内視鏡室

呼吸器内視鏡部門:

 2017年度の呼吸器内視鏡件数は385件でした。内訳は、肺末梢病変に対する生検(主に仮想内視鏡ナビゲーションを併用した気管支腔内超音波断層法-ガイドシース: VBN併用EBUS-GS)189件、超音波内視鏡下リンパ節生検(EBUS-TBNA)60件、局所麻酔下胸腔鏡9件、その他(気管支洗浄、気管支肺胞洗浄、直視下生検、特殊光観察、内視鏡手術など)127件でした。
 VBN併用EBUS-GSは、2010年度より本格的に導入し、すでに7年間で900件以上の検査をこなしておりますが、80~90%と常に高い診断率を維持しており、我々が目標に掲げている「苦痛が少なく優れた診断精度を誇る最新の呼吸器内視鏡検査」が実践出来ていると自負しております。また局所麻酔下胸腔鏡も2012年度に導入後すでに60例以上に施行しており、従来の胸水検査のみでは困難であった結核性胸膜炎、悪性胸膜中皮腫の診断例が着実に増えています。他にも、気管支充填術(EWS)、光線力学的療法(PDT)、気管支サーモプラスティー(BT)など最新の内視鏡治療も随時行うことが可能です。
 進行肺癌の治療戦略を考える上で遺伝子解析はもはや必須であり、EBUS-GS、EBUS-TBNAで採取された検体の保存がより重要となってきました。当科においては呼吸器内視鏡検査で十分な検体を確保し、-80℃で冷凍保存しバンキングしていくシステムを以前より構築しており、稀少な遺伝子異常を検出する全国規模の診断ネットワークにも積極的に参加しています。ALK、RET、ROS1、BRAF、METなど稀少な遺伝子異常をもつ肺癌を見つけ出し、適切な分子標的治療の導入を行う「プレシジョン・メディシン(精密医療)」を実践しています。
 2017年度からは全国に先駆けて、極細径気管支鏡とEBUSを組み合わせた最新の末梢生検法(EBUS-UT)を導入しました。外径3mmのスコープを5次気管支以降まで挿入し、肺末梢病変を外径1.4mmのエコーで描出後に鉗子およびブラシで生検する最新の検査法です。EBUS-UT導入により従来の気管支鏡では到達が困難であった肺末梢の小さな病変も診断可能となるケースが増えてきております。
 今後も更にこだわりを持った呼吸器内視鏡診断・治療に努めていきたいと思いますのでよろしくお願い致します。

文責:呼吸器膠原病内科 小谷昌広

消化器内視鏡部門:

 平成29年度の消化器系内視鏡検査件数は6966件(上部消化管内視鏡4018件、下部消化管内視鏡検査1956件、小腸内視鏡51件(小腸カプセル内視鏡34件)、大腸カプセル内視鏡10件、専用機EUS520件、EUS-FNA125件、ERCP286件)で内視鏡を用いた治療では胃ESD66件、食道ESD24件、大腸ESD18件でした。合併症予防のため、BISモニター、二酸化炭素送気などを用いています。さらに、検査前の血圧測定(必要時は検査中も)、検査中の酸素飽和度、脈拍をモニターし、安全・安心な検査ができるようにしています。
 以上、最新の内視鏡診療機器にて質の高い診療サービスを患者様に提供できる状況となっています。

1)消化管疾患

 消化管内視鏡検査では上部消化管・大腸内視鏡検査が中心となりますが、病変の的確な診断に役立つ超音波内視鏡(内視鏡的超音波下穿刺も含む)、苦痛の少ない経鼻内視鏡、さらにダブルバルーン式小腸内視鏡、カプセル内視鏡(2017年10月より大腸カプセルも導入)、食道アカラシアなど機能性食道疾患が疑われるときの高解像度食道内圧検査(high resolution manometry: HRM,2017年12月より導入)なども行っています。消化管癌の診断・治療方針決定のために、画像強調・拡大内視鏡を用い詳細な観察を行い、診断精度が向上しています。治療内視鏡では消化器系の癌、前癌病変に対する内視鏡的粘膜切除術、アルゴンプラズマ凝固法などが行われています。早期食道癌・胃癌・大腸癌に対する新しい内視鏡的切除術である内視鏡的粘膜下組織剥離術(endoscopic submucosal dissection; ESD)も積極的に行っており、最近は耳鼻咽喉科と共同して咽頭癌に対するESDも導入しています。特記すべきこととして当院では平成28年1月に中国地方では初となる局所再発食道癌に対して光線力学的療法(PDT)が可能な施設となり、1例目を施行しました。現在、8例に施行し良好な経過であります。食道アカラシアの治療法である「POEM (ポエム)」と呼ばれる内視鏡治療が2016年4月から保険収載となり、2017年10月に山陰地方で1例目のPOEMを行っております。現在、10例に施行し症状の改善を見ています。その他、各種の内視鏡的治療用器具を用いて、胃・食道静脈瘤、消化管出血、消化管・胆道狭窄、消化管悪性腫瘍、消化管内異物などの治療も行っています。

2)胆膵疾患

 胆膵グループでは他施設で診断、治療困難となった症例を請け負っています。
 膵癌、胆道癌に対しては早期発見、確実な診断を目標に精力的に取り組んでいます。膵管拡張、膵嚢胞性病変や胆管拡張など、いわゆる間接所見からもCT・MRIと超音波内視鏡(EUS)を活用して、腫瘍を見つけ出します。腫瘍に対して膵癌では超音波内視鏡下生検(EUS-FNA)と膵液細胞診を併用することで正診率を95.9%、胆道癌においても正診率86.3%までと、世界的にもトップレベルにまで精度を高めています。過去に0.2mmの膵癌を発見、確定診断することに成功しており、これからも可能な限り小さく腫瘍を見つけ、早く確実な診断をすることで、適切な治療方針を提供できるよう努力しています。
 総胆管結石に対する治療では、まずERCP時の胆管・膵管挿管成功率はエキスパートの基準とされる9割以上を保っています。その後の安全な乳頭処置(内視鏡的乳頭切開術や拡張術)に続き、標準的な結石除去術を行うほか、巨大結石に対しては最新の経口胆道鏡観察下の電気水圧衝撃波胆管結石破砕装置(EHL)を用いた除石術を行い、可能な限り胆管ステント留置による姑息的治療に偏らないよう努めています。
 近年発展しつつあるEUS関連手技においては、EUS-FNAはもちろんのこと、膵炎後嚢胞性病変に対するEUSガイド下嚢胞ドレナージ(EUS-CD)、経乳頭的アプローチが困難な悪性胆道狭窄による閉塞性黄疸に対する胆道ドレナージ(EUS-BD)、コントロール不良となる癌性疼痛に対する腹腔神経叢融解術(EUS-CPN)などを実施しています。そのほかにも悪性消化管狭窄に対する消化管ステント留置術を含め胆膵内視鏡関連手技を網羅的に施行できる体制をとり、常に最新の治療を提供できる様心がけています。
 胆膵グループでは全国的に普及が遅れている超音波内視鏡検査をはじめ、当地域における胆膵内視鏡診療向上を目標に院内外の研修も行っています。また、2010年より年に1-2回、胆膵修練の会(旧名称:胆膵勉強会)を開催しています。この会は医師(市中病院、開業医先生)、検査技師さん、看護師さんにとって有益な情報を提供することをモットーとし、レクチャーに加え困難症例を供覧しながら改善点を共有できる場となっています。ご興味のある方はぜひご参加ください。


文責:消化器内科 八島一夫、武田洋平