検査部

 検査部では、臨床検査の高い品質をもち精確かつ迅速な検査報告を基本方針としています。部員に技能向上の教育を続け、多項目検査測定装置による血液検査を中心とする検体検査、院内感染制御ICT、NST、糖尿病支援チームなどのチーム医療への参画、ならびに生理機能検査に、質の高い臨床検査を実践し、安心かつ安全な診療を支援します。

臨床検査に関するISO15189国際認定資格取得

 検査部の平成28年度の活動実績として、臨床検査室の国際認定資格となるISO15189認定を平成29年2月21日付けで取得しました。認定範囲は検体検査、生理検査、病理検査の認定範囲の全領域の範囲です。ISO15189の認定取得は検査室の品質が国際標準を満たしている検査室であることを意味するものです。認定準備では、検査業務の標準化、技能の力量評価などの要求事項を満たすための部内の協議、教育を行うとともに、品質文書、標準操作手順書、品質記録等の整備を行い、認定審査に臨みました。ISO15189認定取得は、診療科の治験や臨床研究の実施を、より一層支援できるものと考えています。

Ⅰ.質の高い臨床検査の保証

 微生物検査部門では、感染症微生物検査の実施と共に、感染制御対策チーム(ICT)に1名の技師が参画しています。毎週、毎月の検出菌集計をはじめ、感染制御部(ICT)カンファレンス、感染症内科カンファレンス、抗菌薬カンファレンス、ICT病棟ラウンドに参画しています。感染制御部担当の臨床検査技師の質的な要求度、業務量は28今年度も増加しました。現在、IICTカンファレンス、抗菌薬カンファレンスは2名の技師がそれぞれ参加しています。POT法によるMRSAの遺伝子解析の件数も増加しました。質量分析装置を運用して検出菌同定結果報告、抗菌薬感受性検査の所要日数短縮化による抗菌薬適正使用を支援しています。
 生化学・免疫血清部門は、外来検体検査の迅速報告を行うとともに、外来迅速検査加算対象項目について、検査所要時間調査を定期的に行い迅速報告の検証を行っています。ウイルス肝炎検査結果フォローのデータ抽出に協力しています。治験検査、臨床研究の関連検査、特殊検査の受付、検体管理業務も行っています。治験、臨床研究の検査手順が複雑化、依頼数が増加しました。栄養サポートチーム(NST)担当技師がNST専門療法士の資格を取得しました。
 血液検査部門は、認定血液検査技師5名が所属し、知識の習得と技術向上をはかり骨髄検査の質向上を継続しています。骨髄検査は、骨髄画像報告も他の造血器検査と合わせて電子カルテに報告を行い、診療支援を行っています。フローサイトメトリー検査では、病理学的検査と連携した検査結果の解析件数が増加しています。これからも、解析能力の精度向上と迅速化を一層進めていかなければならないと考えています。
 一般検査部門は、検尿一般検査、尿沈渣検査の件数増加に対応するため観察者の育成に努めています。髄液一般検査では一部を血球計数装置による機械測定を導入し時間外の緊急髄液細胞検査の検査所要時間の短縮化をはかっています。
 輸血検査部門では、安全な輸血が行える輸血検査、輸血業務体制を継続しています。血液型検査、交差適合試験は24時間検査体制で取り組んでいます。コンピュータークロスマッチは全出庫件数の50%以上であり、出庫所要時間短縮がはかれています。認定輸血検査技師3名が所属しています。県内の認定資格取得を目指す技師の育成にも協力しています。
中央採血室の採血患者数は、28年度87,938名採血件数でした。28年は看護師30時間1名、20時間1名の増員がありましたが、外来採血者が集中する時間帯は、採血待ち時間が延長する日が発生する状況にあり、検査技師が検査業務と兼任しながら採血待ち時間短縮に取組んでいます。
 安全な医療の視点では、現在の採血システムは、採血時の検査漏れ、検体紛失などの発生件数が、減少しリスクを回避しています。採血時の番号も呼出しモニターを設置し、高齢者にも優しい中央採血室となりました。病棟払出し採血管は患者ごとの個別化包装配布により、払い出し時の採血管漏れを防止しています。
 生理検査部門は、循環器検査の検査件数が続いています。超音波検査のうち技師によるエコー検では、27年度より開始したTAVI手術中の経食道エコー検査介助の件数も増加しています。腹部エコーは木曜を技師2名体制としたことで技師検査実施件数が増加しました。これらの検査に関連する診療科カンファレンスに担当する技師が参加し業務の精度向上に努めています。
 超音波検査は年々増加が続いています。27、28年度の技師検査実績は、心臓エコーは27年2545、28年2778件に増加しました。技師の心臓エコー実施率(%)は26年度以降65%に達しています。腹部エコーは27年1306、28年1031件となり26年以降1000件以上の検査件数になりました。頸動脈エコーは27年954件、28年900件でした。下肢静脈エコーは27年1235件、28年1254件でした。甲状腺エコー(内分泌、耳鼻科)は27年580件、28年478件でした。25年度より開始した血管動脈エコーは(下記動脈・腎動脈)は27年122件28年113件でした。心臓エコーを含む超音波検査の出張検査の件数は、26年588件、27年717件、28年611件であり出張件数が増加しています。認定資格は超音波検査士(循環器領域)資格を1名取得しました。
 呼吸機能・神経機能検査は、27年15791件、28年16503件に増加しました。新生児聴力検査(AABR)も出張検査として27年444件、28年462件と実施件数が伸びています。認定資格は28年度に認定心電検査技師を新たに1名取得し2名となりました。

Ⅱ.未来の技師力を育てる

 検査部教育プログラムにそって部員の卒後教育を行い人材育成に取り組んでいます。その中で計画的に専門分野の認定資格取得を推奨し、部員の資質向上に努めています。28年度は認定心電検査技師、超音波検査士(循環器)、NST専門療法士の専門資格と日本臨床検査同学院の二級臨床検査士(血液学)1名、緊急検査士1名が資格取得しました。また、国際学会、全国学会、地方会の学会ならびに研修会の講演、発表、論文発表を行いました。28年度は英文論文2演題、国際学会に4演題の発表を行いました。検査部勉強会は毎月一回開催し、研究発表、業務、採血関連の研修を行っています。

Ⅲ.チーム医療参画

 チーム医療への参加では、糖尿病支援チームに4名が参加しています。検査部では、糖尿病教室で月2回糖尿病の血液検査と動脈硬化の超音波検査の講義を担当しています。また定期カンファレンスに参加しています。
 栄養サポートチーム(NST)は4名が参加しています。検査部では、NST介入患者の血液検査値の分析を行い週1回カンファレンスに解析結果を報告し、NST病棟ラウンドに参加しています28年度もNST専門療法士研修講師、院内NST研修会講義を行いました。28年度は、検査部で始めてNST専門療法士の資格を1名取得しました
ICT活動は1名が専任で業務を担当しています。ICT活動ではカンファレンスへの参加者を増員し血液培養カンファレンス、抗菌薬カンファレンスに2名の技師が参加しています。ICTの業務は微生物検査部門と連携して検出菌情報、院内感染制御に関する検査結果の解析を行い、感染制御部へ報告を行っています。

Ⅳ.臨床検査情報発信

 検査部情報発信「検査部だより」は毎月1回定期発行を継続しています。臨床検査について院内職員、患者様に理解してもらいやすい紙面づくりに工夫しています。中央採血室前に患者用配布を行い、毎月20~30名の利用があり、ご意見、ご感想をいただいています。「検査部だより」は検査部ホームページに掲載中です。

Ⅴ.地域貢献

 地域の医療職種研修とし超音波検査(検査技師)は2名を受入れしました。いずれも超音波検査士の認定資格受験に必要な症例研修であり地域の検査技師教育に協力できました。これからも鳥取県内の検査技師を対象とした教育セミナー企画し検査技師の人材育成に貢献したいと考えています。

Ⅵ.資格認定・業績
<平成28年度資格認定

超音波検査士(循環器領域)1名、認定心電検査技師1名、NST専門療法士1名、
二級臨床検査士(血液学)1名、緊急検査士1名
平成28年度学術業績
論文発表 12題  (英文2題、全国3題、地方7題)
学会発表 14題  (英文4題、全国2題、地方8題)

Ⅶ.検査実績

H28_検査部

                 検査部 臨床検査技師長 原 文子