薬剤部

 薬剤部の平成28年度の人員体制は、6月時点で薬剤師数47名(定員48名,欠員1名)、事務職員3名、調剤助手6名の計55名であった。平成28年度は計4名の主任の異動を行い、各部署の体制の見直しを行った。

 医薬品管理業務、医薬品情報管理業務

 本院採用医薬品については、平成28年度は新規採用54品目(代替削除54品目)、院外処方限定採用25品目と平成27年度の新規採用57品目と同程度であった。なお、医薬品購入費削減並びに患者負担軽減を目的とした規格追加や病院機能上不可欠な医薬品等(13品目)については薬剤部より申請を行った。ジェネリック医薬品については、平成28年度は合計92品目(内服薬36品目,外用薬22品目,注射薬34品目)の切り替えを実施した。その結果、平成28年度実績(購入額差益-外来薬価減収)として約1億7,600万円の増収となり、昨年度同種増収額(1億3,700万円)を大きく上回った。薬剤部ではジェネリック医薬品への切り替えにあたり、患者や医師・看護師などの混乱が最小限となるよう各種システム設定ならびに各種媒体を用い情報提供を行った。医薬品情報等の周知を目的とし月1回配布する「薬剤部のお知らせ」に加え、医薬品適正使用の観点から製薬会社や公的機関(PMDA等)等から得た情報提供は41件と昨年度40件と同程度であった。また病棟薬剤師がカンファレンスにて、主に医師を対象とした医薬品安全管理に関する研修を延べ52回、病棟に出向き看護師を対象とした研修を延べ29回、計81回開催した。医薬品の適正使用には適正な情報が不可欠であり、今後も質の高い情報提供を推進する必要がある。

病棟業務(薬剤管理指導業務および病棟薬剤業務)

 当院では、平成27年度より重症系を含む全病棟(22病棟)に薬剤師を配置し、病棟薬剤業務実施加算の算定を行っている。本業務により、投薬前における患者に対する業務、医薬品の情報及び管理に関する業務、ならびに医療スタッフとのコミュニケーションを推進している。また、入院時の持参薬鑑別について、平成28年度は合計9,782件と前年度(9,049件)に比べ増加しており、本病棟薬剤業務推進の影響が伺えた。薬剤管理指導業務については、上記のとおり昨年度開始した病棟薬剤業務が軌道に乗ったこともあり、今年度は薬剤管理指導業務の充実を目標として業務の効率化などに努めた。その結果、7,519件と前年度の3,269件に比べ大きく増加した。しかし、薬剤管理指導業務は未だ全体の17%程度しか実施できていない状況であり、今後さらなる充実を図っていく予定である。

 医療安全の推進のため1B をモデル病棟として開始した処方仮登録業務、および与薬カートの導入は、平成28年2月に7A病棟に、平成29年3月には7B病棟にも対象を拡大した。

 医薬品安全性情報報告(医薬品の使用によって発生した健康被害について、薬事法に基づき厚生労働大臣に報告する制度)について、平成28年度は薬剤部より6件(昨年度12件)報告を行った。また、プレアボイド報告(薬剤師が薬物療法に直接関与し、薬学的患者ケアを実践して患者の不利益(副作用、相互作用、治療効果不十分など)を回避あるいは軽減した事例)については、平成28年度は219件(平成27年度275件)であった。このプレアボイド報告を薬学的介入の種類で分類し医療経済効果の推算を行ったところ、計3,156万円と算出された。今後も医薬品の適正使用を図るために、これら報告を推進していきたいと考えている。

注射薬調製業務

 化学療法の調製件数については、平成28年度13,081件(外来7,125件、入院5,956件)と昨年度12,802件(外来7,294件、入院5,508件)より増加した。休日の調製件数は531件であった。本業務により、抗がん剤の安全調製が図れるだけでなく医師の負担軽減にも貢献している。抗がん剤の調製に関して、平成28年度は調製者の暴露防止を目的とした閉鎖式接続器具の利用を推進した。その結果、使用実績は3,183件と昨年度実績(305件)に比べて大きく増加した。

 薬剤部では抗がん剤の調製だけでなく、レジメンの登録・審査に関わっており、調製前のレジメンチェックや薬歴管理、投与前後の服薬指導(外来化学療法室でも実施)も含め、抗がん剤治療にトータルに薬剤師が係わることで医療安全や薬物治療の適正化に貢献している。

 高カロリー輸液(TPN)は、重症病棟ではサテライトで調製し、一般病棟では科限定で薬剤部にて平日に限り調整している。平成28年度は1,332件と昨年度(1,637件)よりやや減少した。

薬物治療モニタリング

 薬物血中濃度の測定については、おもに検査部または外注検査で実施しているが、抗菌薬であるボリコナゾールは薬剤部で測定している。平成28年度の測定件数は81件と昨年度(77件)に比べやや増加した。解析ならびに処方設計件数は、平成28年度抗MRSA用薬を中心に624件と昨年度(526件)に比べ著しく増加した。

 調剤業務

 調剤業務実績として平成28年度は、入院処方せん枚数137,901枚(昨年度133,299枚)、注射薬セット件数288,798件(昨年度296,604件)、手術時使用薬剤セット件数13,527件(昨年度12,781件)といずれも昨年度と同様であった。

 また、平成28年度は医薬分業、地域連携の強化を目的とし、昨年度に引き続き積極的に外来患者に対する院外処方せんの推進をおこなった。その結果、外来院内処方せん枚数8,877枚と昨年度(13,927枚)に比べさらに減少した。月当たりの院外発行率は平均92.6%(平成27年度)から94.2%へ増加した。

診療支援外来

 平成27年6月より、乳腺内分泌外科を対象とした薬剤師による「診療支援外来」を開始した。術後補助化学療法の患者を対象に、医師の診察前に薬剤師が面談し「副作用モニタリング」「プロトコールに基づいた仮処方」等を行っている。平成28年度は対象を泌尿器科の分子標的薬服用患者にも拡大し、平成28年度の面談件数は615件と昨年度264件(10か月間)より大きく増加し、医師の業務負担軽減や患者さんのQOL向上に努めている。

医薬分業推進(地域薬剤師会との連携)

 鳥取県西部地域の病院薬剤師と保険薬局薬剤師の会合を毎月当院薬剤部にて開催し、院外処方に関する様々な問題点について議論を交わし、連携に努めている。平成28年度は、また、当院で開始した院外処方せんの連絡事項欄および術前中止薬の対応、山陰労災病院の院外処方せんへの臨床検査値掲載・一回量併記、博愛病院の散剤製剤量表記、それぞれに関する情報共有を行った。

 入院から外来診療においてシームレスに安全で有効な薬物療法を提供する目的で、平成28年9月より、院外処方せんへの医師と保険薬局薬剤師の連絡欄の掲載を開始した。掲載にあたって、医療スタッフ、患者、ならびに保険薬局薬剤師への周知(説明会の実施等)を行った。

 また、平成28年3月より院外処方せんへの検査値表示を開始したことを機に、保険薬局薬剤師との連携を強化することを目的とし、薬剤師スキルアップ研修会を平成28年度に計5回開催した。いずれも多くの保険薬局薬剤師ならびに病院薬剤師が参加し、地域の薬剤師レベルアップに貢献した。

教育及び研究

 平成28年度は8名(平成23年度6名,平成24年度4名,平成25年度7名,平成26年度9名,平成27年度11名)と、例年同様多くの実習生を受け入れた。

 平成28年度は学会で13演題を発表し、原著論文5編を報告した。

 平成28年度末時点で、当院薬剤部には日本医療薬学会認定がん専門薬剤師3名、日本病院薬剤師会認定感染制御専門薬剤師2名、日本静脈経腸栄養学会栄養サポートチーム専門療法士2名、日本糖尿病療養指導士認定機構糖尿病療養指導士3名、日本医療薬学会指導薬剤師2名を始めとして、多数の有資格者が在籍している。現在、薬剤師職員の内訳は20代の比率が46%、30代の比率が32%と2/3を占めており指導者不足が懸念されるが、様々な専門資格について組織で計画的に取得することを進めている。

災害医療

 平成28年4月に発生した熊本地震に対し、鳥取大学DMAT1次隊および2次隊において、調整員として薬剤師(DMAT隊員)が計2名参加した。現地で医療チームの一員として活動を行った。また、同年10月に発生した鳥取中部地震に対し、院内の災害対応、県内の医療機関状況の把握、DMAT派遣後方支援等において活動を行った。さらに県内拠点病院の薬剤部、県薬剤師会、県卸協会と連携を図り、情報収集等を行い、支援の必要性について検討を行った。

 

(金田 達也)