大動脈瘤、急性大動脈解離に対するステントグラフト治療、血管奇形に対するカテーテル塞栓術あるいは硬化療法、肺腫瘍に対するラジオ波焼灼療法を行っている。さらに、子宮筋腫に対する血管塞栓術、透析シャント不全の血管形成などについても準備をしている。

放射線治療:様々な悪性腫瘍の放射線治療を担当し、コンピューターを用いた三次元的治療計画を行い、機能と形態を温存した癌治療を行っている。IVRや化学療法を併用した集学的治療も行っている。平成21度にはIMRT(強度変調放射線治療)、IGRT(画像誘導放射線治療)は元より、頭部、体幹部に対する定位放射線治療も可能な最新の放射線治療機器が2台設置されることが決定している。

治療の実際としては、根治治療:特に頭頸部の癌早期癌では、手術と遜色ない治療を行い、形態と機能が保たれる面で放射線治療が主体となる治療が勧められることがある。肺癌では抗癌剤と組み合わせて治療する場合もある。今後、定位放射線治療装置の導入により早期癌については、手術と同等の治療成績が得られるものと期待される。乳癌の乳房温存治療は、乳房部分切除手術に外部照射をあわせて行うのが一般的である。その他、子宮頸癌、悪性リンパ腫、食道癌、脳腫瘍 などの治療も行っている。前立腺癌では外照射の他に、平成20年11月より放射性ヨード密封小線源治療を開始している。またIr(イリジウム)を使用した小線源治療用のRALSも設置された。緩和治療として放射線治療は癌による疼痛緩和等にも重要な役割を果たしている。その他の特殊な治療としては非密封放射性ヨード内用療法があり甲状腺癌、バセドウ病を対象にしている。

当院の放射線診断・治療機器の整備は順調に進み、全国的に見ても充実した施設と言える。来春には放射線治療装置も更新され、国内でも有数の最新の放射線診断・治療機器の充実した施設になり、山陰地域の皆様により高いレベルの放射線診療を提供できるものと思われる。

放射線治療科資料

画像診断読影件数
CT 19336
MRI 7942
RI PET 981
502 腫瘍 275 副腎 12
589 42 その他 15
心臓 293 41 総計 3036

IVR件数
頭蓋内 0 頭頸部 64
65 食堂 19
288 胆・胆道系 66
20 7
消化管 6 門脈系 17
骨盤 17 骨・軟部 54
外傷性出血 4 動脈 6
静脈 19 血管奇形 5
その他 59 総計 716

放射線治療(治療計画件数)
中枢神経 11 頭頸部 58
食堂 26 胸部 72
乳腺 78 肝胆膵 17
消化器 15 女性生殖器 20
泌尿器 38 造血器 14
皮膚・軟部 10 良性 7
15歳以下 5 総計 367