新規医療研究推進センター

研究実用化支援部門

専門分野の枠を越えて連携し、医療ニーズに基づいた新しい医療・介護機器等を製品化することで、地域経済の発展へ寄与するとともに、未来の医療へ貢献することを目指しました。

平成29年度、当センターは、アステラス製薬(株)と免疫賦活遺伝子搭載腫瘍溶解性ウイルスに関して独占的なライセンス契約の締結を支援するとともに、医療用タグ付け器「たぐりん。」及びマウスピース「Oral Shell(オーラルシェル)」の製品化を行いました。また、本年度は以下の重点プロジェクトを実施しました。

(1) 国産医療機器創出促進基盤整備等事業(国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED))の推進

5年事業として、平成25年度から開始しているプログラム「医療機器開発人材育成共学講座~共に学び、共に育つ~」を実施し、医療機器開発人材が病院へ往来できるようにしました。勉強会(座学と臨床現場見学)を4回実施し、先進地を視察するだけでなく、展示会にも出展しました。さらに、平成29年度の共学講座の活動の総まとめとして、平成30年3月、一般市民を対象としたシンポジウム「医療機器開発の芽生え〜小さなことからコツコツと〜」を開催しました。シンポジウムでは、日本の産業や経済の活性化に資するための、今後の医療機器産業の在り方について特別講演が行われたほか、当院での医療機器等開発や共学講座に関する取り組みと成果について紹介しました。

また、鳥取県の支援を受け、県内企業との共同開発による医療機器開発事業「とっとり発医療機器開発支援事業」を推進しました。

(2) 文部科学省未来医療創造人材養成拠点形成事業による「鳥大独自教育プログラム~発明楽の実践~」教育活動の推進

医療職や医薬品・医療機器開発などに興味を持つ米子高専の在校生を対象に、体験イベント「One Day College」を実施しました。また、鳥取大学独自の教育プログラム『発明楽(はつめいがく)』の授業を行うとともに、医学部附属病院の見学(手術部、MEセンター)及び院内で研修に用いられている医療機器・シミュレータ等の操作体験などを実施することにより、発明や医療機器開発に対する興味を喚起する取り組みを行いました。さらに、5年間の「革新的未来医療創造人材の養成」事業の総まとめとして、鳥取県と島根県の高校生を主な対象としたシンポジウム「鳥大発独自教育プログラム「発明楽」のこれまでとこれから」を開催しました。未来医療研究人材養成拠点形成事業における「革新的未来医療創造人材の養成」事業での取り組みや成果を紹介するとともに、今後ますます高齢化する日本社会における医療の現状や未来医療の在り方について、参加者でディスカッションを行いました。

(3) 医療機器等開発プロジェクトの推進

鳥取大学の第3期中期計画 戦略2における取組2-1「医工農連携による医療機器開発プロジェクト」において、医工農の開発に対する支援を行うとともに、医学部や工学部、農学部などの教職員から構成されるMEARC会議を開催し、鳥取大学で戦略的に実施する医療機器等開発についての議論を深めました。また、大学院コースにおいて医療機器開発に関する教育を実施し、医療機器産業への参入を目指す社会人に対して臨床現場の見学等を行いました。さらに、これまでの基盤を活用し、平成30年度より本格的に実践する新たな学び直し教育の企画を進めました。

執筆者:植木 賢

臨床研究支援部門

1.体制

平成29年4月現在、臨床研究支援部門は、右記のような3ユニットとした。事務管理ユニットには、特命助教2名、治験事務局としてCRC1名、治験、臨床研究支援のための事務補佐員2名、技能補佐員1名の配置とした。CRCユニットには、6名のCRCが配置され、治験、臨床支援を行った。試験薬ユニットは、薬剤部の薬剤師2名が併任で治験薬や試験薬の管理や調剤を行っている。

2.治験の実績

実績

平成29年度の新規治験契約数は、上表のとおり、医師主導治験2件を含む計18件であった。平成25年度に治験管理センターから次世代高度医療推進センター臨床研究支援部門への組織替え時に、治験料金にマイルストーン制を導入してからの新規治験受け入れ数は、翌26年度:7件、27年度:11件、28年度:11件であった。平成29年度に受入数が伸びた要因として、当院の治験受け入れ体制の整備、症例組み入れ率などが、治験依頼者に評価されてきたと考えている。診療科別の治験受け入れ状況は、下表の通りであり、平成29年度継続中の治験21件と併せると計38治験を支援したこととなる。

3.製造販売後調査の実績

使用成績調査とは、製造販売後調査等のうち、製造販売業者等が診療において、医薬品を使用する患者の条件を定めることなく、副作用による疾病等の種類別の発現状況並びに品質、有効性及び安全性に関する情報の検出又は確認を行う調査のことである。一方、特定使用成績調査とは、使用成績調査のうち、製造販売業者等が診療において、小児、高齢者、妊産婦、腎機能障害又は肝機能障害を有する患者、医薬品を長期に使用する患者、その他医薬品を使用する条件が定められた患者における副作用による疾病等の種類別の発現状況並びに品質、有効性、および安全性に関する情報の検出又は確認を行う調査をいう。平成29年度の新規受け入れ件数、継続件数は昨年度と大きく変わりはない。

使用成績調査
特定使用成績調査

4.臨床研究支援の実績

ヒトを対象とする医学系倫理指針が平成27年4月より施行され、責任範囲の明確化、倫理審査委員会の強化、侵襲を伴う介入研究でのモニタリングの実施、試料・情報の保管管理の徹底など、臨床研究を取り巻く環境が大きく変わった。本部門ではそれぞれの教職員の専門性を活かし、下表のとおり、研究計画書作成、調整事務局、データ管理、品質管理支援を推進した。

実績
(臨床研究件数)

5.取組み

教職員の治験・臨床研究認定資格取得状況

平成29年度は、新たに2名が日本臨床薬理学会認定CRC取得し、計6名となった。JSCTR認定GCPパスポート取得者は4名となった。

CRCによる患者スクリーニングの充実

平成25年度に料金体系をマイルストーン制に変更したため、症例組み入れが行われないと治験実績につながらないことから、治験責任医師と協力して電子カルテ上で候補患者のスクリーニングを徹底して行うことにしている。

米子市内の薬局や公共施設への治験広告の掲示

治験の症例組み入れ数を増加させるためのひとつの取組みとして、治験について広く市民に知ってもらうことが必要である。そこで、県薬剤師会、保健所や市役所等に働きかけて市内の施設での治験に関する情報の掲示を依頼した。当院で行っている治験のポスターを毎月の治験倫理審査委員会での承認を得たのち、薬局や公共施設にて掲示している。

治験優良者の表彰

平成27年度より、当院の治験の実績等に貢献した医療従事者個人や診療科等について毎年5月の病院運営会議にて表彰式を行っている。

関連病院とのネットワーク構築による治験・臨床研究の推進と病診連携の強化

最近の治験は、がん、中枢神経系、精神科疾患などの希少疾患をターゲットした内容が多く、大学病院だけでは、予定組入れ数を満了できないケースがある。現在、精神科をモデルケースとして、地域の病院、クリニック等とネットワークを構築し、治験・臨床研究の推進と病診連携の強化を図りながら、地域として疾患に対する新たな治療法へのアプローチを開始した。精神科の治験においては、ネットワーク参加医療機関より、候補患者の紹介があるなど、一定の効果がみられている。

治験・臨床研究支援に関わる体制整備と教育

治験の受け入れ態勢の変更、医学系倫理指針の改訂、並びに個人情報保護法の改正に伴い、治験及び臨床研究に関する手順書等の改訂を行った。また、平成29年度は、研究者教育としてGCPセミナー1回、臨床研究セミナーを7回、医局等での勉強会を4回、ワークショップを2回(計画書作成、統計解析)行った。さらに、医学科4、6年生、生命科学、看護学科、検査学科2年生を対象に臨床研究の基礎について講義を行い、卒前教育にも注力した。

EDCの導入

臨床研究のデータ管理の徹底、効率化のため、症例登録、症例報告書作成を電子的に行うEDC(Electronic Data Capture)システムを導入した。EDC導入により、200例規模の多施設大規模臨床研究の実施、割付が必要となる二重盲検試験など複雑な臨床研究の実施も厳密に行えるようになった。

6.学会発表・論文公表

平成29年度は、国内学会による教育講演(1)、ワークショップ(1)、業務改善に関する学会発表(3)を行った。また、海外雑誌へ2報、公表している。

(島田美樹 記)