3-2-09. 皮膚科
皮膚科では、第一に皮膚腫瘍の診断・治療に重点を置き、経験豊富な医師が診療にあたっています。附属病院の鳥取県におけるがん医療の拠点病院化の動きにあわせ、山陰地方の皮膚腫瘍・がんセンターとしての役割を担うべく、不断の努力を重ねております。皮膚腫瘍・皮膚がんの診療については経験数がものをいいますが、データを見ていただければ分かるように、この点では山陰地方でもトップクラスであると自負しております。また、内臓の病気に伴う皮膚病の診療にも力を入れており、これまでも皮膚病変より数々の内蔵の病気を発見してきました。これは皮膚科医にしかできない匠の技です。また、皮膚病理組織診断(顕微鏡による細胞や組織の検査)にも力を入れ、どの医療機関でも診断のつかなかった数々の皮膚病の診断をつけてきました。また、皮膚腫瘍の術前に、病理診断とともに手術方法の選択も、病理組織像に従って十分検討を行っております。さらに、平成17年6月には美容外来を開設し、ケミカルピーリングや最新式のレーザー機器により、シミやムダ毛への対処も行っており、好評を博しています。乾癬という難治性皮膚疾患の入院治療にも力を入れ、光線療法を中心に効果を上げています。
皮膚病は目に見える分診断が下しやすいように思われますが、実は同じ様な発疹に見えても診断が難しい場合が多く、皮膚科の研鑽を十分積まなければなかなか適確な診断を下すことはできません。現に、皮膚科専門医以外の皮膚科のトレーニングを受けていない医師に誤診され、手遅れになった例が鳥取県には驚くほど数多くあります。たかが皮膚病ですが、されど皮膚病です。皮膚に現れた病気は、必ず皮膚科専門医の称号を持つ医師に相談して下さい。専門医取得の有無は皮膚科診療の力が求められているレベル以上に達しているかどうかの指標ですので、診察を受ける際の目安と考えて下さい(多くの診療所では免状を診察室に掲げています)。なお、鳥取大学附属病院皮膚科勤務の医師のうち認定皮膚科専門医の免状を持つスタッフは6名にもおよびます。
以下に、当科での診療内容について具体的に記します。
皮膚腫瘍診療:悪性黒色腫(ホクロのがん、あらゆる臓器のがんの中でも最もたちが悪い)、基底細胞がん(最もありふれた皮膚がん)、日光角化症(お年寄りの顔面に多い早期の皮膚がん、鳥取県に非常に多い)、ボーエン病(早期皮膚がん)、有棘細胞がん(転移しやすい)、パジェット病(湿疹に酷似した陰部に多いがん)、皮膚の悪性リンパ腫などの診療に豊富な経験を持ちます。皮膚がんは早期発見により生命への危険を回避できますので、少しでもおかしいなと思われたら、気軽に大学病院を受診されることを勧めます。経験豊富なスタッフが丁寧に診察いたします。皮膚に生じたこのようないわゆる「出来物」は皮膚専門医が診療すべき対象であることを強調いたします。
美容外来(自費):大学病院で美容診療を行う最大の利点は、皮膚科専門医が肌の状態を的確に把握し、その上で必要な処置のみを行うことであると考えております。初期の判断や治療過程での判断に誤りがあると、本来改善するはずのシミが逆に悪化したなどということは美容の現場では実際に起こっています。当科では安全性と苦痛のなさを第一に考えたうえで治療方法を慎重に選んでおります。ケミカルピーリング法では刺激性が極めて少ない薬剤を用いています。シミ(老人性色素斑、肝斑、雀卵斑)、ニキビ、小ジワなどに適応があり、治療間隔は1ヶ月から1ヶ月半に1回で、翌日からは通常の化粧もできます。ニキビ治療では、悩み多き若い人を中心に成果を上げております。また、ロングパルスアレキサンドライトレーザー(Gentle LASE)という機器を用いてレーザー脱毛と、顔面のシミ治療や若返りを目的とした治療も行っております。
その他特殊治療:陥入爪に対するワイヤー治療(自費)も行っております。これは特殊な金属でできたワイヤーで、手術等の苦痛を伴う手技を駆使することなく湾曲した爪を矯正する方法です。また、難治性皮膚疾患に対する光線療法も行なっております。
ファックス予約制度:当科ではファックス予約制度を積極的に導入しています。開業医の先生から紹介を受ける時に、予めファックスにて診察時間の予約をしていただく制度で、受診時にお待たせすることなく診察させていただきます。実際にご経験いただいた患者さんに大好評の制度ですので、是非ご利用下さい。
入院治療の対象疾患は、皮膚腫瘍(良性からがんまですべて)や母斑(ほくろ、あざ)をはじめ、アトピー性皮膚炎、水疱症、乾癬などの難治性疾患、帯状疱疹や丹毒などの感染症から熱傷(やけど)まで多岐にわたります。特に皮膚外科治療に力を入れており、手術室、外来処置室での手術件数は年間569件と山陰地方随一を誇っております。現在医療事故防止の観点などから、手術は小さなものでもできる限り設備の完備した中央手術室で行なう方針にしております。やはり、外来診察室の隣の小さな処置室で行なうより清潔であることは言うまでもありません。
当科では鳥取県西部・中部および島根県東部地域のみならず、山陰地方全域および岡山県北部をも対象地域としており、地域機関病院皮膚科が担うべき役割を認識し、高齢化や複雑化する社会環境・医療環境のなかで皮膚科医に要求される医療を効率的に提供できるよう、スタッフ一同努力していきたいと思っております。また、当科に限って言いますと、大学病院であるからといって決して敷居の高い診療を行なっている訳ではなく、どなたでも、またご自身がたいしたことがないかも知れないと思われる疾患でも診察いたしますので、お気軽にご相談下さい。
統計
外来処置室での手術の内訳(2007年1月~12月)
手術術式 | 手術件数(件) |
---|---|
創傷処理 | 18 |
皮膚切開術 | 31 |
血管腫摘出術 | 14 |
皮膚,皮下腫瘍摘出術 | 277 |
皮膚悪性腫瘍切除術(単純切除) | 21 |
皮弁作成術・移動術 | 1 |
その他 | 20 |
合計 | 382 |
表1:平成19年度皮膚科外来患者統計(2007年1月~12月)
月 | 外来患者数(人) | 新患患者数(人) | 再来患者数(人) | 新患割合(%) |
---|---|---|---|---|
1月 | 796 | 139 | 657 | 17.4 |
2月 | 778 | 164 | 614 | 21 |
3月 | 841 | 167 | 674 | 19.8 |
4月 | 817 | 141 | 676 | 17.2 |
5月 | 859 | 210 | 649 | 24.4 |
6月 | 833 | 190 | 643 | 22.8 |
7月 | 922 | 201 | 721 | 21.8 |
8月 | 1116 | 238 | 878 | 21.3 |
9月 | 832 | 170 | 662 | 20.4 |
10月 | 969 | 188 | 781 | 19.4 |
11月 | 783 | 103 | 680 | 13.1 |
12月 | 777 | 93 | 684 | 11.9 |
合計 | 10323 | 2004 | 8319 |
表2:平成19年度疾患別新患患者数(2007年1月~12月)
疾患 | 計(人) | %(約) | 疾患 | 計(人) | %(約) |
---|---|---|---|---|---|
1 湿疹 | 375 | 17 | 15 上皮性良性腫瘍 | 212 | 10 |
2 蕁麻疹・痒疹・皮膚掻痒症 | 125 | 6 | 16 上皮性悪性腫瘍 | 117 | 5 |
3 紅斑症・紫斑・血管炎・血行障害 | 69 | 3 | 17 非上皮性良性腫瘍 | 163 | 7 |
4 物理・化学的皮膚障害・壊疽 | 75 | 3 | 18 非上皮性悪性腫瘍 | 22 | 1 |
5 中毒疹・薬疹 | 98 | 4 | 19 発汗異常症 | 18 | 1 |
6 水疱症および膿疱症 | 24 | 1 | 20 毛包脂腺系疾患 | 41 | 2 |
7 紅皮症 | 7 | 0 | 21 毛髪・爪甲疾患 | 71 | 3 |
8 炎症性角化症・非炎症性角化症 | 73 | 3 | 22 細菌性疾患 | 66 | 3 |
9 膠原病 | 23 | 1 | 23 ウイルス性疾患 | 120 | 6 |
10 代謝異常症 | 7 | 0 | 24 真菌症 | 178 | 8 |
11 皮膚形成異常・萎縮症 | 8 | 0 | 25 皮膚結核症 | 0 | 0 |
12 肉芽腫・肉芽腫症 | 18 | 1 | 26 ハンセン病 | 0 | 0 |
13 色素異常症 | 36 | 2 | 27 動物性皮膚疾患・性病 | 42 | 2 |
14 母斑・母斑症・奇形 | 132 | 6 | 28 その他 | 60 | 3 |
計 | 2180 |
表3:平成19年度皮膚悪性腫瘍疾患別分類(2007年1月~12月)
上皮性 | 計(人) | %(約) | 非上皮性 | 計(人) | %(約) |
---|---|---|---|---|---|
基底細胞癌 | 30 | 26 | 悪性黒色腫 | 10 | 44 |
日光角化症 | 34 | 28 | メルケル細胞癌 | 1 | 5 |
ボーエン病 | 14 | 12 | 悪性リンパ腫 | 4 | 18 |
有棘細胞癌 | 32 | 28 | 菌状息肉症・セザリー | 2 | 9 |
パジェット病・癌 | 3 | 3 | 脂肪肉腫 | 1 | 5 |
白板症 | 2 | 2 | 隆起性線維性肉腫 | 3 | 14 |
脂腺癌 | 1 | 1 | 皮膚白血病 | 1 | 5 |
マイボーム腺癌 | 1 | 1 | |||
計 | 117 | 計 | 22 |
表4:平成19年度地域別初診患者分類(2007年1月~12月)
地域 | 計(人) | %(約) |
---|---|---|
米子市 | 765 | 39 |
鳥取県西部(米子市を除く) | 466 | 23 |
鳥取県中部 | 239 | 12 |
鳥取県東部 | 82 | 4 |
島根県東部 | 321 | 16 |
島根県西部 | 27 | 1 |
隠岐 | 49 | 2 |
岡山県北部 | 32 | 2 |
その他県外 | 23 | 1 |
計 | 2004 |
入院病名(2007年1月~12月)
病名 | 患者数(人) | |
---|---|---|
湿疹 皮膚炎群(アトピー性皮膚炎を除く) | 14 | |
アトピー性皮膚炎 | 4 | |
蕁麻疹(アナフィラキシーを含む) | 4 | |
痒疹群 | 0 | |
紅斑症 | 7 | |
血管炎 | 2 | |
薬疹 中毒疹 | 4 | |
天疱瘡 | 1 | |
類天疱瘡 | 5 | |
その他の水疱症 | 0 | |
紅皮症 | 5 | |
乾癬 | 12 | |
その他の角化症 | 3 | |
膠原病 | 0 | |
細菌性感染症 | 19 | |
ウイルス性感染症 | 9 | |
真菌性感染症 | 1 | |
熱傷 | 14 | |
母斑 母斑症 | 16 | |
上皮性良性腫瘍 | 25 | |
上皮性悪性腫瘍 | ||
日光角化症 ボウエン氏病 | 33 | |
有棘細胞癌 | 34 | |
基底細胞癌 | 25 | |
パジェット病 パジェット癌 | 4 | |
付属器癌 | 1 | |
その他 | 1 | |
悪性黒色種 | 13 | |
間葉系良性腫瘍 | 30 | |
間葉系悪性腫瘍(血液系を除く) | 2 | |
菌状息肉腫 | 0 | |
成人T細胞性白血病リンパ腫 | 0 | |
その他の悪性リンパ腫 | 0 | |
その他 | 10 | |
合計 | 298 |
手術室手術術式<主なもの>(2007年1月~12月)
手術術式 | 手術件数(件) |
---|---|
創傷処理 | 0 |
皮膚切開術 | 1 |
皮膚,皮下粘膜下血管腫瘍摘出術 | 2 |
皮膚,皮下腫瘍摘出術 | 70 |
皮膚悪性腫瘍切除術(リンパ節郭清術を含む) | 1 |
皮膚悪性腫瘍切除術(単純切除) | 87 |
リンパ節摘出術 | 0 |
リンパ節郭清術(独立手術としておこなったもの) | 0 |
皮弁作成術,移動術 | 1 |
動脈(皮)弁術,筋(皮)弁術(独立手術として行ったもの) | 0 |
腋臭症手術(皮弁法) | 2 |
瘢痕拘縮形成術 | 0 |
デブリードマン | 0 |
全層,分層植皮術(独立手術として行ったもの) | 6 |
デブリードマン 植皮,(人工真皮) | 8 |
その他 | 9 |
合計 | 187 |
外来手術術式(2007年1月~12月)
手術術式 | 手術件数(件) |
---|---|
創傷処理 | 18 |
皮膚切開術 | 31 |
皮膚,皮下粘膜下血管腫瘍摘出術 | 14 |
皮膚,皮下腫瘍摘出術 | 277 |
皮膚悪性腫瘍切除術(リンパ節郭清術を含む) | 0 |
皮膚悪性腫瘍切除術(単純切除) | 21 |
リンパ節摘出術 | 1 |
リンパ節郭清術(独立手術としておこなったもの) | 0 |
皮弁作成術,移動術 | 0 |
動脈(皮)弁術,筋(皮)弁術 | 1 |
腋臭症手術(皮弁法) | 0 |
瘢痕拘縮形成術 | 0 |
デブリードマン | 0 |
全層,分層植皮術 | 0 |
デブリードマン 植皮,(人工真皮) | 0 |
その他 | 19 |
合計 | 382 |