3-2-11. 眼科

平成19年度の当科の現況に関してふりかえってみると、まず特筆すべきこととしてあげられるのは、近年における最大の手術件数(1601件)を記録したことであろう。前年においてはすでにプラトーに達していた観のある手術件数であったが、前年比27%、347件の増加となった。とくに眼科手術において基盤となる水晶体再建手術は、前年度比34%ののびを示した。この増大に大きく貢献した原因は、白内障短期入院クリティカルパスの導入に加え、増員した検査員によるより効率的なワークフローの確立にあると考えている。

近年、高齢者人口の増大とともに加齢黄斑変性の有病率の増加が各種メディアの注目を浴びている。加齢黄斑変性は、中央部の視野障害をきたし回復困難かつ進行性の視力低下をきたす疾患であり、高齢者のquality of lifeに著しく影響を与える。このような加齢黄斑変性関連疾患や、難治性網膜硝子体疾患に対する新規あるいは先端医療として、当科では前年度より光線力学療法や、抗VEGF (Vascular endothelial growth factor)療法の導入をはかってきた。これに伴い関連疾患の紹介数の増加とともに、網膜光凝固の件数は顕著に増大し、前年度比50%の伸びを示した。さらに硝子体手術件数も増加を示した。

前眼部疾患においては、Real-time PCR法を用いた病原体定量評価をここ数年来導入しており徐々に対象病原体をひろげつつある。とくに眼科疾患においてはサンプルの微量性からReal-time PCR法の定量性および感度が、病原体の検出のみならず難治性疾患の治療効果の判定に極めて有用である。このため当施設は、山陰における難治性前眼部感染症治療のセンター的役割を果たしており、角膜潰瘍掻爬術件数の増大につながっている。また、次年度への飛躍を考えるため、新規角膜治療の導入をはかりつつある。古典的な角膜移植は、拒絶反応、術後感染、力学的強度の低下といった問題点に加え、quality of vision(QOV)が十分ではないといった問題点を抱えてきた。これらの問題点を解決し、かつ角膜再生医療への先鞭をつけるため、当科ではよりQOVの高い角膜内皮移植法の導入を模索している。

網膜硝子体や白内障といった基盤的手術のより一層のテクニカルアドバンスメントに対応するのみならず、新規あるいは先端医療の導入は、手術関連設備の更新なくしては成立しない。設備投資、およびランニングコストの効率化はいうまでもないが、新規あるいは先端医療の導入は新たなニーズを開拓するのみならず既存疾患の紹介数の増加につながると考えている。一層の躍進により地域医療における基幹施設としての役割のみならず、先端医療を担う施設としての責任を果たしていきたい。

(宮崎 大)

手術名 手術件数
白内障関連手術 491
網膜光凝固術 234
硝子体切除術 178
角膜抜糸術 86
緑内障手術 72
涙嚢鼻腔吻合術及び涙道狭窄関連手術 56
網膜復位術 55
斜視手術 45
エキシマレーザーによる角膜切除術 45
涙点プラグ挿入術 44
角膜潰瘍掻爬術(角膜潰瘍掻爬術) 42
眼瞼形成手術 35
翼状片手術 31
角膜・強膜異物除去術 31
虹採光凝固術 30
角膜移植 26
角膜・強膜縫合術 12
その他 88
合計 1,601